◆屈指の激レアアニメ『戦慄のミラージュポケモン』とは?
しかし、これらの作品の中でも群を抜いて貴重な作品と言えるのが、TVスペシャル作品『戦慄のミラージュポケモン』でしょう。
2006年にポケットモンスターの10周年記念作品として制作された長編作品で、なんとこの作品は日本では一切ソフト化がされていない貴重な作品です。
そもそもこの『戦慄のミラージュポケモン』は当初、アメリカでのみ放送された作品で、日本での公開は半年近く遅れてオンライン上での配信という形での限定上陸となりました。
その後はこども・アニメ専門チャンネル、キッズステーションで不定期に放送されるなど、まったく表に出てこなかったわけではないのですが、あまりにも限定的すぎる日本での公開の形により、多くの人がその存在すら知らないままの特別なエピソードとなっています。
元がアメリカ向けということで、オープニングテーマやエンディングテーマも馴染みのある日本の主題歌ではなく、英語の曲になっているのも特徴です。
◆設定も貴重?改造ポケモンの大活躍回!
『戦慄のミラージュポケモン』の面白い点は、作品自体の貴重性だけでなく、本編の内容が通常のアニメシリーズとは逸脱したテーマに踏み込んでいるところにあります。
このアニメでは、サトシ、ハルカ、タケシ、マサトの当時のレギュラーキャラクター4人に加えてカスミとオーキド博士の2人が、ドクター・ユングと呼ばれる今作で初登場の博士の研究所に招待され、ユング博士が生み出した新たなバトルシステムで生み出されたミラージュポケモンとのバトルを体験するというストーリーが展開。
しかしそこへ謎の男・ミスターミラージュが乱入し研究所は占拠されてしまいます。
ミスターミラージュは、弱点があるポケモンを不完全と考えており、彼によって本来は使えないワザや能力を持ったミラージュポケモンが悪用されていきます。
このアニメでは、ミラージュポケモンという本来は使えないワザを使える伝説のポケモンが登場することがキモといえるでしょう。
ありえない能力を持ったポケモンたちを操るミスターミラージュの様子は、さながらゲームデータを改造して遊んでいるゲームプレイヤーのようです。
現在進行形でゲーム『ポケットモンスター』シリーズでは公式の大会などでも、データを不正に改造したプレイヤーが出場していたりと問題になっているのですが、そういった不正なプレイスタイルを非難する内容をいち早くこのエピソードで表現していたとも受け取れることができます。
一見、ミュウやミュウツーなど伝説ポケモンが入り乱れる10周年記念作品らしい豪華なエピソードにはなっているのですが、その実、ポケモンのアニメシリーズの中でも一際攻めた内容を盛り込んでいそうな特別編がこの『戦慄のミラージュポケモン』でした。
ポケモンのアニメシリーズでサトシから主役が交代されて久しいですが、思わぬ形でまだ多くの人が見ていないサトシの隠された冒険がお披露目となりました。いろんな意味で“今までにない”体験がこの『戦慄のミラージュポケモン』で楽しめるはずです。
〈文/ネジムラ89〉
※サムネイル:beeboys / stock.adobe.com(画像はイメージです)
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi