※本記事には各『ガンダム』作品の内容が一部含まれます。ご注意ください。
『ガンダム』の主役機は名機として語られがちですが、実はパイロットや整備士を悩ませる“扱いづらさ”を抱えた機体もあります。Zガンダムは整備性、ガンダムF91は最大稼働時の装甲、クロスボーン・ガンダムX3は防御システムに大きな弱点を抱えていました。高性能だからこそ生まれた欠陥をたどると、試作機ならではの危うさとロマンが見えてきます。
◆Zガンダムはなぜ量産に向かなかったのか 整備士を悩ませた可変機の弱点
『機動戦士Zガンダム』の主役機であるZガンダム。可変機の傑作機として知られ、グリプス戦役を代表とする機体です。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 4号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2019年2月26日出版)によると、本機はノンオプションでの大気圏突入すら可能な全領域運用能力を獲得した、グリプス戦役期の最高傑作機とされています。
完成後はエゥーゴのフラッグシップ機として戦い、グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン抗争を戦い抜き、その戦果で優れた機能と性能を証明しました。一方で、本機はその性能と引き換えに、コスト・整備性に問題を抱えていたとされます。
特に整備性の悪さはたびたび言及されており、漫画『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス EVE』第2巻ではZⅡV型のコンペの際に、レイモン・メキネスがZガンダムの整備性の劣悪さに苦言を呈しつつ、Zガンダムの量産は非現実的と話しています。
作中では、コストの問題は、生産数や効率化で解決できるとされましたが、レイモンは使う側の負担が解決できていないと言及。具体的には、Zガンダムは専用部品ばかりで互換性に乏しく、変形用の稼働部位はモビルスーツ形態では持て余してしまう上に、マグネット・コーティングが必須となります。
さらにコーティングの摩耗は変形時に過負荷を生じさせるため、何かあるたびに全身をバラしてのフルメンテナンスが必要となるようです。そのため、とても大量配備が前提となる、量産化には向いていないとレイモンは判断していました。
また、コスト面も中々解決できず、Zガンダム量産化への足枷となります。たとえば、書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 22号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2019年7月23日出版)によると、Zガンダムの簡易量産機であるリ・ガズィも、オプション装備による簡易変形を採用したものの、ほかのモビルスーツに比べるとコスト高になっています。
こうした背景から、傑作機として知られているものの、Zガンダムは大量生産できる機体とはならなかったのです。
◆ガンダムF91は強くなるほど危うくなる? 最大稼働モードに隠れた装甲の問題
シーブック・アノーの愛機であるガンダムF91。劇中では最大稼働モードで巨大モビルアーマーであるラフレシアすら翻弄し、ガロッゾ・ロナを「質量を残像だというのか」と驚愕させています。
そんなガンダムF91を象徴する必殺技ともいえる最大稼働モードですが、実は重大な欠陥が引き起こす現象でした。書籍『機動戦士ガンダムMS大図鑑 Part.5 コスモ・バビロニア建国戦争編』(出版:バンダイ出版、1991年6月1日出版)によると、ガンダムF91にはマルチプル・コンストラクション・アーマー(MCA構造)という多機能装甲が採用されています。
この装甲は最大稼働モードで、通常の冷却が追いつかないほど機体に熱がこもると、金属剥離効果であるMEPEが発生。熱された装甲を剥がすことで、強制的に冷却します。つまり、性能を最大限発揮するほど、装甲が薄くなっていくという欠陥を抱えているのです。もちろん、薄くなった装甲をそのままにしておけるはずもないので、帰投後は全交換となるでしょう。
ちなみに、こうした欠陥はシーブックが乗った機体がトライアル的な要素を持っていたことも関係しています。実際、量産型ではこうした仕様は基本的にオミットされていました。
プラモデル『HGUC 1/144 ガンダムF91 ハリソン・マディン専用機』の説明書によると、量産型ではリミッターが施され、最大稼働は発揮できなくなっています。さらに、金属剥離効果などは、量産化の際に装甲材が変更され、バイオ・コンピューターが廃されたことで発生しなくなりました。
そのため、量産化に伴って、問題を解決できた珍しいケースといえるでしょう。
◆クロスボーン・ガンダムX3はなぜ危険だったのか 15秒の無防備が生むリスク
『機動戦士クロスボーン・ガンダム』にて、トビア・アロナクスの愛機として活躍したクロスボーン・ガンダムX3(以下、X3)。サナリィが開発したクロスボーン・ガンダムの3号機として知られていますが、本機はパイロットの生存率に関わる、重大な欠陥を抱えています。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム』第5巻によると、X3の両腕部にX1,2とは異なり、ビームシールドの代わりにIフィールド発生装置が取り付けられていました。本装置で発生させるIフィールドバリアは、ビーム兵器を偏向・拡散できるため、ビーム・ライフル、サーベルに対して無類の防御力を発揮します。
かつては戦艦クラスにしか採用できなかったものだったが、モビルスーツの高出力化に伴って、武装として搭載できるようになりました。しかし、作動時間の限界は解消できず、一方の装置の作動時間が105秒、冷却時間に120秒という制限があります。
つまり、片腕ずつ使った場合でも、連続で稼働できるのは210秒だけで、その後は15秒間完全に無防備になる瞬間があるのです。そして、本機にはビームシールドは装備されていないため、Iフィールド発生装置の冷却中は防御方法がありません。こうしたパイロットの生存に関わる欠陥は、トビアからも「実験機だと思って無責任なもんを」と苦言を呈されていました。
なお、その後開発されたバリエーション機の中に、ビームシールドよりIフィールド発生装置の搭載を優先した機体は存在しません。その事実が、X3の生存率より技術検証を優先した歪さを証明しています。
── Zガンダム、ガンダムF91、クロスボーン・ガンダムX3は、いずれも高い性能を持つ主役機でありながら、その強さと引き換えに大きな弱点を抱えていました。整備のたびに現場へ負担をかけるZガンダム、性能を引き出すほど装甲を消耗するガンダムF91、防御の切れ目が生まれてしまうX3。どの機体も、完成された万能機というより、最先端技術を無理に実戦へ投入した試作機の危うさを感じさせます。
しかし、その欠点こそが『ガンダム』らしい魅力でもあります。扱いづらく、危険で、整備士やパイロットに負担をかける。それでも戦場で結果を残してしまうからこそ、これらの機体はただの欠陥機ではなく、記憶に残る“問題児の名機”として語り継がれているのではないでしょうか。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 ゼータガンダム Ver.Ka」(C)創通・サンライズ』


