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※本記事にはTVアニメ・原作漫画『キン肉マン』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事には、ライター個人の考察・見解が一部含まれます。公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 完璧超人の面白さは、圧倒的な強さや高いプライドだけでなく、その看板と行動がたまに噛み合わないところにもあります。自らをパーフェクトな存在と称しながら、犬の本能で罠に飛び込んだり、自分で処刑した相手の“仇討ち”を口にしたり、凶器禁止のはずが堂々と剣を使ったり……。『キン肉マン』を見返すと、完璧でないからこそ忘れられない名場面がいくつも残っています。

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◆犬の本能が勝ってしまった? ダルメシマンを沈めた“骨型の罠”

 完璧・無量大数軍の一人であるダルメシマンは、名前の通りダルメシアンをモチーフにした超人です。完璧超人として悪魔超人のブラックホールと対峙しましたが、その敗れ方は『キン肉マン』らしさが詰まったものでした。

 四次元空間から脱出するため、ダルメシマンはブラックホールの体についた傷口に目をつけます。元の場所へ戻る出口を見つけた判断自体は悪くありません。しかし、犬が好む牛や豚の骨のように見える形だったため、無意識にI字型の傷を選んでしまい、待ち構えていたブラックホールに返り討ちにされました。

 完璧超人のはずが、最後は犬の本能に引っ張られて罠へ飛び込む。このあまりにも分かりやすい弱点に、完璧超人始祖編のアニメを見た視聴者からも「ゆで理論全開」といった反応が出たのも納得できます。ブラックホールから「完璧な超人ではなく完璧な犬」と言われたのも、ある意味では的確な評価だったのかもしれません。

 もっとも、ダルメシマンの戦い方そのものは決して雑ではありません。体の黒い斑点を操作する「スペクルコントロール」で攻撃や防御を行い、ブラックホールの顔の穴にスペクル・ボムを詰めて吸引を封じようともしました。さらに唾液分泌(サリペーティング)シールドで影を消し、ブラックホールの奇襲に対抗するなど、技の発想はかなり独特です。

 ただ、その理屈がすぐには理解しにくいのも『キン肉マン』の味です。アニメではテリーマンが無影灯と同じ原理だと補足していましたが、ダルメシマン自身の説明だけでは少し分かりづらい部分もありました。完璧超人としては首をかしげたくなる場面が多い一方で、犬としての完成度は確かに高かったといえるでしょう。

◆完璧超人の格言はなぜ引っかかる? 武道とネメシスの言葉に残るズレ

 完璧超人は、戦いの強さだけでなく思想の面でもほかの超人を見下しています。その象徴ともいえるのが、ストロング・ザ・武道が掲げた「種に交われば種にあらず」という言葉です。これは下等超人と交わった時点で完璧ではなくなる、という選民思想を示した格言のように扱われていました。

 しかし、よく考えるとこの言葉は「朱に交われば赤くなる」とかなり近い意味にも見えます。付き合う相手によって染まるという発想自体は人間社会でも使われるもので、完璧超人がわざわざ持ち出すには少し引っかかるところがあります。

 さらに完璧超人には、下等超人に一度でも敗れれば完璧ではないとみなされる厳しい掟があります。そうなると、それまで仲間として行動していた相手が敗北した瞬間に“完璧ではない存在”へ変わってしまうわけです。そうした相手と一緒にいた時点で、すでに「種に交われば種にあらず」ではないのか、と言いたくもなります。

 ネメシスの「一度廻りはじめた水車は水が尽きるまで廻り続けなければならぬ」という言葉も印象的です。戦いはもう止められない、という覚悟を示す台詞としては重みがありますが、水車は水流を変えたり、仕組みによっては止めたりもできます。しかもその戦いの舞台が乾いた鳥取砂丘だったこともあり、状況との噛み合わなさが妙に気になります。

 もちろん、こうした言葉の勢いこそが完璧超人の迫力を作っているのも事実です。ただ、冷静に見返すと、彼らの格言にはどこかツッコミどころが残っています。完璧を名乗る者ほど、発言の小さなズレが目立ってしまうのかもしれません。

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◆自分で処刑したのに仇討ち? ネプチューンマンの記憶力に残る疑問

 夢の超人タッグ編でも、完璧超人らしからぬ場面がありました。2000万パワーズに敗れたスクリュー・キッドとケンダマンは、完璧超人の掟に背いたとして、ネプチューンマンたちによって処刑されています。

 ところがその後、ネプチューンマンとビッグ・ザ・武道が2000万パワーズに勝利した際、ネプチューンマンは「これでスクリュー・キッドとケンダマンの仇が討てました」と語りました。自分たちで処刑した相手の仇を討った、という形になってしまい、ファンからツッコミが入るのも無理はありません。

 本当に忘れていたのだとしたら、完璧超人の記憶力にかなり不安が残ります。しかし、ネプチューンマンはケンダマンを処刑する際、自らの得意技である喧嘩スペシャルを使っています。自分のフェイバリットホールドで手を下した出来事を、完全に忘れるとは考えにくいでしょう。

 そう考えると、ネプチューンマンにとっては「敗北した原因を作った2000万パワーズが悪い」という認識だったのかもしれません。処刑したのは掟に従っただけであり、根本の原因は敵に負けたことにある。完璧超人の理屈では、それで筋が通っているのでしょう。

 ただ、読者の目線ではやはり強引です。自ら手にかけた相手の死を、堂々と敵のせいにできるところに、完璧超人らしい傲慢さと『キン肉マン』らしい勢いが同時に表れています。

◆凶器は禁止のはずでは? ソード・デスマッチで見えた完璧超人の理屈

 完璧超人には、凶器を使ってはならないという掟もあります。スクリュー・キッドとケンダマンが割れたガラス片を凶器として使おうとした際、ネプチューンマンは激怒しました。ところが、その後の決勝戦では、ネプチューンマン自身の行動にも首をかしげたくなる場面が続きます。

 マッスルブラザーズとの決勝は、リングの周囲に剣が突き出た板を敷き詰めたソード・デスマッチでした。ネプチューンマンはマグネットパワーで剣を引き寄せて相手に突き刺したり、腕にソード板を張り付けて攻撃したりしています。さらに落雷をつかんでサンダー・サーベルとして投げつける場面までありました。

 そもそもネプチューンマンは、前面に針のついたベストを身につけており、それを利用したダブル・レッグスープレックスも得意としています。相手の凶器使用を厳しく責める一方で、自分の装備や試合形式を利用する攻撃にはかなり寛容に見えます。

 もちろん、ソード・デスマッチの剣は運営側が用意したもので、針付きベストはネプチューンマンの正式なコスチュームです。サンダー・サーベルも自然現象を利用したものだと解釈すれば、彼の中では凶器ではないのかもしれません。

 それでも、ネプチューン・キングが鉄柱を凶器として使った際には失望しているため、その線引きはやはり分かりづらいものがあります。完璧超人のパーフェクトな倫理観は、下等超人や読者には簡単に理解できないものなのかもしれません。

 

 ──完璧超人は、名前の通りなら一切のミスや矛盾が許されない存在です。しかし『キン肉マン』では、その完璧さを掲げるからこそ、少しのズレや凡ミスが何倍にも面白く見えてきます。ダルメシマンの犬らしさ、武道やネメシスの格言、ネプチューンマンの強引な理屈は、どれも作品の勢いと魅力を支える要素です。

 普通なら破綻してしまいそうな理屈さえ、読者が笑いながら受け止めてしまう。それを成立させているのが、いわゆる「ゆで理論」のすごさなのでしょう。完璧超人が完璧ではないからこそ、『キン肉マン』のバトルは理屈を超えた楽しさを残しているのかもしれません。

〈文/相模玲司〉

《相模玲司》

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動。メンズファッション誌の編集、週刊誌Web版での取材記事制作、アニメ・漫画関連のムック本制作など、幅広い媒体で編集・執筆経験を持つ。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画・映画を中心としたエンタメ記事の編集、構成確認、コンテンツ制作を担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「キン肉マン」第34巻(出版社:集英社)』

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