ジャンルも世界観も違う作品同士が組むと、思わぬ名場面や話題が生まれることがあります。『機動戦士ガンダム』と『ハローキティ』の平和をテーマにした企画、『美少女戦士セーラームーン』に登場した“しんちゃん”風の親子など、アニメやキャラクターの枠を越えたコラボには、作品の新しい見え方が隠れています。
◆『ガンダム』とキティはなぜ“和解”したのか LOVE&PEACEに込めた狙い
まったく別の世界にいるように見える『機動戦士ガンダム』と『ハローキティ』ですが、実は大きなコラボ企画を展開したことがあります。きっかけは、2019年に『機動戦士ガンダム』が40周年、『ハローキティ』が45周年を迎えたことでした。
同年に行われた「ガンダム vs ハローキティ対決プロジェクト」では、作品の垣根を越えた対決が話題になります。その後、2つのキャラクターは“和解”し、2020年には「2020年 愛と平和のガンダム&ハローキティプロジェクト」が始動しました。
このプロジェクトでは、YouTubeで特別プロモーションビデオが公開されるなど、幅広い展開が行われました。テーマに掲げられたのは「LOVE&PEACE」。モビルスーツが戦場を駆ける『ガンダム』と、世界中で親しまれる『ハローキティ』が同じ言葉を掲げたことで、たんなる記念企画以上の意味を持つコラボになったといえます。
◆『セーラームーン』にしんちゃん? 声優まで重なった遊び心
『美少女戦士セーラームーン』と『クレヨンしんちゃん』にも、ファンの記憶に残る意外な接点があります。『美少女戦士セーラームーンS』第15話「友達を求めて! ちびムーンの活躍」には、野原しんのすけと母・みさえを思わせる親子が登場しました。
この回で、ちびうさは野原しんのすけにそっくりな人形を拾います。その人形の持ち主として現れたのは、一見すると爽やかな美少年。しかし話し方はしんのすけを思わせるもので、最後にはズボンとパンツを脱いで「ナウマンゾウさーん!」と叫ぶなど、『クレヨンしんちゃん』らしいノリを見せています。
さらに面白いのは、声のキャスティングです。美少年の声を担当したのは、当時しんのすけ役だった矢島晶子さん。母親役は、みさえ役のならはしみきさんでした。見た目だけでなく声優まで重ねることで、分かる人には強く伝わる遊び心になっています。
また、『セーラームーンSS』第19話「十番街の休日!無邪気な王女様」では、うさぎが夏祭りに行く場面で、出店の綿あめに野原しんのすけに似た男の子のイラストが描かれていました。逆に『クレヨンしんちゃん』側にも、『セーラームーン』のパロディキャラクター「セーラームフーン」が登場しています。
1994年8月8日放送の『クレヨンしんちゃん』第109話「アクション仮面に再会だゾ」では、セーラームフーンをちびうさ役の荒木香衣さん、セーラーイヤーンをセーラーマーキュリー役の久川綾さん、セーラーバカーンをセーラージュピター役の篠原恵美さんが担当しました。同じテレビ朝日系列で放送されていたからこそ実現しやすかった、時代ならではのパロディだったのかもしれません。
◆『ハム太郎』と『あさりちゃん』はなぜ出会ったのか 同じ雑誌がつないだ夜の来訪
ジャンルの違う子ども向け作品同士がつながった例として、『とっとこハム太郎』と『あさりちゃん』のコラボも外せません。2017年、『とっとこハム太郎』の原作20周年を記念して、長期連載作品『あさりちゃん』とのコラボマンガが制作されました。
ハムスターの目線で日常を描く『ハム太郎』と、小学生の生活をにぎやかに描く『あさりちゃん』は、一見すると別々の世界の作品です。しかし、同じ雑誌で連載されていた縁があり、この組み合わせが実現しました。
作中では、あさりがハム太郎たちを迎えるために、ひまわりの種を用意して待ちます。ところが、ハム太郎たちはなかなか現れません。姉のタタミは、誰かのいたずらではないかと疑い、待ちくたびれたあさりは眠ってしまいます。
その後、夜行性のハム太郎たちは夜になってから来訪しますが、あさりの母親にネズミと間違われ、掃除用具で追い出されてしまいました。かわいいコラボでありながら、最後はどこか『あさりちゃん』らしいドタバタ感で締まるのが、この組み合わせならではの面白さです。
◆『ドラえもん』がGUCCIに? 国民的キャラと高級ブランドの意外な接点
アニメキャラクターと高級ブランドのコラボとして大きな話題になったのが、『ドラえもん』とGUCCIの組み合わせです。2021年、GUCCIは『ドラえもん』とのコラボ商品を展開し、国民的キャラクターがラグジュアリーファッションの世界に登場しました。
価格も大きな注目を集めました。GUCCIの公式Webサイトによると、たとえば、iPhone11ケースが4万8400円、メンズスニーカーが12万5400円、ショルダーバッグが13万2000円、メンズコットンスウェットシャツが14万8500円でした。日常的に親しまれているキャラクターが、ハイブランドの商品にデザインされることで、普段とは違う存在感を見せています。
『ドラえもん』は日本だけでなく海外でも広く知られているキャラクターです。だからこそ、世界的ブランドとのコラボにも違和感なく溶け込めたのでしょう。アニメやマンガのキャラクターが、ファッションの文脈でも価値を持つ時代を象徴する企画だったといえます。
──『ガンダム』と『ハローキティ』、『セーラームーン』と『クレヨンしんちゃん』、『ハム太郎』と『あさりちゃん』、『ドラえもん』とGUCCI。どの組み合わせも、最初に聞くと意外に思えるものばかりです。
しかし、それぞれの背景をたどると、周年記念、放送局のつながり、掲載誌の縁、世界的な知名度など、実現に至った理由が見えてきます。意外なコラボは、たんなる話題作りではなく、作品の持つ広がりや、キャラクターが長く愛されてきた証でもあるのでしょう。
普段は交わらない世界が重なったとき、キャラクターの新しい魅力が浮かび上がります。そう考えると、今後も思わぬ作品同士が手を組み、ファンの記憶に残るコラボを生み出していくのかもしれません。
〈文/秋山緑〉
《秋山緑》
アニメ・漫画・ゲームを中心に、エンタメ領域の記事制作に携わるライター。話題作から長年愛される名作まで幅広く扱い、作品の魅力やキャラクターの関係性、印象的なシーンを読者目線でわかりやすく伝える記事制作を得意とする。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画作品のコラムや解説記事を担当している。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム ver1.5」 (C)創通エージェンシー・サンライズ』


