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本記事にはTVアニメ・原作漫画『ドラゴンボール』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

本記事はTVアニメ・原作漫画『ドラゴンボール』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 悟空をもっとも追い詰めた相手は、ブロリーやビルスではなく、心臓病だったのかもしれません。数々の強敵と戦ってきた悟空ですが、未来世界ではウイルス性の心臓病によって命を落とし、人造人間に立ち向かうことすらできませんでした。しかも、家族や仲間に同じ症状が出た描写はなく、感染源や発症の時期、サイヤ人の耐性との関係には今も多くの疑問が残っています。

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◆悟空はどこで心臓病に感染したのか ネズミか、ヤードラット星か

 悟空の心臓病を考えるうえでまず気になるのが、どこで感染したのかという点です。作中で原因は明言されていませんが、候補としてよく挙げられるのが、少年時代にブルー将軍との戦いで口に入れたネズミ、そしてナメック星から地球へ帰る途中で滞在したヤードラット星です。

 ブルー将軍との戦いでは、潔癖症のブルー将軍がネズミにひるんだことで悟空は窮地を脱しました。その後、悟空はそのネズミを口の中に入れて崩れる洞窟から脱出しています。もしこの時点で感染していたなら、心臓病の発症までかなり長い潜伏期間があったことになります。

 一方、ヤードラット星で未知のウイルスに感染していたと考えると、発症までの期間は比較的短くなります。悟空は同星で瞬間移動を学んでから地球へ戻りましたが、そこにどのような病原体が存在したのかは描かれていません。異星由来のウイルスだった可能性を考えると、サイヤ人である悟空の体に予想外の影響を与えたとしても不思議ではないでしょう。

 ただし、未来トランクスが特効薬を持っていたことを踏まえると、未来世界では地球上でも同じ病気が広がり、治療法が開発されていた可能性もあります。悟空の病も、特別な宇宙ウイルスではなく、ありふれた感染症がサイヤ人の体で深刻化したものだったのかもしれません。

◆本編で発症が遅れたのはなぜか 消えたフリーザ親子戦の影響

 未来世界では、人造人間が現れる前に悟空は心臓病で亡くなっていました。しかし本編世界では、未来トランクスが来訪したことで歴史が変わり、悟空の発症時期も少しずれています。この違いには、フリーザとコルド大王との戦いが関係している可能性があります。

 本来の世界線では、地球に襲来したフリーザ親子を倒すのは未来トランクスではなく悟空だったはずです。悟空の性格を考えると、トランクスのように一瞬で決着をつけるよりも、スーパーサイヤ人としてある程度戦いを続けた可能性があります。

 もしスーパーサイヤ人化が体に大きな負担をかけ、体内のウイルスや病状の進行に影響していたとしたらどうでしょうか。未来世界の悟空はフリーザ親子との戦いで長く変身し、その負担によって心臓病の発症が早まった。一方、本編世界ではトランクスが代わりに倒したため、悟空の発症が少し遅れたとも考えられます。

 実際、本編では人造人間19号との戦いでスーパーサイヤ人になった直後、悟空の心臓病は急激に悪化しているように見えます。変身そのものが引き金だったのか、激しい戦闘で免疫力が落ちたのかは不明ですが、心臓病とスーパーサイヤ人化の相性が悪かった可能性は十分にありそうです。

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◆サイヤ人にウイルスは効かないはず? 『銀河パトロール ジャコ』との矛盾

 悟空の心臓病には、もう一つ大きな引っかかりがあります。『銀河パトロール ジャコ』では、銀河パトロール隊員のジャコが、人類を根絶やしにできるウイルス兵器「絶滅爆弾」を持っていることが明かされています。しかし、そのウイルスはサイヤ人には効かないと説明されていました。

 この設定を踏まえると、サイヤ人である悟空がウイルス性の心臓病で命を落としたことには一見矛盾があるようにも見えます。ただ、ジャコの発言が想定していたのは、あくまで通常のサイヤ人だったのかもしれません。スーパーサイヤ人という伝説の変身が体へ与える負荷までは、銀河パトロールの想定外だった可能性があります。

 スーパーサイヤ人になることで全身の細胞が活性化し、同時にウイルスの活動まで進んでしまう。あるいは、変身後に体力や免疫機能が大きく落ちる時間があり、そこを心臓病につけ込まれた。そう考えると、サイヤ人に効きにくいはずのウイルスが、悟空にだけ致命的な結果をもたらした理由も見えてきます。

 特に悟空は、スーパーサイヤ人に覚醒してからまだ数年しか経っていない時期でした。体が新しい力に完全に慣れておらず、強さを得た代わりに見えない負担を抱えていたとすれば、心臓病はたんなる病気以上に、サイヤ人の進化の隙を突いた敵だったともいえるでしょう。

◆仙豆もドラゴンボールも間に合わない 悟空を止めた“病気”の怖さ

 悟空の心臓病が恐ろしいのは、これまで何度もピンチを覆してきた手段が通用しにくい点です。仙豆は体力や傷を回復させる力を持っていますが、病気に効くものとして描かれているわけではありません。戦闘によるダメージなら癒やせても、体内で進行するウイルスには対応できなかったと考えられます。

 ドラゴンボールで生き返らせればよいのではないか、という疑問もあります。しかし、未来世界では悟空の心臓病が発覚してから亡くなるまでの猶予が短かった可能性があります。さらに、悟空を生き返らせても体内のウイルスがそのままなら、根本的な解決にはなりません。

 本編世界では未来トランクスが特効薬を持ってきたため、ドラゴンボールに頼る必要はありませんでした。一方、未来世界では悟空の死後にピッコロも命を落とし、地球のドラゴンボールは使えなくなってしまいます。人造人間による絶望の始まりは、悟空が病気で戦線に立てなかったことと深くつながっていました。

 ビルスやブロリーのような圧倒的な強敵は、悟空にとって乗り越えるべき壁として描かれます。しかし心臓病は、努力や修行、戦闘センスだけではどうにもならない相手でした。だからこそ、悟空が本当に手も足も出なかった最大の敵は、目に見えないウイルスだったといえるのかもしれません。

 

 ──亀仙人はかつて、修行だけでなく休むことの大切さも教えていました。どれほど強い戦士でも、体が万全でなければ力を発揮できません。スーパーサイヤ人になった悟空でさえ、体の内側から忍び寄る病には抗えなかった。そう考えると、悟空の心臓病は『ドラゴンボール』の中でも異質で、現実味のある恐ろしさを持った“敵”だったのではないでしょうか。

〈文/相模玲司〉

《相模玲司》

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動。メンズファッション誌の編集、週刊誌Web版での取材記事制作、アニメ・漫画関連のムック本制作など、幅広い媒体で編集・執筆経験を持つ。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画・映画を中心としたエンタメ記事の編集、構成確認、コンテンツ制作を担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンボール」第27巻(出版社:集英社)』

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