本格的に夏が迫って来まして、着々と今夏の大作映画の情報が揃ってきました。7月〜8月にかけての夏休みシーズンは、一年でも集客力が望める有力作が集中して公開される時期です。しかし、今年は例年に比べるとそこまで有力な作品がないような気もするのですが、いつもなら公開されるはずの“あの”スタジオの新作がないからではないでしょうか。

◆3年おきじゃなかったの?今年もスタジオ地図作品の上映はなし!

 例年の傾向を知っている人にとっての驚きはなんといっても、細田守監督作品でおなじみの“スタジオ地図”の新作映画が公開されない点でしょう。

 スタジオ設立以前の2006年の『時をかける少女』の公開以来、2009年の『サマーウォーズ』、2012年の『おおかみこどもの雨と雪』、2015年の『バケモノの子』、2018年の『未来のミライ』、2021年の『竜とそばかすの姫』と細田守監督は3年おきに新作アニメーション映画を発表してきました。

 この流れを考えると今年の夏はスタジオ地図の新作映画の公開年にあたるわけですが、なんと今年の夏の公開映画のラインナップにスタジオ地図作品はなし! 3年おきの上映が絶対と決まっていたわけではないとはいえ、10年以上同ペースでの公開がされていたことを考えると驚きがあります。

 スタジオジブリ作品や新海誠監督などの有力監督が手がける単発の長編アニメーション映画を夏の風物詩的に感じていた人には“不在感”を感じる夏となりそうです。

◆今年の夏休み映画の役者はこの作品!

 今夏は大作映画がないのかと言われれば実はそうでもありません。日本のアニメーション映画も海外のアニメーション映画も人気シリーズの新作が控えています。

 日本からは今年も『クレヨンしんちゃん』が夏休み映画として登場。8月9日から『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』が公開されます。今年は『ジュラシック・パーク』シリーズを思わせる恐竜ネタということで、幅広い層に訴求できそうな一番有力なファミリー映画枠となりそうです。

 もう一本、TVアニメシリーズもクライマックスを迎えている『僕のヒーローアカデミア』の新作映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』が8月2日から公開。前作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』は新型コロナウイルスの流行のまっただ中という逆風の中で公開されながら、興行収入は30億円以上の大ヒットとなりました。今年は当時とも状況が変わり、さらなるヒットを期待させられます。

 対して海外からも人気アニメーション映画の続編が登場。7月19日からはミニオンでもおなじみの怪盗グルーシリーズ最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』が公開されます。今作ではミニオンが目からレーザービームを出したり、身体がゴムのように伸縮したりと、アメコミヒーローのような特殊能力を獲得し、いつも以上のハチャメチャぶりを予感させます。

 そしてディズニーからはピクサーのヒット作、『インサイド・ヘッド』の続編『インサイド・ヘッド2』が8月1日から公開されます。人間の頭の中を描いた本シリーズでは、思春期を迎えた主人公のライリーの頭の中に“シンパイ”“イイナー”“ダリィ”“ハズカシ”の4つの新たな感情が登場します。

 こうして追っていくといずれもシリーズ作品ではありますが大ヒットが期待できる作品が出揃っており、しっかり夏休みシーズンを盛り上げてくれそうです。

◆シリーズ作品以外の注目作!今夏のダークホースを見逃すべからず!

 ではシリーズ物のアニメーション映画しか今年は公開されないのか?といえば、そんなこともありません。実は有力監督の新作アニメーション映画も今夏控えています。

 たとえば、夏休みシーズン開始早々の7月19日には日仏合作の映画『化け猫あんずちゃん』が公開されます。

 本作は映画『カラオケ行こ!』で知られる山下敦弘監督と『花とアリス殺人事件』のロトスコープアニメーションディレクターを務めた久野遥子監督のお二人によって手がけられた作品です。

 主人公の化け猫・あんずちゃん役を務める森山未來さんは声だけでなく“動き”も演じており、事前に撮影した実写映像や音声を元にアニメーションを制作していくという特徴的な制作手法を取っているのが注目ポイントです。

 そしてもう一本、夏休みシーズンの締めくくりとなる8月30日に『きみの色』が公開されます。『映画 けいおん!』や『映画 聲の形』などで知られる山田尚子監督がTVアニメ『平家物語』でもタッグを組んだサイエンスSARUと共に新作アニメーション映画を制作。バンド活動に取り組む思春期の少女たちの様子が描かれていきます。

 振り返るとあの『君の名は。』も夏休みシーズンの終盤に上映されて特大ヒットとなり、新海誠監督の名前が一般的に認知されるようになりました。これらの作品から今年を代表するようなメガヒットタイトルが出てくる……なんてことも全然ある話でしょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『【アニメ】クレヨンしんちゃん公式チャンネル』より

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