雲田はるこ原作の漫画『昭和元禄落語心中(以下、落語心中)』のアニメ二期が「昭和元禄落語心中~助六再び篇~」として現在放送中です。
この落語心中で主人公・与太郎の師匠である有楽亭八雲を演じている石田彰さんの演技が凄すぎると話題に。
いやいや、観ればきっとあなたも共感してくれるハズ!
石田彰さんといえば『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲル役などで有名です。
彼は上であげた渚カヲルのようにミステリアスなキャラや、『ガンダムSEED』のアスラン・ザラなど、線の細い美少年をやることが多いですが、老若男女問わず七色の声が出せることから、実力派声優だということがわかります!
ひとり7役を演じた音声が有名なので、気になる方は動画サイトなどで探してみてください。(石田彰 一人7役などの検索ワードで)。
その石田彰さんが落語心中で演じている有楽亭八雲は、“昭和最後の名人”と称される落語界の重鎮。
現在放送中の「助六再び篇」では、八代目有楽亭八雲として年老いた落語家を演じていますが、アニメ一期はそんな彼と同門だっ先代の助六の半生を描いた物語で、若かりし頃の八雲(当時は菊比古)が登場していました。
そこで今回は、菊比古から八代目八雲までの長い人生を演じきっている石田彰さんの演技の凄さをじっくりと語っていきます。
年齢の幅が凄い!
前述したとおり、落語心中のアニメ一期ではまだ八代目八雲になる前の菊比古が描かれていました。
八雲と助六の物語は七代目有楽亭八雲に二人が弟子入りするところから始まります。
二人が弟子入りしたのは、声変わりもしていない少年時代。
そこはさすがに女性声優さんがやっていましたが、中学生くらいになると菊比古の声を石田彰さんが、先代の助六(当時、初太郎)を山寺宏一さんが演じるようになります。
石田さんは、菊比古という一人の人物の中学生から落語家としての前座、二つ目という、少年、青年、そして大人になるまでの人生を徐々に声色を変えて演じているのです。
この微妙な声の違いが凄い!だんだんと幼さがなくなっていき、色気が増してくる声は石田さんでなければ表現できない演技です。
そして、「助六再び篇」では頭真っ白なおじいちゃんになっているのですが、この老人の演技が凄い!
貫禄のある八代目八雲を見事に演じており、落語も菊比古の時代とは比べものにならないほど深みのある高座を見せてくれるのです。
色気が凄い!
前座・二つ目の時代から綺麗な顔立ちで人気のあった八雲ですが、ただイケメンというだけでなく色気もあり多くの女性ファンを虜にしていました。
石田彰さんの艶のある声で演じられる菊比古は、大人になっていくにつれて色気が増していきます。その色気の変化も見事なものでした。
菊比古は助六と一緒に立った鹿芝居(噺家の芝居)の舞台で女形を演じるのですが、その時に客席から注目を浴びることに快感を覚えた菊比古は落語のお芝居が一皮むけます。
菊比古は自分の得意分野を自覚し、色っぽい廓話を得意とするようになります。
廓話ですから花魁が出てくるわけです。その花魁の色気のある落語での芝居がまた素晴らしい! 女性になりきるのではなく、あくまで菊比古という男性が演じる女性なのですが、しなっとした花魁の色気が存分に出ています。
それから、お江戸言葉も菊比古(八雲)の魅力ではないかと思います。普段の言葉遣いもそうですが、落語は江戸の下町の話が多いですから、お江戸言葉が非常に合います。江戸言葉というと「べらんめぇ」調ですが、菊比古の話すお江戸言葉はなんだか品があるから不思議です。これも八雲のキャラクター性と石田彰さんの声の親和性がいいからですかね。
落語は一人で何役も演じなければならないので、声で今誰がしゃべっているのいうのがすぐ分からなくてはいけないのですが、石田さんはその声の変化が凄まじく上手い!
菊比古という上手い落語家が技術でもってそれを成し遂げるのですが、そこに石田さんの演技が重なって落語により説得力が増すのです。
こう考えると声優と落語家さんって共通する点があるのかもしれません。
つまり声の変化のスペシャリストである石田彰さんが落語家を演じ、落語を披露するこのアニメが面白くないはずがないのです。
「助六再び篇」での演技がとにかく凄い!
アニメ一期から毎回「凄い……凄すぎる!」と思っていましたが、アニメ二期はそれを凌駕する凄さです。
まず凄いのが自分より年齢が上の人を演じるということ。これは他のアニメでもあることですが、老人の役というのはなかなか難しいものがあります。
自分が経験したことのない域の声というのは想像で出したり、聞いたことのある人の声を真似するしかありません。
しかしそれではやはり声の深みが足りず、どこかで若さが出てしまうものなのですが、石田さん演じる有楽亭八雲の渋さと色気のある声は説得力があり、「昭和最後の名人」その人なのです。
その貫禄のある八雲師匠なのですが、歳のせいもあり病に倒れる場面があります。その倒れそうな最中での鬼気迫る落語はまさに名人芸!
さらに、八雲は倒れてから数日して目を覚ますのですが、その時に出した掠れ声が物凄く上手い。セリフの意味も相まって見ているこちらは泣きそうになってしまう、そんな渾身の演技でした。
倒れてから落語をする意欲を失ってしまった八雲。普段は年老いても色気があり、クールで落語に厳しいお師匠なのですが、自信喪失して弱り切った八雲はただの老人でしかありません。
いつもの張りのある声から一転、「声が出ねえんだ」という八雲の弱弱しい声の演技もまた秀逸です。どうしたらこんなに味のある演技ができるんだ…と唸るばかり。
やはり石田彰さんは天才ですよ。
――『昭和元禄落語心中』は、他にも主人公の関智一さんや山寺宏一さんをはじめ、林原めぐみさんや小林ゆうさんなど豪華声優陣がそろい踏みのアニメです。
みなさん演技の幅が広い実力派ばかりですし、そんなみなさんがやる落語もとっても素晴らしいです!
今回は石田彰さんにフォーカスを当ててみましたが、みなさんそれぞれの演技が相まって面白いアニメになっているな~と感じます。
まだ観ていないという方は、是非一度アニメを観てください!!
(Edit&Text/きさらぎなぎさ)
アニメ「昭和元禄落語心中」公式サイト
© 雲田はるこ・講談社/落語心中協会
公式サイト「昭和元禄落語心中」雲田はるこ
© 雲田はるこ・講談社