この原稿を書いているのは2018年4月12日(木)の深夜。まさにこの夜が明けた4月13日(金)からは『劇場版名探偵コナンゼロの執行人』が公開しようとしている時なわけです。

劇場版名探偵コナンゼロの執行人
画像引用元:劇場版 名探偵コナン 『ゼロの執行人』 オリジナル・サウンドトラック販売元:Being

 劇場版名探偵コナンシリーズはここ数年、絶好調。

 2013年の『劇場版名探偵コナン絶海の探偵(プライベートアイ)』から毎年のように最高興行収入記録を更新している状態です。しかも、さらに驚くべきはその伸び幅です。『絶海の探偵』の頃は興行収入30億円台だったものが、今や2017年の『から紅の恋歌(ラブレター)』では68億円という2倍近い数字をたたき出し、2017年の邦画No.1という成績を収めました。

 なぜ、ここ数年のコナンの映画、こんなに勢いがすごいんだろう? と、ずーっと疑問を抱いてきたのですが、つい最近、これぞ!という答えを自分の中で見つけました。今回はそれを発表します。

Anime Japan 2018で見つけたコナン映画絶好調の秘密

 劇場版名探偵コナンの興行成績絶好調の秘密……その答えを見つけたのは、3月に開催されたアニメの大型イベントAnime Japan 2018。

 このイベントのクリエイションセミナーという企画の一つに“『劇場版名探偵コナン』の宣伝について”という回があり、劇場版名探偵コナンの最初の頃から関わっていたという読売テレビの諏訪道彦さんと、最近の作品から宣伝プロデューサーを務め始めた東宝の林原祥一さんが登壇しておりました。

 そして、この林原祥一さんが宣伝プロデューサーを務め始めた作品というのが、まさに『絶海の探偵』だったそうなのです。

 それを聞いて「もしかして……」と林原さんの興行への貢献を想像したわけですが、この企画での林原さんのコナンの宣伝に関する取り組み内容を聞いて確信しました。劇場版名探偵コナンがここまでヒットしているのは、林原さん率いる宣伝チームのお陰です!

林原さん率いる宣伝チームの取り組み

 お陰です、なんて断定してしまいましたが、林原さん率いる宣伝チームが映画の宣伝にどんなアクションをしてきたのかというと、特に大きいと思うのがプロジェクトシリーズという発明です。

 ここ数年、劇場版名探偵コナンの宣伝では“○○プロジェクト”といった趣向の企画を実施するのが定番となっています。

 例えば2015年『名探偵コナン業火の向日葵』では「KID STEAL PROJECT」と題して、映画のキーキャラクターの怪盗キッドの仕業に模して、『少年サンデー』のロゴが盗まれたり、幕間のCM「NO MORE映画泥棒」とコラボするなどして映画をPRしました。

 続く2016年『名探偵コナン純黒の悪夢(ナイトメア)』では「BLACK IMPACT PROJECT」と題して、キーキャラクターの黒の組織に合わせて、『少年サンデー』の表紙を黒くしたり、松崎しげるさんとコラボするなど黒をテーマに宣伝を実施しました。

 そして昨年2017年『名探偵コナンから紅の恋歌』では「Conan Loves Project」として、恋愛がキーとなる物語にちなんで、雑誌CanCanにコナンモチーフの婚姻届が付いてくるなどといった恋愛要素に絡めた広告が実施されました。

 どれも奇抜で面白い宣伝でありながら、映画のテーマを端的に示していて、その按配が非常に見事です。

 そして、なによりこれらの企画は印象に残ります。明らかに以前とは一線を画すほど、ここ最近の劇場版コナンの宣伝は面白いのです。

 こういった企画の根幹を作っているのが、まさに先ほどの林原さんだというのですから、やはり林原さんの貢献がとても大きいのは間違いないでしょう。

今年も面白い!コナンの宣伝!

 Anime Japan 2018のセミナーにて林原さんはこれらの企画に対して「いろんなことがやれる母体を作るのが“プロジェクト”」と申し上げていました。

 脚本を読んだうえで、林原さんが切り口をまず作り、コンセプトや軸を作ることで、最後までブレないで広がりのある広告展開ができるのでしょう。

 セミナーでは今年の宣伝についても紹介してくれました。今年は「ゼロの執行人」ということで「ZERO MISSION PROJECT」と題した“ゼロ”をモチーフにした宣伝に注力しています。

 コナンがごみ拾いをする企画をして町のごみをゼロにしようとしたり、コナンくんが一日署長となり交通安全を呼び掛けて事故ゼロを目指すといった話題性のある企画を今年も実施しております。

 また、今年は「極秘任務-SECRET MISSION-」という宣伝も並行して実施して、JK用語を蘭ねーちゃんが披露するというこれまたインパクトのある告知動画を制作していたのも印象深いです。

 林原さんが宣伝プロデューサーとして就任してから興行成績が大幅に上がっていること、そしてそれ以降の宣伝が明らかに面白いものに仕上がっていること。

 こういった部分から思うに、劇場版名探偵コナンの興行が絶好調である大きな要因に、林原さん率いる宣伝チームの手腕があるのは間違いないのではないでしょうか。

 果たして今年はどれぐらいの数字に及ぶのか。映画の出来とは別に、興行の視点でも非常に行方が楽しみです。

(Edit&Text/ネジムラ89)


劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』

©2018 青山剛昌 /名探偵コナン製作委員会

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