『名探偵コナン』のアニメには、時折シュールな笑いを引き起こすアニオリ回があります。4月12日から上映が始まった劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』をはじめ、映画ではスケールの大きなストーリーや派手なアクションが魅力ですが、テレビシリーズのアニオリ回にはまた違ったおもしろさがいっぱいです。

 次のエピソードは、登場キャラが濃い・とんでもない犯行動機・ぶっ飛んだシナリオなどでカオスといえるような回となっています。

◆「被害者の倒れ方」が謎シチュエーションすぎる……第961話「グランピング怪事件」

 遺体の手にメモが握らされているのはありがちですが、なんとこのエピソードの被害者は口にカニの足をくわえたうえ女装しており、顔には幼稚な落書きレベルのメイクがされた状態で発見されます。これは『名探偵コナン』史上12を争う衝撃的な姿でした。

 なぜこのようにおかしな姿になってしまったかというと、被害者とグランピングに来ていた3人の同行者が、遺体を発見したときに罪のなすりつけ合いをしたためです。

 しかも、その行動にいたった考えは「シェフの犯行に見せるため、口にカニを入れておこう」「メイクアップアーティストの犯行に見せるため、顔にメイクしておこう」「妻の犯行に見せるため、犯人は嫁と書いたメモを握らせておこう」というレベル。

 それに対してはさすがのコナンも、「人1人亡くなってるんだぞ」と視聴者を代弁するかのような冷静なツッコミを心の中でつぶやいています。

 犯人は被害者と不倫関係にあったメイクアップアーティストの20代女性です。動機はカニが原因で、被害者にフラれたことによる腹いせでした。

 アレルギーでカニは食べられないという被害者に、犯人がむりやりカニをすすめた……というか、顔面に投げつけたことで2人は破局してしまいますが、逆恨みもいいところです。

 そんな容疑者の口からは「私たちの仲を引き裂いたカニ」というパワーワードまで出る始末。犯行方法もカニ入りクッキーを食べさせ、アナフィラキシーショックを起こさせるという常軌を逸したものでした。被害者がカニアレルギーだと知らなかったといって逃げ切るつもりだったようですが、さすがにクッキーにカニを入れる不自然さは、不倫関係が明らかになれば確実に疑いをかけられるでしょう。

 衝撃的すぎる遺体の姿、マヌケすぎる動機や犯行方法もサブタイトル通りまさしく「怪事件」。最終的には解決に至りますが、被害者が女装をしていた理由だけは最後まで不明という微妙にモヤモヤの残る回でした。

◆犯行現場にはシンクいっぱいのあの食材が……第1028話「ケーキを愛する女のバラード」

 この回の被害者は、シンクいっぱいのアンコでおぼれて窒息死するという「グランピング怪事件」の被害者と肩を並べるほどの衝撃的な姿で発見されます。

 社長秘書の犯行動機も、被害者である社長が洋菓子店で和菓子を作ろうとしたことが許せなかったというハチャメチャなものです。

 被害者の衝撃的な姿だけでなく、犯人の罠によりがれきの下敷きになったのに怪我1つ負っていない副社長夫人。いつものように眠らされた小五郎が、犯人に倒れ掛かってワルツを踊りながら推理ショーを繰り広げるなどかなりツッコミ所の多い回です。

 事件の内容や犯行動機だけでもカオスすぎる内容ですが、追い詰められた犯人が逮捕される間際、コナンたちの頭が洋菓子に見えはじめるという迷シーンで視聴者にとどめをさしてきます。

 この回には、老舗和菓子店である月よみ山路 松葉屋のX(旧Twitter)公式アカウントも反応しています。シンクいっぱいにアンコを溜めこむとシンクが歪む危険があることや、柔らかい状態のアンコでおぼれたとするとかなり熱いはずというプロ視点での危険性を解説していました。

 本業の人の反応まで出てくるほど、強い反響のあった回といえるでしょう。

1話限りはもったいない名キャラ登場回? 第797話「夢みる乙女の迷推理」

 早口で妄想癖のある強烈なオタクキャラで、大きな爪あとを残した中居芙奈子(以下、フナチ)の登場回です。フナチは好きな乙女ゲーのキャラに似ているという理由で、行方不明のフリーターの青年を捜してほしいと、毛利小五郎探偵事務所を訪れます。

 捜査パートではコナンに協力する形で登場しますが、依頼をした行方不明のフリーターを宝石強盗と思い込む、女性向け漫画風の画面を交えて急に一人芝居をし出す、乙女ゲーについて熱く語るなど1話しか登場していないのに視聴者に強いインパクトを残しました。

 下の名前で呼ばれがちなコナンのことを「江戸川様」という独特な呼び方をするところも特徴的です。実はそこら中に死亡フラグがある本作で、初めて作中で「死亡フラグ」という言葉を発したキャラでもあります。

 フナチは放送後も再登場を望む声が多く、この回だけの登場にもかかわらず視聴者からの人気が高まったキャラといえるでしょう。

◆ウソみたいな証言からはじまる事件? 第1089話「天才レストラン」

 謎の老人の「オムライスの死体を見た」というあまりにぶっ飛びすぎた証言が飛び出すインパクト大の回です。

 コナンはその老人にしつこく追いかけられ「聚楽大」というレストランにたどり着くのですが、そこはコナンが蘭と過去に来たことのあるお店でした。そしてのちに、この老人こそが「聚楽大」のシェフだったことが発覚します。

 このレストランの特製お子さまランチをコナンが、「お子さまランチはしょせんはお子様ランチ」だと批判し食べなかったことがきっかけで、シェフはプライドを傷つけられました。この一言でなぜかシェフの腕が落ちて廃業になってしまったという過去があり、コナンに復讐をしようという魂胆です。

 犯行の手口や動機がハチャメチャなのもさることながら、「聚楽大」のシェフがお子様ランチのかぶりものをしていたり、スタッフたちもスプーンのかぶりものをしていたりと視覚的にも強烈なインパクトがあります。

 そしてきわめつけにこのエピソードは、すべてコナンの見ていた夢だったことが発覚して幕を閉じます。どうりで風邪をひいたときに見る夢のような内容だったわけです。

 この回の放送時は過去一のカオス回としてネットで話題になり、Xでは「オムライスの死体」がトレンドワードにもなるほどでした。

 

 ──このような『名探偵コナン』のカオスなアニオリ回の脚本をつとめるのは、浦沢義雄さんか大和屋暁さんであることが多いです。浦沢さんは代表作として『ボボボーボ・ボーボボ』、大和屋さんは『銀魂』などの脚本にメインで携わっています。

 推理ものにもかかわらず、どこかギャグマンガのようなノリになっているのは、こうした理由が大きいのかもしれません。

〈文/michel 編集/諫山就〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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