※本記事にはTVアニメ・漫画『SLAM DUNK』および関連作品の内容に関する記述が含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・漫画『SLAM DUNK』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
神奈川の王者・海南大附属は、全国2位という結果を残しながら、実は“完成形”ではなかったのかもしれません。注目したいのは、作中で一度も姿が描かれないユニフォーム7番の存在です。牧、神、高砂、武藤、清田で盤石に見える海南ですが、背番号の並びや黒板漫画『あれから10日後-』、1998年の国体メンバーと思しきイラストをたどると、王者のスタメンに残された違和感が見えてきます。
◆海南の7番はなぜ描かれなかったのか 全国2位の王者に残る“空席”
海南大附属の強さは、原作の中でも別格でした。主将の牧紳一を中心に、高砂一馬、神宗一郎、武藤正、清田信長がスタメンとして並び、インターハイでも全国2位にまで上り詰めています。神奈川予選で湘北や陵南を退けた実績を考えても、まさに王者と呼ぶにふさわしいチームです。
ところが、あらためて背番号に注目すると、一つ大きな違和感があります。海南の試合では控え選手が登場する場面も描かれていますが、7番を背負った選手だけは一度も確認できません。勝利が見えた試合では宮益のような控え選手にも出番がありました。それでも、途中の番号である7番だけが不自然に抜けているのです。
連載当時の高校バスケでは、主将の4番を筆頭に、副主将や上級生が若い番号を背負うケースが一般的でした。なお、2017年のルール変更以降は00番・0番から99番まで選べるようになっていますが、『SLAM DUNK』連載当時の感覚では、途中の番号だけが空いている状態はかなり目立ちます。
つまり、海南に7番がいないことは、ただの描き忘れではなく、何らかの事情を感じさせる“空席”として読めるのではないでしょうか。
◆7番は本来エース級の番号? 仙道、宮城、河田と並ぶ意味
『SLAM DUNK』における7番は、たんなる控え番号ではありません。陵南では天才・仙道彰、湘北では宮城リョータ、山王工業では“高校生No.1センター”ともいえる河田雅史が背負っていました。ポジションはそれぞれ異なりますが、どの選手もチームの中心にいる重要人物です。
湘北のように選手層が薄いチームでは、1年生の流川楓や桜木花道が2ケタの番号でスタメンに入っています。しかし、多くの強豪校では1ケタの番号を背負う選手が主力になっています。藤真健司を含め4番から8番で主力が固まる翔陽、福田吉兆を除けば主力が1ケタに収まる陵南、さらに豊玉や山王も同じ傾向です。
その流れで見ると、海南で10番の清田がスタメンに入り、7番の選手がまったく出てこない構図はかなり気になります。清田は1年生ながら驚異的な身体能力を持つ有望株ですが、本来ならその前に7番を背負う上級生の実力者がいてもおかしくありません。
もし海南の7番が実在していたとすれば、仙道や宮城、河田のようにチームの核となる可能性を持つ選手だったのかもしれません。
◆神が6番を背負う海南の実力主義 武藤の不在が深める謎
海南の背番号を考えるうえで、もう一つ重要なのが神宗一郎の存在です。神は2年生でありながら、レギュラー選手の中でもかなり若い6番を背負っています。年功序列の空気が強かった当時の高校運動部を考えると、これはかなり特徴的な扱いです。
たとえば山王工業では、1年生からスタメンだった沢北栄治ですら9番でした。にもかかわらず、海南では2年生の神が6番を与えられています。これは、海南が学年よりも実力を重視するチームだったことを示しているように見えます。
そう考えると、なおさら7番不在の謎は深まります。完全実力制の海南で、7番が空いているにもかかわらず、10番の清田がスタメンとして起用されている。さらに、黒板漫画『あれから10日後-』で描かれた神奈川県の国体メンバーに関する場面や、1998年のカレンダー用に井上雄彦先生が描き下ろした国体メンバーと思しきイラストを踏まえると、海南のスタメンであるはずの武藤の姿が見当たらない点も気になります。
もちろん、混成チームである以上、海南の全員が選ばれるとは限りません。それでも全国2位の王者のスタメンが外れているように見えることは、武藤が“本来のベストメンバー”ではなかった可能性を想像させます。もし幻の7番が復帰していれば、武藤の位置に入っていたのではないでしょうか。
◆幻の7番は“未回収の伏線”だったのか 続編で見たい真の海南
『SLAM DUNK』では、あとから戦力が加わることでチームの見え方が大きく変わる展開が何度も描かれてきました。湘北では三井寿が復帰し、陵南では福田吉兆が決勝リーグから存在感を示しました。翔陽も藤真が途中出場することで、試合の空気が一気に変わっています。
そうした流れを踏まえると、海南の7番不在も、今後の展開に備えた“回収されなかった伏線”だった可能性があります。10番の清田がスタメンで、8番の小菅が控えにいる点も、高頭監督が将来を見据えて若手に経験を積ませていたと考えれば自然です。実際、控え選手を起用する場面でも、清田は引き続き試合に出ており、育成枠としての意味があったようにも見えます。
もし原作が山王戦以降も続いていれば、海南の幻の7番が登場し、全国2位の王者がさらに完成度を高める展開もあり得たかもしれません。牧、神、高砂、清田に加え、本来の主力である7番が戻る。そうなれば、海南は“全国2位のチーム”から“真のベストメンバーを備えた王者”へと変わっていた可能性があります。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』によって作品への熱が再び高まった今、もし続編が描かれる日があるなら、海南の7番という空白にも光が当たるかもしれません。神奈川王者の強さは、まだすべて描かれていなかったのではないでしょうか。
──海南は、牧と神を中心にした完成度の高いチームとして描かれました。しかし、背番号7の不在や武藤の扱いをたどると、全国2位の王者にもまだ描かれていない余白があったように見えます。そこにいたかもしれない“幻の7番”は、海南がさらに強くなるための最後のピースだったのかもしれません。
原作では回収されなかった小さな違和感も、見方を変えると作品の奥行きになります。湘北や陵南だけでなく、海南にもまだ語られていない物語があった。そう考えると、『SLAM DUNK』の神奈川予選は、読み返すたびに新しい熱を帯びてくるのではないでしょうか。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
アニメ・漫画関連のムック本を中心に活動するフリー編集・ライター。1990年代〜2000年代のアニメ作品を原点に、近年の話題作から長年愛される名作まで、幅広い作品の解説・考察・キャラクター分析を手がけている。作品の魅力や背景を読者にわかりやすく伝える記事制作を得意とする。
※サムネイル画像:Amazonより 『「SLAM DUNK 完全版」第10巻(出版社:集英社)』

