日本時間の2019年2月3日、アメリカのロサンゼルスにて第46回アニー賞の授賞式が行われました。
アニー賞と言えば、数あるアニメーション系の賞の中でも名のある大きな賞の一つ。米国アカデミー賞の直前に発表されるアメリカの賞ということもあり、アニメのアカデミー賞と称されることもある賞です。
2019年のアニー賞は日本作品が良い結果を得たり、思わぬ作品が賞を総ナメにするなど注目ポイントの多い状態。一体どんなことが起きたのか、本記事ではそれをピックアップしていきます。
『未来のミライ』がインディペンデント部門を受賞!
日本人がなんといっても注目しておきたいのがインディペンデント作品賞。
この賞は、アメリカで公開された作品の中でも公開館数が少なかった作品が選出される賞です。ヨーロッパやアジア圏のアニメーション作品はどうしても公開館数が絞られてしまう傾向にあるため、日本作品の作品賞のノミネートは主にこの部門となります。
今年ノミネートされたのはこの5作品。
- ムタフカズ
- 未来のミライ
- Ce Magnifique Gâteau !
- Ruben Brandt, Collector
- Tito and the Birds
日本関連作品としてはフランスと日本の合作、STUDIO4℃製作『ムタフカズ』と、細田守監督のスタジオ地図最新作『未来のミライ』がノミネート。残る3作品は『Ce Magnifique Gâteau !』など、日本では映画祭上映しか果たされていない作品など、日本では聞き慣れない作品が並んでいますが、世界のアニメーション向けの賞では名前の挙がる作品が並んでいる状態です。
そんな中で、見事インディペンデント作品賞を受賞したのが、細田守監督の『未来のミライ』でした。
「未来のミライ」第46回アニー賞、長編インディペンデント賞を受賞いたしました! pic.twitter.com/wLtsfB9aYD
— スタジオ地図 (@studio_chizu) 2019年2月3日
この受賞は見事な快挙。こちらの部門は2015年にスタートした割と新しい部門なのですが、日本作品としての受賞は『未来のミライ』が初めて。しかも、ここで得られた高評価は、アカデミー賞のアニメーション長編部門にノミネートされている分、こちらへの受賞にも期待がかかる結果となります。個人的にもとてもお気に入りの作品なので、日本で爆発的な興行成果を得られた作品とは言えなかった分、こうして海外の賞レースで活躍しているのは嬉しく思います。
脅威の7部門受賞の『スパイダーマン:スパイダーバース』
『未来のミライ』がアカデミー賞の長編アニメーション部門の受賞に期待がかかると述べた一方で、実は最有力受賞候補となっているのが、なんといっても『スパイダーマン:スパイダーバース』です。
アメリカで多数の映画館で上映を果たしている作品を対象にした、長編アニメーション作品賞にノミネートされたのが以下の5作品。
- アーリーマンダグと仲間のキックオフ!
- インクレディブル・ファミリー
- 犬ヶ島
- シュガー・ラッシュ:オンライン
- スパイダーマン:スパイダーバース
この5作品で見事、作品賞を受賞したのが『スパイダーマン:スパイダーバース』でした。
ゴールデングローブ賞に続いて、スパイダーマンが強敵ディズニー作品を下して受賞となりました。しかも、受賞はこれだけではありません。監督賞、キャラクターアニメーション賞、キャラクターデザイン賞、美術賞、脚本賞、編集賞も『スパイダーマン:スパイダーバース』が受賞し、今年のアニー賞では最多7冠を獲得しました。まさに圧倒的な高評価を得た作品となっています。
これだけの評価を得ているとやはりアカデミー賞のアニメーション賞の長編部門において、最有力と言えるのはディズニー作品や『未来のミライ』などよりも『スパイダーマン:スパイダーバース』と言えるでしょう。
ビデオゲームキャラクターアニメーション部門受賞の『GRIS』とは
そしてもう一つ。
2019年のアニー賞で私が注目して欲しいなぁと思っているのがビデオゲームにおけるキャラクターアニメーション部門。アニー賞のゲームを対象にしたアニメーション賞です。今年ノミネートされたのは以下の5タイトル。
- ゴッド・オブ・ウォー
- GRIS
- スパイダーマン
- Moss
- Shadow of the Tomb Raider
こちらにもスパイダーマンがノミネートされていますが、見事こちらの部門を受賞したのは『GRIS』でした。
SteamやNintendo Switchなどを対象に日本でも昨年末より配信開始されている本作。ジャンルとしては、横スクロールアクションゲームとなっています。
実は昨年のノミネート時点で私も体験してみたのですが、本作はとても美しいゲームでした。横スクロールアクションゲームといっても体力ゲージがあったり、ゲームオーバーはなし。随所のギミックを解いていくアドベンチャー要素を楽しみながら、独特の世界観を体験できる作品となっています。
見事だと思うのは、美術の美しさだけに終わらないところ。上に下へと広大なフィールドが用意されている一方で、“ここから先は進めない”といった見せ方が出来ていたり、この場所は足場になるといった、見せ方なども自然とできていて、世界観を壊さずにゲームルールを把握させる配慮が成されているところがとても上手いです。美しいゲームは、ほかにも多数あると思うのですが、細かい配慮の行き届き具合が絶妙な一本と言えるオススメのゲームでした。
邦画・洋画に限らずゲームに至るまで、アニメーションをいろんな側面から楽しむことができるアニー賞。普段知らないアニメーションの世界を知る術としても、ぜひ、今後もアニー賞を気にしてみてください。
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