近年はアニメ・漫画を語るときに伏線の存在が重要視されることが多く、『推しの子』のように「伏線回収がすごい」と人気を博す作品も少なくありません。

 一方で謎が残ったまま完結した「伏線未回収」の作品も注目されることがあり、以下の作品の謎は今でもファンの間で話題にされるほどです。

アニメスタッフさえ正体を知らない!? 『ポケットモンスター』GSボール

 アニメのオレンジ諸島編にてGSボールという名称で初登場するも、正体不明のままだったモンスターボール。その謎はジョウト地方編へ持ち越され、モンスターボール職人のガンテツに相談しますが、その道のプロの力をもってしても解明できませんでした。そしてなんと、これ以降GSボールが劇中に登場することはありません。

 これはのちにゲーム『ポケットモンスタークリスタルバージョン』で幻のポケモン、セレビィをゲットするためのアイテム、ジーエスボールとして登場する形で謎が明かされます。

 しかし当時は「モバイルシステムGB」というシステムを使わないとジーエスボールは手に入りませんでした。それには携帯電話が必須かつサービス利用には通信料もかかり、当時のポケモンのおもなユーザー層である子供たちが入手するには高いハードルとなります。

 こうした背景から、結局アニメに登場したGSボールが何か分からずじまいの視聴者が多かったようです。

 また脚本家をつとめた首藤剛志さんによると、GSボール登場にはアニメ『ポケットモンスター』の2作目の映画『劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』の宣伝の役割もあったようです。

 モンスターボールは投げて使う物といっても、丸投げされてはスタッフも困ったことでしょう。

打ち切り回避のためには仕方なかった? 『遊☆戯☆王』シャーディーの正体

 作中で黒幕のような立ち回りをしていたシャーディーでしたが、結局正体は謎のまま完結します。

 シャーディーは神出鬼没に遊戯たちの前に現れる、マリクやペガサスなど千年アイテム所持者の野望の達成をけしかけるといった行動を取っていました。しかし彼の正体はおろか、それらの行動をとった動機さえ分からずじまい。

 続編にあたる劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』では『遊☆戯☆王』本編の時点で既に死んでいることが判明。

 またシャーディー・シンという容姿の似た青年が登場し、彼は墓守の一族として人々の精神の進化を説いていたことを明かします。

 しかしシャーディーとシャーディー・シンが同一人物であると言い切れる描写もなく、劇場版に登場してもなお謎の残る人物でした。

 『遊☆戯☆王』文庫版2巻では、連載当時遊戯がシャーディーと闇のゲームで対決した回のアンケート結果が芳しくなかったと作者コメントにて明かされており、打ち切りの話も出ていたようです。シャーディーについての描写が少なく謎が残ったまま完結してしまったのは、こうした理由もあると考えられます。

手の込んだミスリード? 『五等分の花嫁』結婚式で風太郎がつけていたミサンガ

 風太郎が結婚式のときにつけていたボロボロのミサンガは二乃にあげたものでしたが、結婚相手は二乃ではなかったため謎が残るシーンとなっています。

 林間学校のときに二乃と風太郎を結ぶアイテムとして描かれたミサンガを風太郎が結婚式のときに付けていたので、最終的に結婚するのはニ乃だと思われていました。

 このミサンガの持ち主はらいは→風太郎→二乃→風太郎→二乃と変化していますが、最終的に二乃の手に渡っていてその後このミサンガを風太郎に返すシーンはありません。

 ここで意味深に描かれているのが、風太郎と二乃がミサンガをつけている場所です。ミサンガにはつける場所にそれぞれ意味が込められており、利き手なら恋愛、逆の手であれば勉強を意味します。

 林間学校後入院した風太郎に二乃はお守りとしてミサンガを返していますが、そのときは利き手とは逆の左手につけていましたつけ。そして次の話で風太郎がミサンガをしているのは右手です。

 こういうのに疎そうな風太郎は単に利き手につけ変えただけかもしれませんが、二乃と風太郎の関係性やお互いの感情を遠回しに描いているようにも見えます。ちなみに結婚式の際は左手に身につけており、これもまた意味深です。

 ミサンガがいつの間にか風太郎のもとに返ってきているという点だけ見れば、未回収の伏線にも見えます。しかしミサンガをつける場所が意味ありげに変わっていることや、本作は風太郎が5つ子の誰と結婚するのか分からないようにするようなミスリードが多いことからも、この描写はそうしたミスリードや一種の心情描写の可能性もあるでしょう。

むしろ謎なのが魅力? 『ダイヤモンドは砕けない』ミキタカの正体

 宇宙人を自称し、意味深なシーンも多い支倉未起隆(以下、ミキタカ)でしたが、結局本当に宇宙人だったのかどうかは謎のままでした。

 本人いわく年齢は216歳で職業は宇宙船のパイロット、本名は「ヌ・ミキタカゾ・ンシ」です。

 しかし一見すると自分を宇宙人だと思い込んでいる人間にも見え、ミキタカの母親は「息子が自分は宇宙人だと言って転校する先々の学校を混乱させて困る」と言っています。それに対してミキタカは母親を洗脳して息子だと思い込ませていると話しており、ますます怪しいです。

 一方で、仗助から貰ったティッシュの使い方が分からず食べてしまうといった常識への疎さは普通の人間でないように見えます。そしてそのティッシュのお礼として、カバンの中から一切溶けていないアイスクリームを出すという明らかに普通でない芸当を見せる点もただの人間とは思えません。

 また仗助が岸辺露伴からお小遣いを巻き上げようとチンチロリン勝負を挑んだときは、ミキタカがサイコロに姿を変えていました。スタンドに関しても最初は見えていなかったようでもあり、鋼田一豊大との鉄塔での戦いではクレイジーダイヤモンドが見えていたようでもあります。

 このことからも、考えれば考えるほど本当に宇宙人なのか、実はスタンド使いなのか、それとも別の何かであるのか分からなくなってしまいます。

 しかしミキタカに関して荒木先生は、『JOJO-A-GO!GO! DISC3 ARAKI HIROHIKOで「本当はどっちなんだろうな、というのが面白い」と語っています。

 あえて正体が謎のままになっているのが魅力のキャラクターであり、また行方不明者が多発するような町・杜王町の奇妙さをより際立たせているといえるでしょう。

 

 ──近年ではSNSの発達により作品の感想を気軽に発信・閲覧できることや、長期的な連載・放送をする作品が以前より少なくなったことなどからストーリーの中に謎をできるだけ残さないよう制作される傾向があるように思います。

 特に制作の裏側が見えてしまうような未回収の伏線は、今だと炎上してしまうことさえあるかもしれません。

〈文/michel 編集/諫山就〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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