2018年で「プリキュア」シリーズは15周年! 毎年秋の時期に公開されているプリキュア映画も、今年は『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』というアニバーサリーイヤー記念作として登場です。本作ではこれまでの「プリキュア」シリーズに登場したプリキュア総勢55名が一堂に集うというギネス世界認定されてしまうほどの作品となっています(ちなみに本当に認定されました)。

映画「HUGっと! プリキュアふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ」
画像引用元:映画「HUGっと! プリキュアふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ」主題歌シングル(初回生産限定盤)(DVD付) 販売元:Marvelous Entertainment Inc.LDC(PLC)(M)

 この映画のすごいところは、こんなとんでもない数のキャラクターを登場させておきながら、本編時間およそ1時間15分の中にまとめているというところ。ヒーロー数と上映時間を考えると『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』も真っ青の割合なのですが、見事素敵な一本の映画として成立させていたのでびっくりです。

 55名のヒーローを1時間15分で見せるという条件を『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』はどうクリアしていったのでしょうか?

プリキュア映画における全員集合の歴史

 知っている人には当たり前のことではあるのですが、そもそも「プリキュア」の劇場版シリーズは、こうして大勢のプリキュアたちが集う作品を作るのが初めてではありません。今ほどの人数ではないものの、「プリキュア」シリーズはこれまでもオールスターズシリーズとして複数の「プリキュア」シリーズのキャラクターが一堂に集う映画を何作も出してきています。

 時にはそれぞれの変身バンクをつなげて見せたり、時にはチーム編成を変えてみたり、人数が多くなるにつれて、セリフが用意されないプリキュアが現れ始め、さらに近年は最新シリーズから年代が近い「プリキュア」シリーズのみを共演させるなど、「プリキュア」シリーズではオールスター物としても独自の変革を持っています。

 そんな流れを経てきたうえで満を持して登場となる『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』は、久しぶりの全員集合型のオールスター作品。数が多くなりすぎたことも明らか一つの課題となっていたオールスター物で、止めたと思っていた全員集合という一大イベントを再び行なうというだけでも重要な意味を持っています。

 しかも、今回はこれまでの「プリキュア」の声優も再集結するというのだからこれまた驚き! かつて、今より少ない人数でも断念した、“全員へセリフを用意する”というのにも挑むのだからハードルも高いです。この高いハードルを、今回『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』では思い切った方法で切り抜けました。

はなちゃんに一極集中が解決のカギ!?

 大勢のプリキュアたちを出演させながら一本の映画として成立させた方法とは、主人公一人にドラマを集中させるという手です。

 タイトルに『ふたりはプリキュア』と『HUG!っとプリキュア』が並んでいることもあり、一番最初のプリキュアと一番最新のプリキュアのキャラクターたちがもちろんメインで活躍するようには出来ているのですが、映画を起承転結で観ていくとあくまでも主人公は『HUG!っとプリキュア』の主人公のはなちゃんです。

 今回の悪役として登場するキャラクター・ミデンに翻弄され、悩んで、成長し、解決に導いていく。そのどれをもはなちゃん視点で追っていくので、数多のプリキュアたちが登場してもノイズになりません。むしろドラマ部分をはなちゃん一人が握っているおかげで、脇を固める54名のプリキュアが変に出番を取り合うような見え方にならず、バランスの良さが感じられる仕上がりとなっていました。

「思い出」というテーマの有能さ

 モチロン単純な出番の量で言うなら、相対的に冷遇されているように感じられる「プリキュア」シリーズは確かにあります。ですが、それを以てしてもバランスが良いと感じられるのは、今回の映画が物語のテーマに「思い出」を置いていることも大きいでしょう。

 「思い出」がテーマということで、本作では観賞している人達それぞれの思い入れの深いプリキュアを反芻させるような展開やセリフが用意されています。このオールマイティに個々の思い入れのあるプリキュアのシーンを重ねられるので、どのプリキュアシリーズのファンだとしても、成立する作り方になっているのがまた妙です。

 きわめつけはクライマックス直前の定番の応援を促すシーンの存在。鑑賞者に応援を促させるというのがプリキュア映画の定番なのですが、今回のその促し方がまた特殊で、総体的にプリキュアを応援させるのではなく“自分の思い入れの強いプリキュアを応援させる”という異例の煽り方をします。鑑賞者の「思い出」に訴えかけるような形で応援を促すので、否が応でもパーソナルなプリキュアへの思い入れを想起せざるを得ない仕組みになっているのです。よく考えられています。

 また、その他の配慮として『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』に向けて、先行してTVアニメシリーズで過去のプリキュアたちを登場させて、昔のプリキュアを知らない子供たちにも、昔のプリキュアが馴染みのあるキャラクターとなるような試みを行なっているなんて工夫も施されていたりします。こういった所からも本作の公開に向けて練りに練った作品なのだろうな、というのがヒシヒシと伝わってきます

 流石にしばらくはこの数のプリキュアが集う機会はそうそうないでしょう。ですが今作の仕上がりを観ると、この先20周年、30周年を迎えてプリキュアが100人、200人と増えたとしても、オールスターズが集う映画が再び実現できてしまうのではないかと期待してしまいます。

「なんでもできる! なんでもなれる!」

 はなちゃんが述べるその言葉通り、プリキュアならきっと不可能と思ってたことも可能にしてくれそうな気がします。

(Edit&Text/ネジムラ89)


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