とても個人的な話なのですが、ワタクシ、ネジムラ89、アニギャラ☆REWへの寄稿を2019年は7月〜9月にかけてお休みしておりました。あの夏、なにがあったのか、という話をし損ねているので、改めて、2019年夏のアニメ映画界を反芻させてください。今ここに2019年の日本の夏、アニメーション映画界がこんな感じでしたよ、という話を残させてください。
題してプレイバックアニメ映画界2019サマー。
2019年アニメ映画界はスプラトゥーン状態だった!?
いきなりアニメ映画とはまったく関係のない話をするのですが、2019年の夏、NintendoSwitchの人気ゲーム『Splatoon2』内のオンラインイベント、「SPLATOCALYPSE(スプラトカリプス)」が開催されていました。このイベントでは、プレイヤーが“混沌”チームか“秩序”チームか、任意のグループに分かれて、戦い合うという企画なのですが……。
「スプラトゥーン2」発売から来月で2年、いよいよ最後にして最大のフェス「ファイナルフェス」が世界同時開催される。
期間は発売から2周年を迎える、7月18日(木)21:00~7月21日(日)21:00の72時間。
最終決戦「SPLATOCALYPSE(スプラトカリプス)」に、是非とも参戦いただきたい。#FinalFest pic.twitter.com/z93AYWeyRF— Splatoon(スプラトゥーン) (@SplatoonJP) June 9, 2019
思い返すと、まさに2019年のアニメ映画界もこのイベント同様、各作品が“混沌”と“秩序”に分かれて興行でぶつかり合うような装いとなっていました。
賛否両論を巻き起こす混沌派アニメ映画たち!
この年、賛否入り乱れての話題作となった“混沌”チームに相応しい作品が以下の作品たち。
【混沌チーム】
トイ・ストーリー4
天気の子
ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
劇場版 ONEPIECE STAMPEDE
いずれも公開間も無く、賛否両論を巻き起こす話題作となった作品たちです。
夏休みシーズンに先駆けて公開された『トイ・ストーリー4』は、アメリカでこそ絶賛色の強い作品でしたが、帰属意識の強い日本の風土もあってか、主人公ウッディがクライマックスでするある決断に対して、賛否が巻き起こる形となりました。
また、公開前から監督自ら、その結末に「許せない」と感じる人もいるだろうと述べるほどの驚くべき着地を見せたのが『天気の子』です。混沌として名を連ねるにふさわしい問題提起を、映画の顛末は投げかけてくれました。
そして思わぬダークホースとして、話題をさらったのが『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』です。物語も大詰めに近づいた最後の最後で、思わぬ衝撃的な展開が用意されている本作は、激怒するファンも現れるなど、その結末に対し様々な意見が飛び交いました。
賛否両論といった話題作にはなりませんでしたが、敵味方が総出で入り乱れてのシリーズファンサービスが過剰というまでの展開を見せてくれた『劇場版 ONEPIECE STAMPEDE』も混沌と言うにふさわしい、シリーズでも異色の劇場版となりました。
安定した持ち味が肝心!? 秩序派のアニメたち!
一方でそれぞれに狙いこそあれど、大きな路線変更を行わなかった堅実な仕上がりとなった“秩序”チームに相応しい作品達がこちらです。
【秩序チーム】
ミュウツーの逆襲Evolution
ペット2
それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫
ライオン・キング
シリーズでも金字塔的な扱いとなっている『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』の、フル3DCGリメイクとなった『ミュウツーの逆襲EVOLUTION』。完全版や、続編など様々なリメイクの仕方が可能な作品でありながら、3DCGで制作する以上の大きな変化は加えず、物語はオリジナルに完全忠実という選択には驚きも感じました。
シリーズ作品として新たな物語を繰り出してきた『ペット2』や『それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫』は、新キャラクターといった新たなエッセンスはあれど、従来の作品らしさを大きく逸脱しない、よく言えば安定した仕上がりの作品となっていました。
また忘れちゃいけないのがディズニーの実写化の流れを組む『ライオン・キング』。CGで描かれたリアルな動物達は、インパクト大ですが、こちらも『ミュウツー』と同じく、オリジナルのアニメーション版に忠実な物語となっていました。
『マレフィセント』や『ジャングル・ブック』、『ダンボ』など、ディズニーアニメーションのリメイク作は、新たな解釈を含んだものが多かったのですが、それらと比べると直球とも言える表現でした。
え?『ライオン・キング』はアニメーションじゃないって? ほぼ全てのビジュアルがCGで描いたものなので広義のアニメーション映画と言ってよいのではないでしょうか。
また来年思いかえそう、この夏を
オンラインイベント、「SPLATOCALYPSE(スプラトカリプス)」は結果的に混沌チームに軍配があがるのですが、映画興行としてもどちらかというと、混沌チームの作品が目立った活躍を見せていたのではないでしょうか。こちらの予想を超えてくる驚きの展開や、作品に対する自分の意見を語り合いやすい問題定義など、セオリーを崩してくる作品はやはり興行的にも、強いと言えるでしょう。
2019年の夏休みシーズンが面白いのは、そのようなみんなであれこれ言いたくなるアニメーション映画が、何作も出てきたことが大きいこと。そしてそれにより、全く対照的な作品群が際立つ形になったことです。バラエティ豊かなラインナップの夏だったと、今後も思い返す年になるかもしれません。
今後も夏休みシーズンは多くのアニメーション映画が公開されると思いますが、ぜひ2020年、2021年……とそれぞれの興行を迎える度に2019年と比べてみると面白いでしょう。
もしかしたらまた、混沌VS秩序がぶつかり合う年になっていたり、もしくは別のテーマでぶつかり合うような年になっているかも。はたまた、特筆した一本が全てを持って行ったり、特に際立った話題作が現れない年になっているかもしれません。“夏興行”という視点でアニメーション映画を眺めていくと、いろんな発見があるかもしれませんヨ。
(Edit&Text/ネジムラ89)