2020年3月6日に第43回日本アカデミー賞が発表されました。

 今年の最優秀アニメーション作品賞に選ばれたのは、『天気の子』。綺麗な美術の数々に加え、挑戦的な結末を含む現代日本を映すような作品の内容は、まさに2019年を象徴する作品だったといえます。

天気の子 画像<画像引用元:天気の子 サウンドトラック より引用掲載 販売元:Universal Music =music=>

 ただ、ちょっと物足りなさを感じている人はいないでしょうか。

 せっかくの映画賞なのだから、自分の知らなかった優良作品を知るようなきっかけになって欲しいところ。みんなが知ってる大ヒット作品だけでなく、せっかくの年に一回の祭典なのだから、もっと多くの作品にもスポットが当たって欲しいです。

 というわけで、そんな欲しがりさんにもオススメの“祭典”を紹介します。その名も文化庁メディア芸術祭です。

文化庁メディア芸術祭とは

 文化庁メディア芸術祭とは、その名の通り文化庁が1997年より主催となって、芸術性や創造性の高い作品を顕彰する祭典です。多岐に渡るメディア芸術作品が対象となっており、部門は大きく分けて「アート」「エンターテイメント」「アニメーション」「漫画」の4種類に分けられています。各部門の中に大賞の他、優秀賞や新人賞、審査員推薦作品など複数の作品が選ばれます。

 この芸術祭は応募性となっており、夏頃まで翌年の選考対象作品を募り、秋から審査を開始します。そして、年を明けて大体3月頃に審査結果を発表し、選出された作品は、後ほど開催される受賞作品展に集められ披露されます。

文化庁メディア芸術祭をオススメしたいワケ

 なぜ、文化庁メディア芸術祭をオススメするかというと、理由がいくつかあります。

 まず選出作品が多い点

 日本アカデミー賞と比べても選出される作品数は多く、メジャーな作品だけでなく小規模でしか公開されなかった作品にもスポットが当たりやすくなっています。選ばれる作品が多い分、自分の知らなかった優良な作品も見つけられやすくなっています。

 次に海外作品も対象となっている点

 日本の祭典ではあるものの、国外の作品も選考の対象となっています。日本に入ってくる国外作品にも限りがありますし、日頃からアンテナを張っていないと国外作品の公開はなかなかチェックできないもの。海外の作品のことも知りたい身にとっては、嬉しいポイントでもあります。世界基準で各メディアを俯瞰して見ることができるので、学べる点も多いです。

 そして何よりオススメしたいポイントが、審査委員に見る目がある点

 なんだか偉そうな理由ですが、各部門ごとにその分野のプロファッショナルの方々を選考委員に充てているため、選出する作品にはかなりマチガイナイ傑作が出そろいます。アニメーション賞だけを切り取っても、長編や短編、大手のビックバジェット作品や小規模なインディーズ作品、抽象度の高い難解な作品から、オタク向けと称されるようなマニアックな作品まで、総合的に作品を選出してくれているのです。

第23回文化庁メディア芸術祭の結果は?

 例えば、最近で発表された作品ではどんなものがあったのかを見てみても、文化庁メディア芸術祭の傾向が分かるのではないでしょうか。2020年3月6日に発表された第23回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門の結果を紹介します。

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 まず大賞作品には、渡辺歩監督の『海獣の子供』が選ばれました。

 『天気の子』のような大ヒット作品にはなりませんでしたが、その美術性の高さや、挑戦的なアニメーション表現は、各所で評価も高く、第74回毎日映画コンクールでもアニメーション映画賞に選ばれています。

 続いて優秀賞では4作品が選ばれています。

 まず、川尻将由監督による、様々なタッチのイラストが入り乱れる中編作品『ある日本の絵描き少年』

 以前、『アニギャラ☆REW』内でも紹介した作品ですが、新千歳空港アニメーション映画祭や毎日映画コンクールなどに続いて、文化庁メディア芸術際でも受賞となりました。

 続いて八代健志監督の短編ストップモーションアニメーション『ごん』も選ばれました。「ごん、お前だったのか」のフレーズでおなじみの作品なのですが限られた地域でのみ公開されている作品だったので、作品の存在自体を知らなかった人も多いのではないでしょうか。

 そして海外作品からは、2019年に満を持して全国公開を果たしたレミ・シャイエ監督の『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』と、短編作品からはPaul.E.Cabon監督の『Nettle Head』が選ばれました。どちらも東京アニメアワードフェスティバルや新千歳空港国際アニメーション映画祭で上映経験のある評価の高い作品です。

 その他、新人賞では新千歳空港国際アニメーション映画祭の日本グランプリの受賞も経ている築地のはら監督の短編作品『向かうねずみ』や、審査委員会推薦作品では『甲鉄城のカバネリ海門決戦』『プロメア』『SSSS.GRIDMAN』、『BEASTARS』といった映画やTVで人気の高かった作品、『白蛇・縁起』『露小黒戦記』『ムタフカズ』といった海を越えて話題作品などが選出されています。そしてあの『天気の子』もソーシャル・インパクト賞として選出されています。まさに2019年のオールスターが一挙に集ったと言っても過言ではない、ラインナップとなっておりました。

 

――そんなわけで、その年の傑作作品を総括的にチェックするのであれば、文化庁メディア芸術祭の選出作品を押さえておけば効率的。きっと自分に刺さる作品が見つかるハズです。授賞式はテレビ放送こそされませんが、箔のある賞ですので、毎年春を迎える頃には「今年の文化庁メディア芸術祭の結果はどんな感じかな……」と気にしてみてくださいね。

(Edit&Text/ネジムラ89)


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