νガンダムや百式改には、本編では描かれなかった“重武装化プラン”が存在していました。アムロ最後の愛機に追加装甲と大火力を盛り込むHWS、百式の系譜を重装甲化したフルアーマー百式改、そしてガンダムMk-IIIの性能をさらに押し上げようとした幻の計画。時代の流れや戦争の終結によって実戦の場を逃した機体をたどると、『ガンダム』らしい試作機のロマンが見えてきます。
◆νガンダムはもっと重武装になるはずだった? アムロ最後の愛機に残るHWS計画
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主役機といえば、アムロ・レイ最後の愛機、νガンダムです。今でも根強い人気を誇る本機ですが、実は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャアのモビルスーツ・バリエーション』にて、フルアーマープランが登場しています。
それがνガンダム(ヘビー・ウェポン・システム装備型)通称HWSです。書籍『MSV The Second-Generation 1986-1993』(出版社:双葉社、2019年10月19日出版)によると、本プランは第二次ネオ・ジオン抗争が長引いた場合を想定して、やや過剰とも言える装備を装着した形態とされています。
書籍『マスターアーカイブ モビルスーツ RX-93 νガンダム』(出版:SBクリエイティブ、2019年7月20日出版)によると、脆弱性が指摘されていた胴体前面に強化装甲を増設。その上面には、ミノフスキー粒子による電波撹乱効果を低減させる、特殊パウダーやダミーバルーンなどの、補助兵装を装填できるディスペンサーが配置されています。
また、増加装甲の追加による重量対策として、脚部には機動性向上のためのスラスターユニットを装着。ちなみに、増加装甲の一部にはミサイルが内蔵されており、フルアーマーZZガンダムのように、装甲自体がウェポンコンテナとして機能しています。
武装に関してはハイパー・メガ・ライフル、ニュー・ハイパー・バズーカ、両肩部にはミサイル・ランチャーを装備。更に、標準装備のシールドに重ねるようにマウントする、大型連装メガ粒子砲を装備したハイ・メガ・シールドなど、多彩な武装が用意されました。最終的には胸部装甲にIフィールド発生装置まで内蔵するプランもあったようです。
なお、これらのプランは宇宙世紀0094年の実用化、宇宙世紀0100年までの実戦配備を想定した、長期計画となる予定でした。しかし、第二次ネオ・ジオン戦争が早期に収束したこと。νガンダムがロンド・ベルへの納入から、1週間で喪失したことから、実現しなかった幻のプランとなったのです。
◆百式改はなぜ重装甲になったのか 速さを捨てても得たかった大火力
『機動戦士Zガンダム』で、クワトロ・バジーナことシャア・アズナブルの愛機として活躍した百式。その発展型として、シャア・アズナブルの搭乗を想定した、百式改が存在します。
そんな百式改には、さらなる強化プランが存在しました。それがフルアーマー百式改です。本機では、百式の特徴である運動性や機動性ではなく、防御の向上と武装強化を重視した改造が行われています。
まず、武装としては背部のビーム・キャノンを始め、胸部のメガ粒子砲、腰部と胸部には2連装ミサイル・ポッドなど豊富な兵装を搭載。ちなみに胸部のメガ粒子砲は、ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』の解説によると、ZZガンダムのハイ・メガ・キャノン並みの威力があるようです。また、場合によってはロング・メガ・バスターなど大火力の携行装備が使えます。
格闘装備にも手が加えられており、前腕部には近接戦闘用の炸裂ボルトが搭載されました。こうした各種装備の搭載による重量増加で、機動性や運動性は低下しています。これを補うため、胸部上面の装甲部にリフレクター・パネルを設置。Iフィールドを展開できるようになったことで、コックピット周りの防御力を向上させました。
原型機の強みは薄まったものの、結果的に同世代のモビルスーツの中では、屈指の火力と防御力を持つ機体となっています。ただ、百式改が開発された当時は、可変機が主流だったため、本機は実証試験用の試作機のみ製造され、量産には至っていません。
ちなみに、機動性が低下しているとされますが、他メディアでは非常に高い機動力を有する機体として描かれるケースもあります。たとえば、漫画『機動戦士ガンダム U.C.0096 ラスト・サン』第4巻では、ジオン残党の乗るビグロを追跡、先回りするほどの機動性を見せていました。
いくら一年戦争時の機体とはいえ、モビルアーマーにも劣らない機動性は圧巻で、搭乗者であるマーティン・マータフ大尉は「どんなナリでも百式は速いんだよ」と発言しています。
◆ガンダムMk-IIIにもフルアーマー案が? 可変機の時代に消えた重装化プラン
『機動戦士Zガンダム』の前半主役機を務めたガンダムMk-Ⅱ。本機の技術データからアナハイム・エレクトロニクス社が開発した、発展機がガンダムMk-Ⅲです。
そんなガンダムMk-Ⅲにも、重装甲化による強化プランが存在しています。それがフルアーマーガンダムMk-Ⅲです。ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』の解説によると、本機は装甲追加による防御力の向上だけでなく、ガンダムMk-Ⅲの基本性能を落とさないまま、機動性や火力の増強を図っています。そのため、機体各部の増加装甲には、スラスターとプロペラントタンクを搭載。つまり、推進ユニットを兼ねた増加装甲を各部に装着しているのです。
武装面では両肩にビーム・キャノン、両脚部にハイパー・ビーム・キャノンを装備しています。ただ、火力が大幅に増強されたことで、エネルギー供給と、ジェネレーター出力低下が問題になりました。これをアナハイム・エレクトロにク社は、ジェネレーターを内蔵したシールドを携行することで解決を図っています。
実戦での検証はされていないものの、データ上はエネルギー面に問題なかったようです。ただ、本機が計画されたころには可変機が戦場を支配するようになっていました。そのため、本機のコンセプトは主流から外れてしまい、百式改と同じくプランのみで終わっています。
──νガンダムHWS、フルアーマー百式改、フルアーマーガンダムMk-IIIは、いずれも火力や防御力を大きく伸ばそうとした重装化プランでした。しかし、戦争の早期終結や可変機が主流となった時代の流れによって、その多くは本格的な実戦配備まで進むことはありませんでした。強力でありながら、時代に間に合わなかった機体たちだったといえます。
それでも、こうした幻のプランには『ガンダム』らしい魅力があります。もし戦争が長引いていたら、もし開発のタイミングが違っていたら、戦場の主役になっていたかもしれない。実現しなかったからこそ想像が広がり、重装甲と大火力をまとった機体の姿にロマンを感じるのではないでしょうか。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 νガンダム(ヘビー・ウエポン・システム装備型)」 (C)SOTSU・SUNRISE』


