存在感が薄いキャラでもそれを武器にしていたり、主人公なのにモブキャラ扱いされていたり特徴はさまざまです。その中には、アニメで一言もしゃべらなかった登場人物も……。

 次の5人は存在感が薄すぎて、逆に気になってしまうキャラクターたちです。

◆存在感が薄いのに魅力がある黒子テツヤ──『黒子のバスケ』

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 黒子テツヤは異常に存在感が薄いのが特徴で、幻の6人目(シックスマン)として「キセキの世代」と呼ばれている5人の天才プレイヤーから一目置かれていました。身体能力やスタミナは低いものの、バスケットの試合では存在感の薄さを活かした技を使って活躍します。

 黒子の得意技は、自分の存在感を極限まで薄める視線誘導(ミスディレクション)です。存在感のなさと観察力を武器に、相手の視線や意識を誘導することで相手に視認されることなくコートを動けます。

 そして、強い敵と対戦して、壁にぶつかるたびに成長するのが黒子です。存在感のあるほかの選手に視線を誘導し、その隙を突いてドリブルで抜き去る消えるバニシングドライブ、変則フォームによって放ったボールが相手の視界から消えるファントムシュートといった技も開発します。

 黒子は基本的にローテンションで、感情を表に出すことも少ない地味なキャラクターです。しかし、冷静にゲーム展開を分析したり、熱くなっている味方をなだめたり、試合でその性格は活かされています。

 また、地味でありながら、行動は積極的です。自分の言いたいことはストレートに伝え、不良にからまれている中学生の間に割って入ることも。

 また、内面には熱いものを持っており、日本一を目指すと宣言し、その言葉通り勝つためにとことん努力します。「諦めることを知らなさ過ぎる」と評されるように、心の存在感が強いところが黒子の魅力でしょう。

◆どんどん影が薄くなる悲劇の主人公、赤座あかり──『ゆるゆり』

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 赤座あかりは良い子キャラのため、ほかの登場人物と比べると個性が乏しく空気扱いされることが多いです。

 原作のカラーページではあかりが登場した途端停電になったり、アニメでは姿を消されて輪郭を点線で表現されたりと主人公でありながら悲惨な目にあっています。

 あかりの存在感のなさは、同じごらく部の歳納京子からも度々いじられており、七夕の願いごとに「もっと目立ちますように」と書くなど自虐ネタにするほど。しかし、あかりにも個性がないわけではありません。

 自分のことを「あかり」と名前呼びするキャラで、ヘアスタイルは頭の両サイドにかわいいお団子があります。最大の特徴であるお団子ヘアは着脱式で、驚いたり焦ったりすると頭から外れ、自ら投げて手りゅう弾のように使うことも。

 しかし、そのような姿も周りのキャラクターの個性が強すぎるためイマイチ目立たず、がんばって存在感を出すための涙ぐましい努力にしか見えません。

 また、タイトル通りユルい百合カップルが多く登場する作品ですが、あかりにはそのような相手がいないのが最大の原因でしょう。

 船見結衣のことを好きな吉川ちなつに、来るべき日のためキスの練習台にされ、強引にファーストキスを奪われたり、自分の部屋をあかりの写真だらけにしている妹大好きな姉・赤座あかねにパンツを盗まれたり。あかりの百合要素は悲惨なものばかりで、ある意味悲劇のヒロインという言葉がぴったりです。

◆アニメでは一言もしゃべらない越谷卓──『のんのんびより』

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 越谷卓(以下、お兄ちゃん)は原作で「ウン」といった短い返事をしていることがありますが、アニメでは3クール(36話)でなんと一言もしゃべりません。そのため、アニメ公式のキャラクターボイスの表示も「???」となっています。

 中学3年生のメガネをかけたオタクで、見た目も地味で存在感が薄いです。越谷小鞠と越谷夏海の兄であり、越谷家が話の舞台になることも多いですが出番は少なくなっています。

 しかし、一緒に行動していることは多く、後ろを地味に通り過ぎたりいつの間にかバスに乗っていたり。また、作中では名前すら呼ばれることがなく「兄ちゃん」「にぃにぃ」「お兄さん」「メガネ君」と声をかけられています。

 釣りでは夏海たちが釣った魚を何度も顔面にぶつけらたり、せっかくお兄ちゃんが一生懸命しゃべっているシーンではギターの音でかき消されて声が聞こえなかったり気の毒な扱いが多いです。

 アニメ3期にあたる『のんのんびより のんすとっぷ』の最終回では、中学校を卒業します。卒業式の校歌を歌うシーンで、いよいよお兄ちゃんの声を聴けるかと期待した人も多いのではないでしょうか。

 しかし、お兄ちゃんはピアノの伴奏だったため校歌を歌わず。自分の卒業式で唯一の卒業者がピアノ伴奏をするというオチで、最後までお兄ちゃんにしゃべらせない演出は見事でした。

◆カブトムシより存在感が薄い東横桃子──『咲-Saki-

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 鶴賀学園・麻雀部の東横桃子(通称、モモ)は存在感が薄く、隣にいても気づかれないほどです。ステルスモモの異名を持ち、麻雀ではリーチをかけても警戒されず、アガリ牌を捨ててもスルーされます。

 その実力は高く、県大会副将戦では原村和、龍門渕透華と同卓でありながらトップの成績を収めました。その存在感の薄さは絶大で、一緒にいる時間が長いチームメイトですら認識するのが難しいです。

 麻雀部にスカウトするためステルス状態のモモを見つけ出した加治木ゆみですら、声をかけられないと傍にいても気づきません。また、妹尾佳織がモモの気配を探ったときには、彼女よりカブトムシの気配に先に気付く始末。

 そんな無敵とも思われるステルス能力にも弱点はあり、麻雀の実力者から「消える」には時間がかかります。また、オカルトを信じていない人には通用せず、モニター越しであればモモの姿を認知できます。

 モモの影の薄さは金メダル級ですが、チームメイトにとっては頼もしい存在です。それにしてもリーチをされても、アガリ牌を振っても気付けないなんて、麻雀をたしなむ人にとって絶対に一緒に卓を囲みたくない相手でしょう。

◆主人公なのにモブキャラ設定の白石純太──『久保さんは僕を許さない』

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 白石純太はモブキャラという設定のため見た目も地味で、学校ではクラスメイトや先生に認知されません。そのため、自分からアピールしないと気づいてもらえず、白石を見つけられたらその日は運が良いとクラスメイトが喜ぶほどです。

 影の薄さは機械相手にも発揮され、スマホのカメラや自動ドアにも認識されづらくなっています。また、中学の卒業写真では白石が写っているのに、欠席者扱いされて別枠で顔写真を合成されてしまいました。

 弟の誠太、クラスメイトの久保渚咲とその家族には認識されるものの、母親からは見つけてもらえない悲しい存在です。

 アニメの主人公というと一番後ろの窓際の席というのが定番ですが、白石は存在感の薄さを際立たせるためか、人の出入りが多い廊下側のドア傍になっています。

 存在感が薄すぎるため歩いていてもよく人とぶつかりそうになり、レジで商品を置くといきなり現れたように思われて店員にびっくりされます。日常で大変なことが多いうえ、存在感のなさによるメリットもないです。

 しかし、渚咲が白石に関心を持ったのは、写っていたのに欠席扱いされていた中学の卒業写真がきっかけでした。存在感がないことで渚咲に興味を持たれ、美少女にちょっかいを出されるようになったのだから、白石のこれまでの苦労も報われたのかもしれません。

 

 ──『HUNTER×HUNTER』のメレオロンもそうですが、スポーツや麻雀などを含めてバトルもののアニメであれば、影の薄さはキャラクターの特徴であり、武器にもなっています。

 それに対して、日常系のアニメで存在感がないキャラクターは、悲惨な目にあうことが多いようです。しかし、影が薄いからこそ視聴者に注目されるキャラとなっているので、彼らも少しは報われるのではないでしょうか。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

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