『HUNTER×HUNTER』では、初登場のときと違う名前で再登場しているキャラクターがいます。その理由は明言されておらず、作者の冨樫義博先生が忘れていて、再登場時に別の名前を付けてしまったのではないかと言われています。

 そんなワケありネームを持つ影が薄いキャラクターとして、次の4人があげられます。彼らの名前が変わったのは、果たして本当に作者に忘れられていただけなのでしょうか?

◆モブキャラから大出世したマーメン=ビーンズ

 ネテロ会長の秘書をしている豆顔のキャラクターの名前は、旧アニメ(フジテレビ版)のクレジットや、公式ガイドブック『HUNTER×HUNTERハンター協会公式発行ハンターズ・ガイド』(2004年出版、出版社:集英社、以下、『ハンターズ・ガイド』)では、「マーメン」とされていました。

 しかし、のちに原作や、新アニメ(日本テレビ版)のクレジットでは「ビーンズ」に名前が変わっています。

 これに関してはネット上でも騒がれ、「作者が忘れていて別の名前を付けた」「本名がマーメン=ビーンズなのではないか」という考察がされていました。

 また、原作のカラー版やアニメで顔の色が変わっているので、「別人ではないか」という推測も出るほどです。

 真相が分からない時期もありましたが、これには公式から回答が出ています。日本テレビ版のアニメ放映開始後に、コミック総集編「HUNTER×HUNTER総集編 Treasure」が発売されました。

 こちらに掲載されている作品解説コーナーの名称が、「マーメン=ビーンズのハンターズ極秘FILE」となっています。また、『HUNTER×HUNTER バトルオールスターズ』などのゲームアプリでも、マーメン=ビーンズが正式名称として扱われていました。

 マーメンはモブキャラに過ぎませんでしたが、原作でビーンズという名前が出るのと同時に出番が増え、コーナーを任せられるほどに出世。正式名称が「マーメン=ビーンズ」になって画数が変わり、運気が上昇したのではないかと思わせる活躍ぶりです。

 しかし、最初からマーメン=ビーンズというお豆感いっぱいの名前だったのでしょうか。影が薄くて冨樫先生から忘れられており、違う名前を付けらえてしまった可能性も否めません。真相は謎のままです。

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◆本名かゲーム登録名か謎に包まれたツェズゲラの仲間

 ツェズゲラには3人の仲間がいますが、このうち2人はレイザーとの対決で、ボウリング勝負をした男が「ロドリオット」、バスケ勝負した男が「ケスー」という名前になっています。しかし、バインダーのリストにある名前は「ボードム」と「ドッブル」でした。

 グリードアイランドでは、ヒソカがクロロという登録名でプレイしていました。そのため、ツェズゲラの仲間も登録名と本名が違うのではないかと推測されましたが、それでは矛盾が生じてしまいます。

 なぜなら、レイザーとの対決で呼ばれた「勝者ロドリオット」「勝者ケスー」という名前と、バインダーのリストにあるゲーム登録名「ボードム」と「ドッブル」が異なるからです。

 「勝者●●」がレイザーにしろ、ゲームシステムのセリフだったにしろ、リスト名にあるゲーム登録名と違うのは不自然といえます。また、ツェズゲラが仲間の勝利にテンションが上がって、思わず「勝者ケスー」と叫んでしまったわけでもありません。

 なぜなら、ツェズゲラがケスーのことをドッブルと呼んでいるシーンがあるからです。考えられるのはマーメン=ビーンズのように、フルネームがドッブル=ケスーの場合です。リスト名には名前、ゲームシステムが呼ぶときは苗字となっている可能性があります。

 また、「勝者ケスー」はセリフではなく、ナレーションで苗字のほうを表示していたとも考えられなくもありません。もちろん、単に作者が忘れていた可能性もあり、もしそうであるなら影の薄いモブキャラゆえの悲しい宿命といえるでしょう。

◆仲間に正しい名前を憶えてもらえていなかったジスパー

 ゲンスルーに一握りの火薬(リトルフラワー)で返り討ちにされたハメ組の男は、ニッケスから「ジスパー」と呼ばれていました。しかし、アベンガネは「ジスパ」と言っています。

 これは付き合いの長いニッケスが呼んでいた名前が正解でしょう。『ハンターズ・ガイド』でもジスパーと紹介されていました。

 おそらくモブキャラであるがゆえ、冨樫先生に間違われてしまったのだと思われます。もしくは、ハメ組に参加して間もないアベンガネが、ジスパーの名前を勘違いしていた可能性もあるでしょう。

 もしかしたら「ヤマザキじゃなくて、ヤマサキな!」のごとく、「ジスパじゃなくて、ジスパーな!」みたいな会話がされていたのかもしれません。そして、いちいち訂正するのが面倒になって、ジスパーもそのままにしておいたパターンでしょうか。

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◆記憶が戻って本来の名前に戻したキメラアントたち

 キメラアントの中にはレオルやメレオロンのように、途中で名前が変わったキャラクターがいます。この理由は作中でしっかり示唆されており、女王に食べられてキメラアントになる前の名前を思い出したためでした。

 それぞれハギャからレオル、ジェイルからメレオロンという本来の名前に戻しています。特にレオルは記憶を取り戻して以降、ハギャと呼ばれるとすごく怒ったそうですから、本来の名前に強い思い入れがあったようです。

 キメラアントになってライオンの姿になったレオル、カメレオンの姿になったメレオロン。親からこの名前を付けられた時点で、将来女王に食べられてキメラアントになる運命は決まっていたのかもしれません。

 このレオルの改名は、のちにイカルゴが操っていたフラッタが敵側だとバレるきっかけとなっています。

 ストーリーに上手く絡められていることからも、意図して変えられたものであることは間違いないでしょう。

 ──レオリオの苗字がパラディナイトと明かされたときは、かっこいいと話題になり、また、作品は異なりますが、『進撃の巨人』のオニャンコポンのネーミングについても、作者がふざけている(実際はアフリカの天空神の名前)とSNSで大いに盛り上がりました。

 マーメンはモブキャラでしたが、再登場時に名前が違っていたので注目度が高まり、「マーメン=ビーンズ」として冠コーナーを任せられるまで出世しています。名前によって運気が上昇したり、人気が高まったりするのは、漫画の世界でも同じなのかもしれません。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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