劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が人気を博した『ガンダム』ですが、実は1979年に放送された初代『ガンダム』が打ち切りの目にあっていたことはあまり知られていません。また『うる星やつら』のラムちゃんも実はちょい役で、ヒロインになる予定はなかったそうです。あれだけ人気のある『ガンダム』ですがなぜ打ち切り作品となってしまったのでしょうか? 一方、ラムちゃんはなぜヒロインの座を手にしたのでしょうか?
◆「打ち切り」になった後にヒットしたアニメ
『ガンダム』も『ドラえもん』も放送された当初から、人気があったわけではなく、まさかの放送打ち切りの目にあっていました。
そのため予定の話数が制作されませんでしたが、今では国民的アニメとしての地位を確立しています。根強い人気によって、打ち切りというどん底から復活した作品たちの魅力とは……。
●『機動戦士ガンダム』──主人公が戦死する予定だった!?
シリーズとして45年も続いている『機動戦士ガンダム』(以下、ガンダム)ですが、放送中に打ち切りが決定した作品として有名です。
2019年にNHKのBS1スペシャルで初回放送された『ガンダム誕生秘話 完全保存版』 での制作スタッフたちの証言によると、制作現場は人手が足りず、おもちゃなどの関連商品の売れ行きも悪かったとのこと。そして視聴率も苦戦したことが、打ち切りの原因のようです。
その後、再放送をくり返すたびに視聴率は上がっていき、再構成した劇場版が作られ、現在まで続く大人気シリーズになっていきました。
『ガンダム』は52話で最終回を迎える予定でしたが、実際の放送話数は43話。富野由悠季監督が構想していたメモによると未登場のMSなども用意されていたようです。
さらにメモによると最終回ではアムロが命を落とすことも示唆されており、もしも本来の話数である52話で作られていたら、その後に続くシリーズはまったく違ったものになっていた可能性もあります。
アムロが一年戦争の最後に命を落とす展開は富野監督が書いた小説版の『機動戦士ガンダム』でも描かれており、アニメで実現していたら主人公が最後に脱落する衝撃的な作品になっていたことでしょう。
●日本テレビ版『ドラえもん』──再放送は絶望的!?
現在放送されているテレビ朝日系の『ドラえもん』が始まる前に放送された、日本テレビ版『ドラえもん』。こちらも視聴率に苦戦して打ち切りが決まった作品です。
放送時間が『マジンガーZ』と重なっていたことも分が悪かったのでしょう。
ドラえもん役は『平成天才バカボン』のバカボンのパパ役でおなじみの富田耕生さん。2クール目からは、『ドラゴンボール』シリーズの孫悟空などで知られる野沢雅子さんでした。
放送中にドラえもんを演じる役者が性別まで変わるという、なかなか聞いたことのないテコ入れが起きています。富田耕生さんは『マジンガーZ』で敵役のDr.ヘルの声だったので、ドラえもんのイメージにさわりがあったのかもしれません。
『ドラえもん』は1974年から単行本が刊行されて読者層が広がり、1977年に創刊された『月刊コロコロコミック』によって安定した人気を持つ作品になりました。
日本テレビ版の『ドラえもん』については当時の制作主任だった下崎闊さんが、真佐美ジュンの名前で公式サイトを開いています。2クール分のアニメのデータが書かれているこの公式サイトは、ネット上の誤情報を訂正する意図も込めて作られた模様です。
再放送については絶望的な状況で、『ドラえもん』の著作者である藤子・F・不二雄先生が日テレ版を好ましく思っていなかったこともあり、再放送の許可を出さないまま他界されました。
一方で藤子先生は自作品についても、単行本への収録を拒否したままのものがあります。しかし近年の全集にそれらの作品が収録されていることを考えると、日本テレビ版の『ドラえもん』が再放送される可能性もゼロではないかもしれません。
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◆ちょい役からヒロインになったキャラ
アニメ・漫画では1話だけの登場予定だったキャラクターが、人気が出過ぎて出番が増えていくことがよくあります。以下のキャラクターたちは最初はちょい役ポジションだったのが、その後晴れてヒロインになり作中で活躍しました。
●最初は1話限りのゲストキャラだった?──『うる星やつら』ラムちゃん
今でこそ国民的アニメキャラのラムちゃんですが、『うる星やつら』初期の時点で第1話にしか登場しないキャラの予定でした。
第1話ではあたるとラムちゃんが地球の運命をかけて鬼ごっこをしており、あたるからプロポーズをされたと勘違いします。そこでラムちゃんの出番は終わる予定でした。
しかし作者の高橋留美子先生が、第3話の構成を考えていたときにアイデアが出なかったため「苦しまぎれ」ということでラムちゃんを再登場させ、それ以降はメインキャラクターになります。
こうして第3話になって夫婦が同居するのは当たり前だと言い、彼女はあたるの自宅に押し掛けて来ます。
高橋先生によれば、『うる星やつら』は当初5話短期連載の予定で、あたるが次々変な人に出会っていくオムニバス形式のストーリーをイメージしていたそうです。 第2話に1コマも出てこないのは、その名残というわけです。
メインヒロインに据えなければ国民的ヒロインが生まれなかったと思うと、日本のポップカルチャーをも左右する英断だったといえるでしょう。
●アニメでは真逆の性格に?──『遊☆戯☆王』野坂ミホ
原作で本田が片思いしておりセリフも一言二言しかない1話限りのキャラのミホですが、アニメ第1作目で杏子と並ぶメインヒロインに昇格しました。
原作での彼女は先生の荷物検査で本田からプレゼントされたパズル型のラブレターが見つかったときに、うつむいてしまうほどおしとやかなキャラクターです。
一方でアニメではどちらかというとおしゃべりかつミーハーで、少し打算的なキャラに変わっており、お金とイケメンが好きという俗っぽい面も強調されています。
さらに爆弾発言が多く、「獏良君はトイレなんか行かないもん!」というセリフなど視聴者の笑いを誘うようなものもありました。
アニメでは遊戯たちと一緒に行動していることが多いため「カプセルモンスター」や「モンスターワールド」などのゲームにも参加しており、相手のイカサマを暴くなどの活躍も見せています。
原作初期はヒロインといえるキャラクターが杏子しかおらず、その杏子も出番が多くはなかったため、ミホのヒロイン化により華が生まれたといえるでしょう。
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〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01〉
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