劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が、興行収入37億円、観客動員が220万人を突破しましたが、日本では『ガンダム』のように知名度があまりないにもかかわらず、海外で大人気の日本のロボットアニメがいくつかあります。

 中には、社会現象となり子供たちが勉強をしなくなったため放送禁止になったり、最高視聴率100%を記録したりした異例のロボットアニメも──。

 日本ではあまり知られていないにもかかわらず、海外でブームを巻き起こしたロボットアニメには、どのようなモノがあるのでしょうか?

◆最終回直前に大統領が「放送禁止」を宣言!──『超電磁マシーン ボルテスV

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 日本で1977年に放送が始まった『超電磁マシーン ボルテスV』は、海外でも放送され、フィリピンでは国民的アニメとして、2024年の現在でも高い人気を誇っています。

 『ボルテスV』の放送が始まった1978年以前のフィリピンのアニメは、ほとんどアメリカの作品だったそうです。そのため、日本のロボットアニメはフィリピンの子供たちにとってかなり衝撃的で、『ボルテスV』は、最高視聴率58%という好成績を叩き出したといいます。

 アニギャラ☆REW編集長、水野ウバの友人の元フィリピンパブ嬢、リタさん(仮名・53歳、日本在住歴30年以上)は、『ボルテスV』は毎日放送されていたこともあり、学校が終わると走って家に帰り、一目散にテレビに駆け寄ったと、当時を振り返えって話してくれました。

 このようにフィリピンで『ボルテスV』は大ブームを巻き起こし、子供たちは勉強そっちのけでテレビに釘付けになり、そのことが社会問題に発展。それを危惧した、時の大統領のフェルディナンド・マルコス氏は放送を禁止する措置をとっています。しかも、最終回直前というタイミングで放送禁止となってしまったため、当時の子供たちの多くが肩を落としたそうです(※放送禁止の原因の理由として「内容が暴力的で道徳的ではない」など諸説あり)。

 そんな『ボルテスV』ですが、コラソン・アキノ氏が1986年の2月に大統領になった直後、最終回が放送され、当時幼かった国民はやっと最終回を目撃できたといいます。

 そして、2023年には『Voltes V Legacy』として、全80話にもなるテレビドラマが制作され、『ボルテスV』は今なお、フィリピンの人たちに愛され続けています。

◆「最高視聴率100!?」 モンスター級の大ヒット──『UFOロボ グレンダイザー』

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 日本でもさまざまなメディアミックスがされている『UFOロボ グレンダイザー』ですが、海外での人気は日本人の想像を超えるほどといわれています。

 フランスでは、『Goldorak(ゴルドラック)』と改題され、1978年の7月、子供たちの夏休みに合わせて放送が始まり、世代別に視聴率の集計を行ったところ、平均視聴率は驚異の75%、最高視聴率は100%という結果になったといいます。

 当時のフランスでは、テレビのチャンネルが少なく、子供向け番組も多くなかったという背景もあるようですが、『グレンダイザー』に熱狂した子供たちが多かったことに変わりはありません。

 2021年には『グレンダイザー』46周年イベントがフランスで行われ、作品の展示会には1ヵ月半の開催期間に約25000人のファンが会場に訪れたそうです。

 また、中東諸国でも『グレンダイザー』は放送され、中でもイラクでは「国民が唯一、ともに共感し一致できる話題は、サッカーかグレンダイザーだ」と言われるほど、国民に浸透した作品となったそうです。

 ほかにも、2022年にサウジアラビアで行われた「リヤド・シーズン2022」というイベント内のジャパンアニメタウンのブースでは、等身大33mのグレンダイザーが造られ、「世界最大の架空キャラクターの金属製彫刻」としてギネス世界記録に登録されています。

 多くの国で愛され続けている『グレンダイザー』ですが、2024年に再び日本でTVアニメ化が決定しました。

 総監督には、『機動戦士ガンダムSEED』の監督を担当した福田己津央氏、キャラクターデザインには『新世紀エヴァンゲリオン』で同じ役職を担当した貞本義行氏など、最前線でロボットアニメを制作するスタッフが集結。放送情報などはまだ明かされていませんが、このアニメ化を機に再び世界中で『グレンダイザー』ブームがくるかもしれません。

◆世界的な自動車メーカーが主題歌をCMに起用──『鋼鉄ジーグ』

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 1975年に日本で放送されたのち、海外への輸出が始まった『鋼鉄ジーグ』も海外で高い人気を誇り、1979年にイタリアで放送された際は社会現象を起こしています。

 アニメ本編が人気を博したほか、水木一郎さんが歌う主題歌「鋼鉄ジーグのうた」は、イタリアで多くのアーティストが独自にアレンジをしてカバー曲を発表しています。

 さらには、イタリアの自動車メーカー、Renault(ルノー)が、「鋼鉄ジーグのうた」をCMに起用。そのことは、日本でもネットを中心に話題となりました。

 また、2017年には、『鋼鉄ジーグ』をモチーフにしたイタリア映画、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク』が公開され大ヒット。監督を担当した 、ガブリエーレ・マイネッティ氏も、子供のときに『鋼鉄ジーグ』を観て育った世代だったようで、「子供たちは、ジーグのうたで正義を学んだ」と20175月の産経新聞のインタビューで話しています。

 さらに、映画のエンディングテーマには、「鋼鉄ジーグのうた」をバラードにアレンジしたものが使われ、『鋼鉄ジーグ』愛にあふれる作品だと、イタリア国内では高い評価を受けているようです。

 

 ──日本では人気はあるものの、『ガンダム』や『エヴァンゲリオン』のように知名度があまりないにもかかわらず、こうして海外で社会現象を巻き起こしたロボットアニメ。人気を得た理由の一つとして、放送当時の時代背景はもちろん関係していると考えられますが、大きなロボットが正義のために戦う姿を「カッコいい!」と思う少年のような気持ちや、ロボットを取り巻く人間模様や、ストーリーに夢中になってしまう気持ちは、万国共通なのかもしれません。

〈文/Takechip 編集/乙矢玲司〉

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