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※本記事には漫画『HUNTER×HUNTER』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事は漫画『HUNTER×HUNTER』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 「念」の才能は、ゴンとキルアだけが特別だったわけではありません。作中を見返すと、生まれてすぐに念を扱ったキメラ=アント、自覚のないまま能力を発現したネオンやコムギ、修行前からオーラに触れていたマチやクロロなど、別方向の天才たちが何人も登場しています。彼らの覚醒をたどると、『HUNTER×HUNTER』における才能の幅広さが見えてきます。

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◆ピトーとメルエムはなぜ最初から念を使えたのか 人間とは違う覚醒の異常さ

 ウイング曰く「念」の覚醒はゆっくり起こすか、無理やり起こすかの2択しかなかったはずですが、実は作中にはこの2つに当てはまらない方法で「念」を覚醒させた存在が登場しています。

 その例として印象に残っているのが、やはりキメラ=アントのメルエムと護衛軍の3匹でしょう。なんと、彼らは生まれてすぐに「念」を習得していました。このことからも、習得速度という点に関しては、キメラ=アントは人間の比ではなかったことが分かります。

 特に護衛軍で最初に登場した蟻、ネフェルピトーは生まれてすぐに「円」も使えていました。実際に、誰も気づかなかったポックルの存在にピトーはいち早く気づいています。

 「円」とは、「纏」と「練」の高等応用技で作中でも使える人物はそう多くありません。そんな「円」を、ピトーは半径2キロメートルという作中でもトップクラスの広範囲で生み出せているのです。

 さらにこれ以上に破格の才能を見せたのが蟻の王・メルエム。メルエムに至っては、生まれてからすぐに「発」、つまり念能力を有していました。それが、「獲物のオーラを食うことで自分のものにできる能力」です。ピトーですら、ポックルから情報を引き出して初めて能力を覚醒させていたので、その才能は推して知るべしでしょう。

 ただし、キメラ=アントの「念」の開花が本当に才能だけによるものかは議論の余地があります。というのも、王位継承編で明かされたカキン帝国のように、独自の念能力開花システムがあることが判明したからです。

 継承戦に参加する王子たちは「壺中卵の儀」によって、念能力を覚醒させていました。このときに使われていた壺の中身が何なのかはまだ明かされていませんが、何かしら「念」が込められたアイテムであることは間違いないでしょう。いってみれば、この時点で「念」による攻撃を受けて無理やり覚醒したとも捉えられます。

 実は、キメラ=アントの女王は、王や護衛軍を生む前に大量の念能力者の肉を食べていたので、体内で「壺中卵の儀」の壺の中のような現象が起きていても不思議ではないのです。実際、「壺中卵の儀」によってまだ赤子であるワブル王子も「念」に覚醒している描写があり、まさしくピトーたちの状況と重なります。

 またキメラ=アントは、人間と生物として違いすぎるため、いわゆる感覚器官が優れていたから、生まれてすぐに「円」が使えたという可能性も考えられるかもしれません。しかし、それらを考慮しても、作中ではゴンたちよりも「念」の習得スピードがはるかに速かったことは事実であるので、才能は作中屈指だったと結論付けられます。

◆ネオンとコムギはなぜ自覚なしに能力へ届いたのか 戦闘以外で開花した才能

 「念」は、戦闘能力にのみ才能が開花されるわけではありません。並外れた「精神力」だけでなく、たとえば、モノづくりや自分の好きなことに対する研ぎ澄まされた「集中力」でも覚醒するケースがあります。

 事実、ヨークシンで登場したゼパイルは念の存在を知らず、修行もしてない状態で自分の作品にわずかながらにオーラを纏わせていました。ゴンが「すごい才能だよ」と絶賛していたことからも、その異常さが分かります。そんな中でも、さらに能力の覚醒までこぎつけた人物が2人いるのです。

 まず1人は、ネオン=ノストラード。普段はアングラな趣味を持つワガママな娘にしか見えないのですが、こと「占い」に関しては異様な集中力を見せていました。彼女がどうやって念能力「天使の自動書記(ラブリーゴーストライター)」を習得したのかは分かりませんが、本人が能力を自覚していない点などからも、先天的な能力者だと考えられます。

 そして2人目がコムギです。コムギはもとから軍儀の偉才でした。しかし、めきめきと実力を向上させるメルエムとの対局がきっかけとなり、本人が自覚しないうちに念能力者として完全に覚醒したのです。

 初登場時から異常なまでの「集中力」を見せていたことからも、もともと「念」に目覚める才能はあったと考えられます。しかし、コムギの場合でもっとも注目したいのは、「敗北したら命を差し出す」という東ゴルドー共和国の独裁的な環境です。彼女はそれを日常として受け入れており、それが無意識のうちに「制約と誓約」となっていた可能性が高いと考えられます。

 しかし、その偶然を加味しても、自力で「軍儀が強くなる能力」を発現するに至った時点で、ゴンたちとは違った部類の天才だったことがうかがえるでしょう。

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◆クロロとマチはいつ念に触れていたのか 流星街で見えた別格のセンス

 実は幻影旅団にも、修行の工程を経ずに独自に「念」に覚醒していた人物が2人います。まず1人がマチです。マチは「念」を知る前からエンバーマーであるレンコのオーラが視えていました。オーラが視えるということは自然に「凝」ができていたことになります。実は、これがかなり異常なことなのです。

 なぜなら、第85話で「纏」を習得し「念」に覚醒していたレオリオでさえ、ベンズナイフのオーラを視認できなかったからです。ちなみにこのときゴンは「“練”を磨けば見えるようになるよ」と言っているので、マチは誰からも教わらずこの境地に達していたことになります。

 そして2人目が団長のクロロ=ルシルフルです。注目したいのは、第396話でクロロが拾ったテープの声の吹き替えを担当していた際の描写。クロロが悪役の演技をした途端、ウボォーギンをはじめ、団員メンバーたちが全員衝撃を受けていました。また、ほかの普通の子どもたちは恐ろしさを感じて泣き出している描写もあったので、それくらい尋常じゃないインパクトを与えていたことが分かります。

 一見すると、クロロのカリスマ性を描写した場面だとも捉えられますが、よくよく見るとクロロはオーラを纏っているように描かれているのです。実は第48話の中で、ウイングが「念」を使う人物像の1人として、演説で人心を動かせる能力者のような人物を思い描いていました。仮にこのときのクロロが無意識に「練」でオーラを増幅させていたとしたら、これらの描写の辻褄が合ってくるのではないでしょうか。

 どちらにせよ、修行の工程なしで「念」に開花している時点で、あくまで「念」のセンスに関してはゴンたちよりもあった可能性が考えられます。

 

 ──ゴンとキルアは、ウイングから「1000万人に1人の才能」と評されるほどの存在でした。しかし、作中には彼らとはまったく違う形で「念」に近づいた者たちもいます。生物として規格外だったキメラ=アント、占いや軍儀への集中から能力を発現したネオンとコムギ、そして幼少期から異様な感性を見せていたマチとクロロ。それぞれの才能は、単純な強さだけでは測れません。

 だからこそ『HUNTER×HUNTER』の「念」は面白いのでしょう。早く覚えた者、無意識に使えた者、生まれた時点で規格外だった者がいる一方で、その力をどう磨き、どう使うかによって運命は大きく変わります。才能だけで終わらない複雑さこそが、この作品の能力バトルを何度も読み返したくなる理由なのではないでしょうか。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で約10年にわたり編集業務に従事した元編集者。男性向けライフスタイル誌やムック制作のほか、漫画編集者としての経験も持つ。現在はフリーライターとして、映画・アニメ・漫画などサブカルチャー領域を中心に記事を執筆。漫画考察記事では、元編集者の視点を活かし、作品内の描写や設定を論理的に読み解く記事制作を得意としている。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第22巻(出版社:集英社)』

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