『HUNTER×HUNTER』では相手の能力を見抜いたり相手の目的を理解したり、戦いや抗争を有利に運ぶため情報を得ることが大切です。そのため、いかに敵から情報を引き出すかも重要となってきます。
次の4人は情報を引き出す力、情報がウソでないか見抜く力など尋問に向いている念能力を持っており、その能力には使い手の性格が色濃く出ています。
◆クロロと相性が良いパクノダの記憶弾(メモリーボム)
パクノダは特質系の念能力者で、触れることで対象の記憶を読み取れます。心ではなく記憶を読むため隠しごともウソをつくこともできず、情報を引き出す能力としては最強クラスです。
そのため、幻影旅団でもレア扱いされて重宝されていました。また、物の記憶を読むサイコメトリーの能力も兼ね備えています。
さらに、記憶弾(メモリーボム)の能力によって、読み取った記憶を具現化した弾に込めれば、撃った相手に記憶を植え付けられます。引き出した情報が複雑だったり長かったりしても、いちいち口頭で伝えなくて良いのでとても便利です。
その弾で記憶を引き出した相手を打てば、その人は記憶を失います。そのため、情報を引き出して用済みになった相手の命を奪う必要はありません。
クラピカにさらわれて人質となっていた団長を切り捨てられなかったり、仲間想いだったりする心優しいパクノダらしい能力といえるでしょう。また、クロロの盗賊の極意(スキルハンター)との相性が良いのも特徴です。
クロロは条件を満たせば念能力を奪って使えますが、盗んだ相手が死んでしまうとその能力も失われてしまいます(死後強まる念は例外)。つまり、能力を盗んだ相手を解放しなければなりません。
そのとき、パクノダの記憶弾(メモリーボム)で記憶を消せば相手を無力化でき、団長の能力や旅団の情報が漏れることなく解放できます。クロロはシルバとゼノとの戦いにおいて、陰獣の梟から盗んだ不思議で便利な大風呂敷 (ファンファンクロス)を使っていました。
梟は幻影旅団に捕らえられていましたが、いつまでも生かしたまま捕らえておくのは大変です。そのため、パクノダに記憶を消されて解放された可能性は十分あるでしょう。
また、対象の念能力の情報を引き出して、クロロに伝えるのも記憶弾(メモリーボム)を使えば簡単です。幻影旅団の中でも、記憶弾(メモリーボム)について知っていたのは団長だけでした。
そう考えると、パクノダがクロロのために記憶弾(メモリーボム)を使っていた可能性は高いです。もしかしたら、パクノダがクロロの能力をサポートするために覚えた能力なのかもしれません。
◆拷問好きの欲求も満たせるクロロの密室念魚(インドアフィッシュ)
密室念魚(インドアフィッシュ)は密室空間でのみ発動でき、具現化した念魚で受けた攻撃では痛みを感じず、死にも至らないという能力が付与されています。
クロロが「俺でなきゃ見逃しちゃうね」の人(通称、団長の手刀を見逃さなかった人)を倒すために使いましたが、もともとは尋問用の念能力です。
拷問には相手をいたぶる目的と、情報を聞き出す目的があります。後者の場合、もっともやってはいけないことが相手を死に至らしめることです。
命を奪うつもりはなくても、痛みでショック死することはよくあります。また、痛みで叫び声をあげられてもうるさいだけで、尋問には邪魔です。
そのため、密室念魚(インドアフィッシュ)の攻撃で死ぬことはなく、痛みを感じることもなくなっています。また、尋問は密室で行うことが多いので、密室空間でのみ発動できるという条件を満たすのは簡単です。
そもそも痛めつければ情報を吐くような相手の尋問に念能力は必要ありません。ウボォーギンのように痛めつけられても情報を吐かず、命を奪うよう言ってくる相手にこそ、密室念魚(インドアフィッシュ)は有効です。
本来、そういう相手には周りから攻める必要があります。しかし、恋人や家族など相手の弱みになる人を見つけて捕らえるには手間がかかりますし、アンダーグラウンドの存在であれば幻影旅団のようにそういった対象がいない場合も多いです。
密室念魚(インドアフィッシュ)は相手に取り返しの付かないダメージを与えながら、生き長らえさせる屈辱を与える能力になっています。そうすることで、相手に「もう終わらせてほしい」と思わせて、情報を吐かせます。
パクノダの能力と違うところは、情報を引き出すだけではなく相手をいたぶる目的も同時に果たせ、用済みとなった相手の命を奪うことを前提としていることです。密室念魚(インドアフィッシュ)のもともとの使い手が、サディスティックな性格だったことがうかがえます。
◆情報の真偽を見抜くのを得意とするクラピカ
クラピカの目的は幻影旅団への復讐なので、捕らえた団員からほかの旅団メンバーの情報を聞き出すことが必要です。そのため、束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)、律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)という尋問に使える3つの能力を持っています。
束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)で旅団メンバーを絶状態にして捕らえ、律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)で死にたくなかったら情報を話せと脅します。そして、相手が吐いた情報の真偽を確かめるのに使うのが、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)です。
残念ながら仲間を売るより死を選んだウボォーギン相手には上手くいきませんでした。しかし、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)でハンター試験に潜り込んだビヨンド側の刺客のウソをバシバシ見抜いて、全員不合格にしています。
また、十二支んにいる内通者がサイユウであることも見抜きました。尋問において情報を引き出すことはもちろん大切ですが、情報がウソではないか確かめることも重要です。
クラピカの能力は情報を引き出す力は弱いですが、真偽を見抜く力はトップクラスといえるでしょう。
ただ、クラピカにはまだ相手の念能力を奪って使える、奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)があります。絶対時間(エンペラータイム)でしか使えない制約はありますが、盗んだ能力によっては、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)などと組み合わせて、情報を効率良く引き出せるようになる可能性はあるでしょう。
◆殴りまくって情報を引き出すリンチ=フルボッコ
リンチは放出系の念能力者で、体は全部知っている(ボディアンドソウル)は質問をして相手を殴ると標的の心の声が聞こえるという能力です。彼女はこの能力を使って、ホエール号内で好き勝手に暴れるエイ=イ一家の男から情報を引き出しました。
格下や捕らえている相手であれば、名前通りフルボッコにできるので情報を引き出す能力は高いです。しかも、対象の心の声は自分と殴った相手にしか聞こえないため、情報を高く売ったり、不都合なことは隠したり、ウソの情報を渡したりもできます。
しかし、あくまで心の声を聞くだけなので、殴る前に質問をしてその答えを考えさせなければならないうえ、対象が気を失っていると聞けません。そのため、能力のネタが割れてしまえば対策は難しくないでしょう。
戦闘中もしくは尋問中、常に別のことを考えていれば知られたくない情報を聞かれることはありません。普通の人には難しいかもしれませんが、念能力の上級者であればそのくらいはできそうです。
ただ、不意を突いた場合や能力がバレていない相手であれば、正しい情報を引き出す能力は高いと思われます。相手を殴ることが前提の能力なので、おそらくリンチもSっ気が強い性格なのでしょう。
──人の命を奪うのは好きではないパクノダ、旅団を全滅させる覚悟はあるものの痛めつけるのは趣味ではないクラピカ、相手を痛めつけることが前提のリンチと密室念魚(インドアフィッシュ)の使い手。
同じ情報を引き出す能力でも、使い手の性格によってその特性は大きく変わるようです。ネオンの予言通りに死んだ旅団メンバーはパクノダだけでしたが、あまりに便利な能力を持ってしまうと、早めに退場するフラグになってしまうのかもしれません。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
※サムネイル画像:Amazonより