『チェンソーマン』で知られる藤本タツキ先生が、2021年に『少年ジャンプ+』で発表した読み切り漫画『ルックバック』が、6月28日に長編アニメーションとなって全国公開されます。

 漫画の発表から映画化までのスピード感が異例の早さでもあれば、発表から公開までのスパンがこれほど短いのも珍しいケースです。

 これだけ急な発表だと、いったいどんな作品が出てくるのか心配にもなってきますが、作品のポテンシャルだけでなく、実は制作布陣などでも期待が高まる企画となっていました。

◆漫画がそもそもの大傑作? 読み切り漫画『ルックバック』

 『ルックバック』は漫画自体が近年の作品でも“大ネタ”と言っても良い話題作です。

 藤本タツキ先生が2020年いっぱいで漫画『チェンソーマン』の第1部の連載を終え、その後の初めて発表した漫画が2021年に発表した『ルックバック』でした。

 『ルックバック』の主人公は小学4年生の少女・藤野。学年新聞で連載していた4コマ漫画が好評で藤野自身もまんざらでもなかったのですが、そんな藤野の連載枠を分け与える形で明らかに藤野よりも画力が勝る不登校の少女・京本が現れることで藤野にも大きな変化が生まれていきます。

 読み切りとはいえ、143ページにもおよぶ大長編となっていて、作品の中でも事態は一転二転する読み応えがあります。

 その内容は発表からまもなくSNS上でも話題となり、わずか1日で閲覧数は250万を突破。9月には単行本が発売されました。年末には「このマンガがすごい!2022」のオトコ編1位にまで選出され、2021年を代表する漫画の筆頭として活躍しました。

 発表から2年半での長編アニメーション化は異例とも言えますが、これだけのスピード感で企画が進行するのも納得の注目の原作なわけです。

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◆スタジオドリアンってどこ? 実はすごい人が監督に抜擢されている?

 そんな急な企画をどこが請け負うの? と思いきや、今回のアニメーション制作を担当しているアニメーション制作会社に名前が上がったのはスタジオドリアンです。あまり聞きなれない名前なのも無理もなく、メインでTVアニメーションや長編映画の制作をしたことはこれまでになく、ここまで大々的に名前が上がるのは今回の『ルックバック』が初めてです。

 しかしアニメーション制作会社としてのポテンシャルはかなり期待ができます。なんといっても、このスタジオドリアンの設立者の一人である押山清高さんが、『ルックバック』で監督、脚本、そしてキャラクターデザインを担当するからです。

 押山清高さんといえば、『電脳コイル』、『ドラえもん』、『DEVILMAN crybaby』、『ペンギンハイウェイ』、『劇場版フリクリ』などなど……数々のアニメーション制作会社の話題作に参加し活躍しており、最近でも『君たちはどう生きるか』の制作に名を連ねていたりとスタジオジブリ作品にも数多く参加しています。

 そんな押山清高さんの活躍が顕著に表れていたのが、原作から脚本、作画、そして監督までを担当しスタジオドリアンで制作を務めた短編アニメーション『SHISHIGARI』です。残念ながらこの短編は、2019年の「新千歳空港国際アニメーション映画祭」などの限られた場でしか公開されておらず、2024年現在は視聴が難しいのですが、この作品はなかなかの傑作となっています。

 雪山を舞台に少年が初めての狩猟に臨む様子を描いた15分ほどの作品で、ほとんど台詞がない中で登場人物の背景や感情を表現し、その事件やアクションで見ているこちらの感情をその短い尺の中でも揺さぶりきる見事な作品となっていました。

 原作漫画の『ルックバック』も作中では、台詞がないシーンでも登場人物の心情を思わせる印象的な場面や表現がたくさん存在するため、押山さんだったらどう映像化するのだろうと想像すると、不安よりも期待感の方が増すほどです。

 とはいえ、登場人物の描いた漫画がそのまま掲載されているなど、そもそもどうやってアニメーション化するのかが想像できない表現が原作漫画『ルックバック』にはまだまだたくさん残っています。

 そういったアニメ化の難しい部分をいかに映像に落とし込むのかなども、今回の映画化には注目しておきたい部分です。

 そういう意味でも原作漫画は読み切り作品などで気軽に読みやすいので、今のうちに読んでおいて予習しておくのもアリ! 顛末を知っていてもきっとアニメーション映画も楽しめるでしょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:https://lookback-anime.com/news/detail/?id=1114255より


劇場アニメ「ルックバック」
© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

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