2018年秋。巷ではアニメーション映画『若おかみは小学生!』が公開直後こそ上映回を一気に落としたものの、口コミで評判が広がりふたたび上映回を増やすという面白い現象が起きています。
おもしろい映画が必ずヒットする……なんてことはないもので、中にはこうして気づいてもらわないと危うくスポットが当たらず上映が終了してしまいかねない映画があるものです。
そんな中で実はこの秋、まさにスポットが当たり損ねた大傑作があるので、しっかりここでレコメンドしておきたい映画があります。それが『スモールフット』!
このまま隠れた名作にしておくのは本当に惜しい一作なのでぜひ推させてください。
異種族の交流を描いた映画『スモールフット』
本作『スモールフット』は、『コウノトリ大作戦!』や『LEGOムービー』シリーズのワーナー・アニメーション・グループが贈る新作3DCGアニメーション映画。監督を『森のリトル・ギャング』のキャリー・カークパトリック氏が務めます。
主人公は、イエティのミーゴ。イエティたちは人里離れた山奥にて集落を作り暮らしています。村の掟を厳格に守るイエティたちでしたが、主人公のミーゴは、ある日掟の上では存在しないはずの“スモールフット”こと人間に遭遇してしまい、その掟を疑い始めます。村のみんなに人間の存在を信じてもらえず村を追放されてしまったミーゴは、掟を疑う仲間のイエティたちと協力し、人間の存在を証明するため禁じられた山の下へと向かいます。山を下りたミーゴは動物番組のMCを務める人間のパーシーに出会い、無事イエティたちに人間の存在を証明することに成功します。
こうして交流に成功するイエティと人間たち。『ズートピア』や『トロールズ』などでも描かれた異種族同士の共存をテーマに描かれた作品となっています。
本作がつきつける難しい二択
人間の存在も証明できて、ミーゴも村に戻れてめでたしめでたし、……というところで本作は終わらないのがまたこの作品の見どころ。
村の掟を司る最長老に呼び出されたミーゴは、かつてイエティたちが人間たちに襲われて山奥に逃げ、人間たちと距離を置くために「人間は存在しない」という嘘の掟を築いたことが明かされます。ミーゴは人間の存在を証明してしまったばかりに、イエティたちが安全に暮らすために作られた嘘を壊してしまうことになってしまうことを知ります。
嘘でみんなが安全に暮らせるようにするのか、それとも真実を語ってみんなを危険に晒すのか。大人でもなかなか答えが出しにくい二択をミーゴは迫られます。一筋縄ではいかないこの課題に、作品を観ている我々も果たしてどうしたらいいんだろうと誰もが悩まされるのではないでしょうか。
『スモールフット』が示す想像を越えたメッセージ
そしてさらに驚かされる点が、この映画で描かかれる物語の結末です。
物語終盤、ミーゴが懸念した通り、人間たちがイエティを襲い来るという体験をします。二種族の共存が難しいことが描かれ、イエティはイエティ、人間は人間、一部の者だけが互いの存在を知りながら、それぞれの世界で暮らしていけば良い……という一件落着となれる展開をこの映画は迎えます。ここで終わってもまったく問題がない着地ではあるのですが、今作が普通じゃない点は、その先の物語がさらに描かれる点にあります。
懸念した通り、人間たちとの共存は難しい。イエティと人間、それぞれの世界が交わらずとも生きていける。そんな状況であってもなお、この映画は“あるメッセージ”を示してくれます。このメッセージがとても感動的で、今の時代に描かれることが非常に有意味だと思わされるものとなっています。大団円ともいえる、この映画が示す二種族の結末をぜひ多くの人に味わって欲しいです。
いまや日本も外国人との交流が日常的になってきており、移民問題も他人事ではなくなってきています。そんな今の時代を生きるにあたって、今後何度も思い出すであろう教訓がこの映画にはつまっています。話題作には成っていなくとも、話題になってほしい映画として、『スモールフット』をここにガツンとオススメさせていただきます。
(Edit&Text/ネジムラ89)
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