4月19日、ついに待望の劇場版 『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』(以下『響け!』)が公開されました!
昨年公開された『リズと青い鳥』は、上記の原作『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第2楽章』で起こる、鎧塚みぞれと傘木希美のコンクール曲での悩みをきめ細かすぎる描写と演出で話題となったスピンオフ作品でしたが、今回は新たに入部した1年生を巻き込み、複雑に交わる人間関係に悩みつつも全国大会を目指して奮闘する黄前久美子を中心とする内容となっています。
公開からそろそろ1ヶ月。ようやく筆者も観ることができましたので、今回は早速その感想を書かせていただきたいと思います!
前半はネタバレを避けつつ全体的な感想を、後半はネタバレありの細かい部分も含めて綴っていきますので、ネタバレが嫌だ! という方はお気をつけください。
ちなみに筆者は原作は読んでいましたが、数年前の話なので、もしかすると原作とは違う描写があることに気づいてないこともあります。ご了承ください。
アニメを彷彿とさせる描写の数々
今回はアニメシリーズと同様、新1年生の入部からコンクール出場までがストーリーとなっています。
久美子属するバスパートには久石奏、鈴木美玲、鈴木さつき、月永求の4人の新入生が入り、個性の強い子達に新入生担当の久美子は苦悩するばかり。
最初の新入生勧誘の演奏からサンライズフェスティバル(各校によるマーチ形式のコンサート)、あがた祭りからコンクールメンバー選抜オーディションなど、昨年久美子が歩んできた一年を振り返るようなストーリー仕立てになっていて、「あぁ懐かしいな」と思う盤面が多くありました。
本作の重要人物に当たるのは、前半がバスパート同士の馴れ合いと自身の上手くなりたいプライドとの軋轢に苦悩し、サンライズフェスティバルでその不和が爆発してしまった鈴木美玲、後半は中学での辛い経験から自身を守るため、わざとオーディションを失敗するように動いた久石奏です。
やはりというか、彼女らも彼女らなりに思うところ、そして曲げたくないプライドを持ち、そこから生まれてくる不和が物語のキーパーツとなっています。
昨年も今年も様々なところで久美子が苦悩するのは変わらないのですが、昨年と違い「将来」「後輩を交えた人間関係」「恋愛」と、一歩成長を遂げた姿をアニメシリーズと同じシチュエーションで見せていたのは、面白いなぁと思わされました。なんかまたアニメ見返したいなぁと。
ただ今回は久美子とコンクールに向けての練習を中心としたストーリーのためか、同じ原作にあったみぞれと希美については触れられていません。ここについては『リズと青い鳥』でがっつり描かれているのでそっちを観てください! ということだと思います。
モチロン全く出てないわけではないですけどね。サンライズフェスティバルの時にみぞれがちょっと謎ダンスを見せていましたが、めちゃくちゃ可愛かったです(語彙力崩壊)。
あと、こことは関係ないですが、2期で夏頃に久美子達一行がプールに行っており、劇場版でもプールで遊んでいる一シーンがありましたが、久美子と麗奈の水着、もしかして色違いのお揃い?
最後は筆者も待ち望んでいた自由曲「リズと青い鳥」のコンクール演奏がフルで行われました。
演奏シーンは言わずもがな。さすが京都アニメーションといった繊細な絵と動きがまた映画館で見られただけでも、この作品を見る価値はあると思います。
アニメや原作を見ていた方はぜひ劇場へ行こう!
筆者の全体的な感想としては
「やっぱり『響け!』って面白いなぁ」
「ちょっと時間足らないんじゃないかなぁ」
の2点でした。
もともと『響け!』は吹奏楽が題材の作品で、経験者なら痛いほど分かるレベルのリアルな内容と、それぞれが持つ高校生なりの心境と部内のトラブル、それらを乗り越えて成長する彼ら彼女らの生き生きとした姿を見るのが楽しいと思っています。個人的にはそこに本格的な演奏シーンと音大生による生演奏が加わっているので、数あるアニメの中でも特に好きな作品なのです。
だからこそ『リズと青い鳥』の時に感じた「あえて元作品を知らない状態で見てみたかった」とは違い、「今回もわくわくドキドキさせてくれるんだろうなぁ」という気持ちで視聴できたのがとても嬉しかったです。
安定している、という表現はちょっと違うかもしれませんが、少なくとも観てて楽しめないことは絶対無いだろうという感覚で映画館へ足を運びに行けました。
とりわけ「映画だからここがすごい!」と言える部分はあまり無いとは思います。
でも、今までアニメや原作を見ていた方は100%楽しめることができる。だからこそ、アニメや原作を見ていた方は絶対見ることをオススメしたいです。
ただ、そこで気になったのが、2つ目の「時間が足りない」と感じたこと。
詳細については後半で書かせていただきますが、簡単に言えば「約4ヶ月半の出来事を90分にまとめた」映画になっているので、アニメと比較するとどうしても尺足らずになっているのではないかなと。
ぶっちゃけこれならアニメ3期として放映するのでも良かったのでは? と思いました。
《ここから後半》一番感動したのは……
とにかく筆者が一番感動したシーンは、最後、全国大会への切符を取れずに落ち込む部員達のところで、美玲が「来年は一緒に吹きましょう!」と葉月達に言うところ、そしてダメ金という最も悔しい(経験者なら気持ちは分かる……分かりますかね?)結果となり、泣き崩れる優子とそれを支える夏紀、の後に優子が部長として落胆する部員達に発破をかけるところ!
とりあえずこれだけは言いたかった(正直)。
最初はバスパートの葉月や、同級生のさつきとコンビとして扱われがちだったことに不満で馴れ合うことをせず、その結果サンライズフェスティバルでその不満が爆発してしまった美玲だったのが、最後のシーンで「一緒に吹きたい」と言えたところに、心が持っていかれてしまいました。
後述しますが、新入生の細かい描写が少なかった本作においては、個人的に最も印象深い子だったとこのシーンで感じさせられました。
優子に関しても、作中も終始部長として頑張る姿が多く見えていて、少々不器用ながらも必死になって部を支えていたからこそ、最後にみんなの前では泣かなかった、けれども、やっぱり全国大会金賞という目標を達成できなかった悔しさを我慢することはできなかったから、優子を支えていた夏紀の前ではその姿を見せていたんだなと。
奏がオーディションをわざと下手に演奏したあと、夏紀に気づかれて叱責されるところは本作の見どころの一つになっていると思うのですが、筆者としてはあくまでいい子なりに先輩を気遣っていた奏よりも「本気出したら自分より上手いからあえて手を抜いたことがどんだけ失礼なことかわかってるの!」と問いただした夏紀のほうが感情移入しやすかったんですよね……。
奏の印象が薄かったというわけではありません。十分彼女もストーリーを動かす重要な子だったのですが、個人的には本作は全体を通して「中川夏紀」という存在がストーリーを支える一人だったと感じたのが理由なのです。
多分ここは、見ていた人によって変わる部分だと思います。
しかし、『響け!』の登場人物はまぁ結構きつい経験をしている子が多いですね……。
現実、「上手い後輩が出られず下手な先輩がコンクールに出る」「下手な先輩でなく上手い後輩がコンクールに出る」という世界は、吹奏楽部ではよく聞く話ではあるんですが、ここまでこじれてしまうことは無い……ハズ。根に持つ人はいると思いますが。
どのキャラクターが感情移入しやすいかというのも、本作品は視聴者のバックボーンによって変わりやすい性質があるかな? と勝手に想像しています。
もう少し個々のストーリーを深く見たかった
前述で「時間が足りなかったのでは」と感じたのは、もっと個々のキャラクターのストーリーが欲しかったなぁと思ったことが理由です。
特にそれを感じたのは新入生の求で、彼については「原作知らない人からしたらただのめんどくさそうな子」にしか見えないんじゃ……と。
彼も原作では素性まで明らかにされているわけではないですが、本作だと最初は一匹狼的な印象(緑輝の「血統書付きの捨て猫」という発言も)があったのに、いきなり緑輝を崇拝するかのごとく懐いている描写が追加されています。
こちらは原作では2人の間に一波乱あった上でこのような関係に変わったのですが、本作だとそのシーンがばっさり無くなっているので、「いきなりこの子態度変わってない?」という印象を抱かれてもしょうがないのではと。
あと、原作では合宿中に体調を崩しつつも無理して振る舞おうとする優子に対して、「それが部長の役目ならそんな役職廃止しろ」と叱責しつつも最も優子の近くで支えていた夏紀のシーンも無かったのが寂しい……。
もっと色んな子達のストーリーがあるから、そこをもっと掘り下げた形で見られればよかったなぁと。だからこそ「アニメ3期でもよかったのでは」という感想を挙げさせていただきました。
モチロン、色々事情があるのかもしれませんし、実は数年後にアニメ化する! ってなるかもしれませんがね!
いやぁ、やっぱりもっと早く観に行ければよかったと思うのが悔しいです。率直に言ってもっかい観に行きたい。
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)
『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』公式サイト
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会