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 ひと昔前の深夜アニメを語るとき、「ツンデレ」は避けて通れない属性でした。強く当たる。素直になれない。なのに、ふとした瞬間に見える好意が刺さる。あの温度差にやられた人は、かなり多いはずです。

 ところが最近のアニメを見ていると、昔ながらの「怒鳴る」「突き放す」「あとから照れる」タイプのヒロインは、以前ほど前面に出てこなくなりました。代わりに支持を集めているのは、静かに距離を縮めるヒロイン、相手のペースを乱さないヒロイン、あるいは感情をゆっくり理解していくヒロインです。

 では、ツンデレヒロインは本当に消えたのでしょうか。この記事では、公式サイトや出版社サイトで確認できる作品情報を押さえながら、「ツンデレ的ヒロイン」がどのように変わってきたのかを整理します。なお、各キャラクターを公式に「ツンデレ」と断定するのではなく、ファンの間でツンデレ的・強気ヒロイン的に語られやすいキャラクターとして扱います。

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◆そもそも「ツンデレ」とは何だったのか

 まず言葉の意味から押さえておきます。小学館『デジタル大辞泉』では、ツンデレを「普段はつんつんと無愛想な女性が、特定の男性と二人きりになると甘えるさま」という趣旨で説明しています(参照:デジタル大辞泉)。

 ただし、アニメ・漫画のファン文化で使われる「ツンデレ」はもう少し広めです。二人きりで甘えるタイプだけでなく、プライドが高い、好意をうまく出せない、強い言葉で距離を取る、でも物語が進むと弱さや優しさが見える。そういう「反発と好意のギャップ」まで含めて、かなりゆるく使われてきました。

 ここでややこしいのは、公式プロフィールに「このキャラはツンデレです」と書かれている例ばかりではないことです。だからこそ、この記事では「公式情報で確認できるキャラ設定」と「ファンが受け取ってきたツンデレ的な印象」を分けて見ていきます。この分け方をしないと、ただの思い出語りになってしまいます。

●1990年代:アスカの“ツン”は、かわいいだけではなかった

 ツンデレ史を語るとき、避けて通れないのが『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレーです。エヴァンゲリオン公式ポータルのEVA-INFOでは、TVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』を1995年10月から1996年3月に放送された全26話のテレビシリーズとして整理し、「大きな社会現象を巻き起こした」と紹介しています(参照:EVA-INFO)。

 アスカは、後年のテンプレ的な「照れ隠しで怒るヒロイン」とは少し違います。強い言葉、負けず嫌い、他者への攻撃性。その裏には、傷つきやすさや承認されたい気持ちがある。つまり、アスカの“ツン”は萌え属性として消費しやすい記号というより、キャラクターの痛みと直結していました。

 この時点の強気ヒロインは、まだかなり生々しい存在でした。かわいいから怒っているのではなく、怒らなければ立っていられない。だからこそ刺さるし、同時に見ていてしんどい。アスカは「ツンデレ」という言葉だけでは回収しきれないキャラクターですが、のちの強気ヒロイン像に大きな影を落とした存在だと言えます。

●2000年代:ルイズと大河の時代、ツンデレは“わかりやすい快感”になった

 2000年代に入ると、ツンデレはよりラブコメ的で、わかりやすい属性として広がっていきます。代表格として名前が挙がりやすいのが、『ゼロの使い魔』のルイズです。MF文庫Jの公式サイトは同作の公式情報を扱っており、KADOKAWA Animationの作品情報でも『ゼロの使い魔』が掲載されています(参照:MF文庫J『ゼロの使い魔』公式サイトKADOKAWA Animation『ゼロの使い魔』作品情報)。

 また、同作のBlu-ray BOX情報では、ルイズ役が釘宮理恵さんであることも確認できます(参照:『ゼロの使い魔』Blu-ray BOX情報)。

 ルイズは、主人公との距離が最初から近いのに、態度はなかなか素直ではない。強い言葉、プライド、失敗、嫉妬、そしてデレ。このアップダウンが、当時のラブコメの楽しさとして機能していました。

 もう一人、2000年代後半の象徴として外せないのが『とらドラ!』の逢坂大河です。TVアニメ公式サイトのキャラクター紹介では、大河は「わがままで短気」、気に入らない相手にはすぐ噛み付く凶暴さを持つ少女として説明されています(参照:TVアニメ『とらドラ!』公式サイト)。これだけ読むとかなり手強いのですが、そこから見えてくる不器用さや寂しさが、作品全体のドラマを支えていました。

 この頃のツンデレは、視聴者にとって一種の「お約束」でした。怒る、ぶつかる、振り回す、でも本当は嫌いではない。視聴者はその構造を知っているから、序盤の摩擦も楽しめたのです。いわば、ツンの時間を耐えるのではなく、ツンそのものを味わう時代でした。

●2010年代:ツンデレは残った。ただし、少しずつマイルドになった

 2010年代に入っても、ツンデレ的なヒロインが消えたわけではありません。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の高坂桐乃は、電撃文庫の特設ページで「容姿端麗、成績優秀、運動能力抜群」と説明されるキャラクターです(参照:電撃文庫『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』特設ページ)。アニメ公式サイトのキャラクター欄でも、桐乃を中心に主要キャラクターが整理されています(参照:アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』公式サイト)。

 桐乃の場合、ツンデレの構造は恋愛一本というより、家族関係、趣味の共有、プライド、秘密をめぐる距離感に広がっています。昔ながらの「好きだから怒る」だけではなく、「自分の弱いところを見られたくないから強く出る」方向に寄っていった印象があります。

 『ニセコイ』の桐崎千棘も、強気でぶつかり合うラブコメヒロインとして語られやすい存在です。TVアニメ『ニセコイ:』公式サイトのキャラクター欄では桐崎千棘ら主要キャラクターが掲載され、アニプレックスの作品情報でもアニメ第2期『ニセコイ:』の放送情報が確認できます(参照:TVアニメ『ニセコイ:』公式サイトアニプレックス『ニセコイ:』作品情報)。

 ただ、このあたりから「理不尽に怒るヒロイン」をそのまま楽しむ空気は、少しずつ変わっていきます。強いヒロインは残る。でも、ただ暴れるだけでは愛されにくい。なぜ怒るのか、どこに傷があるのか、相手との関係がどう変わるのか。視聴者がそこまで見るようになったことで、ツンデレは単純な記号ではなく、心理描写の一部になっていきました。

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◆代表例で見る、ツンデレ的ヒロイン像の変化

 ざっくり並べると、変化はかなり見えやすくなります。ここでは「公式にツンデレと明記されたキャラ一覧」ではなく、公式情報で基本設定を確認しつつ、ファンの間でツンデレ的・強気ヒロイン的に語られやすい例として整理します。

時期の目安

代表的に語られやすいキャラ

公式情報で確認できること

ヒロイン像の変化

1990年代半ば

惣流・アスカ・ラングレー

EVA-INFOで放送時期・社会現象化を確認

強気さが内面の痛みと結びつく

2000年代半ば

ルイズ

MF文庫J公式・KADOKAWA等で作品情報を確認

ツンとデレの落差がラブコメの快感になる

2000年代後半

逢坂大河

TVアニメ公式で「わがままで短気」などを確認

小柄で凶暴、でも不器用というギャップ

2010年代前半

高坂桐乃、桐崎千棘

電撃文庫・アニメ公式等で作品・キャラ情報を確認

家族・秘密・偽装関係にも広がる

2020年代

フリーレン

アニメ公式・WEBサンデーで長寿のエルフ等を確認

感情をゆっくり理解する方向へ

●フリーレンは「新しいツンデレ」なのか

 では、現代側の象徴として『葬送のフリーレン』を置くと、何が見えてくるのでしょうか。アニメ公式サイトのINTRODUCTIONでは、同作を「魔王が倒された“その後”の世界」を舞台に、千年以上生きる魔法使い・フリーレンと人々の旅路を描く作品として説明しています(参照:アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト INTRODUCTION)。WEBサンデーの作品紹介でも、フリーレンは長寿のエルフであり、人を“知る”旅に出る存在として整理されています(参照:WEBサンデー『葬送のフリーレン』作品紹介)。

 ここが昔のツンデレと大きく違います。フリーレンは、好意を隠すために相手を攻撃しているわけではありません。そもそも、人間の時間感覚や感情の重さを、まだ十分に掴めていない。だから視聴者は、怒鳴られたり振り回されたりするストレスではなく、「あ、この子はいま気づいたんだ」という静かな揺れに反応します。

 昔のツンデレが「好きなのに素直になれない」だとすれば、フリーレン的なヒロインは「大切だったことに、あとから気づいていく」。この差は大きいです。感情を隠すドラマから、感情を理解するドラマへ。ヒロイン像の重心が、かなり変わっています。

◆なぜ、昔ながらのツンデレは減ったように見えるのか

 ここで一度、冷静に言っておきたいことがあります。「ツンデレヒロインが何人から何人に減った」という公式統計は、少なくとも一般に参照しやすい形では見当たりません。だから、「絶滅した」と断言するのは危険です。正確には、昔ながらの強い暴言・暴力・理不尽な拒絶を前面に出すヒロインが、中心的な流行から外れてきた、と見るのが安全です。

 理由の一つは、視聴者がキャラクター同士の摩擦を以前ほど気軽に笑えなくなったことです。もちろん、今でも喧嘩する男女や口の悪いヒロインはいます。ただ、相手を傷つける言葉や理不尽な暴力が長く続くと、「かわいい」より先に「しんどい」が来る読者・視聴者が増えました。

 もう一つは、恋愛や関係性の描き方がフラットになったことです。昔のラブコメでは、主人公がヒロインの壁を突破していく構造が強くありました。でも今は、相手の心をこじ開けるより、隣に立つ、待つ、尊重する関係のほうが刺さりやすい。攻略するヒロインから、共に歩くヒロインへ。この変化はかなり大きいです。

 さらに、視聴環境の変化もあります。配信で大量の作品を見られる時代には、序盤でストレスが強い作品は離脱されやすい。昔なら「そのうちデレるから待て」と言えた展開も、今は初速で見切られることがあります。ツンの期間をじっくり待つ体力が、視聴者側にも市場側にも残りにくくなったのです。

◆ツンデレは死んだのではなく、形を変えた

 とはいえ、ツンデレそのものが死んだわけではありません。むしろ、かなりしぶとく生き残っています。ただし、昔のように「怒鳴る」「殴る」「突き放す」をそのまま魅力にするのではなく、もっと内面寄りに変わりました。

 たとえば、素直になれない理由が丁寧に描かれる。強い言葉のあとに、ちゃんと反省や揺れがある。相手を傷つけっぱなしにしない。主人公もただ受け止めるだけではなく、対等に言い返す。こうなると、ツンは単なる暴力的な記号ではなく、「不器用な人がどう人と近づくか」というドラマになります。

 昔のツンデレは、わかりやすい火花でした。今のツンデレ的ヒロインは、もう少し低温で、長く残る余熱に近いのかもしれません。派手に怒鳴るより、少し言葉を選び損ねる。突き放すより、距離の取り方が下手。そういう小さなズレのほうが、現代の視聴者にはリアルに見えるのでしょう。

◆まとめ:アスカからフリーレンへ、ヒロインは時代の空気を映している

 アスカ、ルイズ、大河、桐乃、千棘、そしてフリーレン。並べてみると、ツンデレ的ヒロインの歴史は「怒っている女の子が減った」という単純な話ではありません。

 アスカの時代には、強さの奥にある痛みが刺さりました。2000年代には、ツンとデレの落差そのものがラブコメの快感になりました。2010年代には、ツンは家族関係や秘密、偽装関係などに広がり、2020年代には、感情を隠すよりも、感情をゆっくり知っていくヒロインが支持されるようになりました。

 ツンデレは、完全に消えたわけではありません。ただ、昔のテンプレのままでは通用しにくくなった。視聴者が求めるものが、強い刺激から、安心できる関係性へ少しずつ移ってきたからです。

 顔を真っ赤にして怒鳴るヒロインに胸を撃ち抜かれた時代から、長い旅の果てに誰かの存在の大きさへ気づくヒロインに涙する時代へ。ヒロインの変化は、そのままアニメを見ている私たちの心の変化でもあるのかもしれません。

〈文/士隠カンナ〉

《士隠カンナ》

アニメ・漫画関連のムック本を中心に活動するフリー編集・ライター。1990年代〜2000年代のアニメ作品を原点に、近年の話題作から長年愛される名作まで、幅広い作品の解説・考察・キャラクター分析を手がけている。作品の魅力や背景を読者にわかりやすく伝える記事制作を得意とする。

 

※サムネイル画像:TAMASHII NATIONS(魂ネイションズ)公式サイトより出典 『「S.H.Figuarts 式波・アスカ・ラングレー」(C)カラー』

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