◆「女の子は知恵で生きぬかないとね」という言葉はどのように受け取るべきか?
お金に困っている人たちはどうしていけばいいのかという課題の答えは、麦わらの一味で経済を握っている存在でもあるナミや、今作のゲストキャラのカリーナといった人物たちの動きから学べます。
『ONE PIECE FILM GOLD』は、カリーナがナミに残した印象的なメモが最後に映り、エンドロールが流れ始めます。そこにはカリーナが残した「女の子は知恵で生きぬかないとね」という言葉が刻まれていました。
これはお金に支配されている側の人間ではなく、お金が取り巻く環境で強かに生きていく人物の生き様が表れています。
ルフィはその拳でテゾーロに対抗しましたが、ナミやカリーナは、頭脳と仲間の協力を武器にテゾーロに挑みました。こんな世の中と嘆いていても、世界が変わるわけでもありません。いかにして戦っていくのか。ルフィからはその拳で精神的な強さを。ナミやカリーナからはしっかり考えて行動していく、という具体的な対抗手段を用いて挑んでいくという姿を学ぶことができます。
この映画に一貫しているのは「お金が悪」なのではなく「お金に支配されることが悪」ということ。その点を間違えてはいけません。
たとえば、いくらパパ活などの色恋で大金を手にしていたとしても、そのお金をホストにつぎ込んでいいように利用されていることに気づかなければ、結局はテゾーロと同じくお金の支配に溺れている存在にすぎません。
自分がお金に支配されているのか、いないのか。それを意識して生きていくことこそが停滞と叫ばれる今の日本で生きていくうえで、心に刻んでおかなければいけないことなのでしょう。
「騙し騙されのマネーゲーム」に心血を注いでいては、お金の奴隷から抜け出せません。たとえ騙されたとしても笑って過ごせるような、ルフィが最後に見せた笑顔のような態度でいつもいられるよう、私たちはお金とうまく付き合っていかないといけません。
〈文/ネジムラ89 編集・監修/水野高輝(マネーメディア コンテンツディレクター)〉
アニメとお金の話
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:Amazon.co.jpより
※参考資料:
・家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](金融広報中央委員 2022年度(令和4年度)調査)
・家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] (金融広報中央委員 2022年度(令和4年度)調査)
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