◆旧アニメ版では別人として描かれた雷十太
しかも、なおのこと因縁めいているのが、1996年に放送された『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の最初のTVアニメ化の際の石動雷十太の扱いです。
この旧アニメ版でも石動雷十太は第19話「雷十太の野望・禁じられた王国の幻想」から登場していますが、実は設定が大幅に改変されています。
真古流の剣士であり、由太郎のもとで暮らしていることなどは原作と同じでしたが、その真の目的は伊豆に武士による独立国家を築くことであり、エピソード内では明治政府の警官隊と激突する展開が描かれます。
原作の人を斬ったことのないという設定もなかったことになっており、軽々と人を斬り捨てるなど精神的にももはや別物のキャラクターとなっていました。
しかも原作では、剣心の放った龍槌閃(りゅうついせん)を喰らっても耐えていたのですが、旧アニメ版ではよりによって同じ技によって剣心に敗北してしまうという展開を迎え、残虐性は増しているはずなのに耐久力が落ちていたりと、妙なアレンジになっていました。
こうしてアニメシリーズではオリジナルの雷十太の魅力は生かしきれていなかった中、迎えたのが今回の新アニメシリーズ。ていねいに原作に準拠した内容をアニメ化しているだけに、今回は本来の雷十太の活躍が見られることにも期待がかかります。令和の雷十太は、果たしてどんな爪痕を残していくのでしょうか。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:TVアニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」より
©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」製作委員会