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※本記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 ベルメールがナミを海軍に報告しなかったことには、ただの親心だけでは説明しきれない違和感があります。戦場で赤ん坊のナミとノジコを保護した元海兵の彼女は、なぜ正規の手続きを取らず、そのまま故郷で2人を育てる道を選んだのでしょうか。ナミの故郷とされるオイコット王国、天候を読む特別な才能、そして「世界中の海図を描く」という夢をたどると、ベルメールが命がけで守ったものの意味が見えてきます。

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◆ベルメールはなぜ海軍に報告しなかったのか 元海兵が選んだ“沈黙”の理由

 まず真っ先に疑問として浮かび上がるのが、ベルメールがナミたちを連れて帰国した際にとった、一人の海兵としてはあまりにも不自然な行動です。

 第77話でココヤシ村の駐在であるゲンゾウから、20年前のオイコット王国の戦場で重傷を負っていた海兵ベルメールが、赤ん坊のナミと幼いノジコに出会うことで再び生きる希望を取り戻したことが語られました。ベルメールはその後命からがら二人を連れて故郷のココヤシ村へと戻り、それからはみかん畑を営みながら実の娘として大切に育て始めることになります。

 一見すると非常に感動的なエピソードですが、当時の状況を考えると大きな疑問が残ります。正義感の強い現役の海兵であれば、戦場で保護した身元不明の戦災孤児は、まず所属組織である海軍に報告し、正規の施設に預けて親の身元を捜索するのが本来の義務であり務めなのではないでしょうか。

 しかし彼女はそれを一切せず、まるで「この子どもたちの存在を海軍の人間たちに知られてはならない」と確信したかのように即座に故郷へ戻り、海軍を退役する道を選びました。そして、戸籍を一切作らず、自分の手元だけで密かに育てるというあまりにも異例な選択をしたのです。

 一介の海兵に過ぎなかったベルメールが、なぜそこまで周囲を警戒し、子どもたちの存在を世間から隠す必要があったのでしょうか。それは、彼女がその悲惨な戦場で、オイコット王国がただの戦争ではなく世界政府による“歴史からの抹消”の対象であったことを、肌で生々しく感じ取った可能性があるといえます。

 彼女の選択と退役という大きな決断は、突発的な思いつきではないと考えられます。「この赤ん坊を海軍に引き渡せば命を奪われる」という最悪の危険を、元海兵としての直感で鋭く察知したからこそ、彼女は命がけの隠蔽工作を始めたのではないでしょうか。

◆オイコット王国には何があったのか ナミの出生に残る“消された国”の可能性

 世界の真実を知りすぎたオハラや、世界会議(レヴェリー)で秘密を知ってしまったサボが逃げ込んだことで地図から消し去られたルルシア王国のように、『ONE PIECE』の世界において国一つが跡形もなく消滅するとき、そこには必ず世界政府がもっとも触れられたくない“世界の禁忌”が関わっているといえます。

 ナミの生まれ故郷である「オイコット(Oykot)王国」は、その名を逆から読むと「トウキョウ(Tokyo)」になるなど、初期の描写でありながら多くの謎を秘めたまま、詳細な内情が語られずに壊滅しています。この国もまた、世界政府にとって極めて不都合な何かを抱えていたために、世界のトップによって秘密裏に滅ぼされた国だったのではないでしょうか。

 この恐るべき仮説を裏付けるのが、ナミが生まれながらに持っている「天候を肌で読む異能」の存在です。

 第130話でナミは、高熱で倒れかけながらも自身の体感だけでサイクロンを事前に予測してみせました。これには、アラバスタ王国の女王であるビビでさえも、「まるで体で天候を感じ取っているみたい……!!!」「こんな航海士みたことない…」と驚きを見せていました。

 偉大なる航路(グランドライン)のサイクロンは前兆のない風だといわれており、常識を超えた異常気象をあらかじめ肌で察知するという能力は、たんなる努力の成果や通常の天才の域を遥かに超えていると考えられるでしょう。

 ナミの本当の親がかつて世界の夜明けを導こうとした「Dの一族の王族」であり、ナミがその血筋が持つ特殊な能力や古代兵器ウラヌスを操るための特別な資質を持っていたとしたらどうでしょうか。世界政府がその危険な血を根絶やしにするために国ごと跡形もなく滅ぼしたのだとすれば、すべての点と線が綺麗につながるといえます。

 ナミの出生の秘密。それは彼女が世界政府に滅ぼされた国の“最後の生き残り”であり、世界の歴史を動かす特別な血筋を引く存在である可能性が生まれていきます。ベルメールは元海兵としての直感でその重大性に気づき、命を懸けて「世界政府の最重要指名手配児」を世間から隠し通したのかもしれません。

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◆ナミの世界地図はなぜ重要なのか ベルメールの愛がつなぐ“本物の世界”

 ナミの出生に重大な歴史の秘密が隠されているとしたら、彼女が幼少期からずっと掲げ続けている「夢」の意味も、これまでとはまったく違う姿に見えてくるといえます。

 第77話で、ナミは「私は私の航海術で世界中の海を旅して自分の目で見た“世界地図”を作るの!!」と自身の夢について語っていました。それは、のちに魚人アーロンの一味に支配され、暗い測量室で海図を強制的に描かされ続けるという地獄のような日々を経験しても、決して折れることのなかった彼女の魂そのものであるといえます。

 一見すると純粋な航海士としての美しい冒険の夢に聞こえますが、実はこの地図を作るという行為こそが、世界政府に対する最大級の反逆行為になるのかもしれません。

 なぜなら、世界政府が過去800年という長い歴史においてもっとも力を注いできた情報統制とは、不都合な真実である「空白の100年」や世界の果てである最後の島「ラフテル」の存在を隠蔽し、人々が知る“世界の形”そのものを都合よく書き換えて支配することだと考えられるからです。

 麦わらの一味とともに世界のあらゆる未知なる海を巡り、世界政府が世界中の人々からひた隠しにしてきたすべての嘘を暴きながら「本物の世界地図」を完全に作り上げること。それは、政府による世界支配の仕組みを内側から完全に引っ繰り返す、最強の“情報兵器”が完成することを意味しているのではないでしょうか。

 ナミの夢は、彼女の命を救うために自らの命を落とした母ベルメールの遺志を無意識のうちに受け継いだ、世界政府への最大のリベンジでもあるともいえます。ベルメールがみかん畑のなかで守り抜いたナミの知恵と天候の才能が、世界の嘘をすべて白日の下に晒し、人々を本当の意味での解放へと導く瞬間につながっていくのかもしれません。

 

 ──ベルメールがナミとノジコを海軍に報告せず、自分の娘として育てた行動は、母としての愛情だけでなく、元海兵としての危機感から生まれた選択だったのかもしれません。もしオイコット王国に世界政府が触れられたくない秘密があり、ナミがその生き残りだったとすれば、ベルメールの沈黙は命がけの保護だったとも考えられます。

 そして、ナミが掲げる「世界中の海図を描く」という夢も、たんなる航海士としての目標にとどまりません。世界政府が隠してきた海、島、歴史の空白まで記した“本物の世界地図”を完成させることは、世界の嘘を暴く行為にもつながるはずです。ベルメールが守った小さな命と、ナミが描き続ける地図。その2つが重なったとき、母の愛は世界の真実へ届く大きな力になるのではないでしょうか。

〈文/凪富駿(ONE PIECE担当ライター)〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に活動するフリーライター。アニギャラ☆REWでは『ONE PIECE』関連記事を担当し、物語の伏線、キャラクターの関係性、名シーンの解釈などを読者目線でわかりやすく解説している。作品を読み返したくなるような記事制作を心がけている。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「ONE PIECE Log Collection “NAMI”」(販売元:エイベックス・ピクチャーズ)』

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