2017年9月に舞台初演を終え、リバイバル公演も果たし、満を持して2018年7月からアニメ放映が開始した『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』。
皆さんはもう「スタァライト」されましたか?
アニメ監督を担当しているのは、『輪るピングドラム』で脚本・絵コンテ、『ユリ熊嵐』で副監督を務めた古川知宏監督。
『少女革命ウテナ』で知られている幾原邦彦監督と多く仕事をしてきたスタッフらしい、鮮烈なビジュアルと色遣い、象徴的な小道具が使われた演出が既に大きな話題を呼んでいますよね。そしてこの演出の何よりの特徴と言えば、言葉での説明が非常に少ないということ。
アニメを観ただけでは、「レヴューとは?」「オーディションって?」「あのイケボのキリンは何者?」……というような疑問が尽きないと思います。
『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の特徴の一つは、「舞台とアニメの二層展開」。
舞台をまだ観てないという人に、どうすればアニメをもっと楽しめるのか、何を押さえていればスタァライトできるのかを解説していきます!
ひかりの転入によって動き出す物語
舞台では「#1(シャープワン)」として一区切りを見せている『レヴュースタァライト』。現在アニメでは、その#1をなぞりながらキャラ一人一人をより掘り下げる形で展開が描かれています。
物語の舞台は聖翔音楽学園。表現力が全てとされ、スタァを目指す少女たちの学び舎。
主役となるのは、俳優育生科であるA組の生徒「愛城華恋(あいじょうかれん)」。クラウンの髪飾りが特徴で、寝坊常習犯の少し抜けたところのある少女。
学級委員である努力家の星見純那(ほしみじゅんな)や、両親ともに高名な舞台俳優である天堂真矢(てんどうまや)がいるクラスの中では、実力や努力が少し伴わないように見られながらも持ち前の明るさや天真爛漫さで厳しい学園生活を乗り切っている女の子です。
そんな華恋にとって重要な人物として描かれているのが、三森すずこさんの演じる「神楽ひかり(かぐらひかり)」です。演劇界では世界で一番入学が難しいと言われる、イギリスの王立演劇学院から転校してきた彼女。5歳のときまでは日本で過ごしており、華恋とは幼馴染だった関係で特徴とも言える星型の髪飾りは「華恋と小さい頃一緒に買った」というものです。
神楽ひかりの転入はいわば、A組の中でも8人の選抜に匹敵する実力者が転入してきたということ。
聖翔学園では毎年「スタァライト」と呼ばれる大きな演目を演じており、役名付きで出演できるのはA組の中でもたった8人。今年の「スタァライト」のキャストが、ひかりが転入したことによって1年前から変動してしまうかもしれない――たった8つの枠を巡り、トップスタァになるため争わないといけないかもしれない。
そんな少女たちの動揺や気概に、まるで応えるかのように開催されたのが地下劇場でのオーディション。少女たちも動揺のまま舞台上で各々の武器を取り「レヴュー」と言う名の争いを始めます。
舞台版だとこのオーディションは「華恋たち99期生に課した学園の特別なシステム」とされていますが、アニメ版ではその説明やそこに至るまでの描写・人物が全てカットされているため、舞台版とは別の意図で開催されているかもしれない、と現在は憶測されています。何より重要なのは、舞台版とアニメ版で「華恋がレヴューに参加するか否か」という点でシナリオの分岐が行われているということ。
トップスタァになるため、去年と同じメンバーでスタァライトを演じるため、夢を叶えるため、キラめきを得るため……それぞれが手放せない感情と理由を持ってオーディションに参加する中、「おかしいよ」と異を唱え、争いを止め全員で学園システムに抵抗する先導に立つ、というのが舞台版の華恋のシナリオであるのに対し、アニメ版は「ひかりとトップスタァになるため」オーディションに参加し、「渇望のレヴュー」において「オーディションを勝ち抜く」という確固たる目的を持ち星見純那を下しています。
アニメ版は舞台版ではあまり掘り下げられなかった「運命を交換した」というひかりと華恋の関係を深く描く物語となっているのではないか、という展開を見せており、まさに舞台とアニメ、二つで一つの物語を描く「二層展開式」のシナリオとなっています。
舞台版に関してはリバイバル公演の映像化BDが発売されているほか、月刊ブシロードで『舞台 少女☆歌劇 レヴュースタァライト―The LIVE― SHOW MUST GO ON』というタイトルの舞台版のコミカライズが連載されています。ぜひこれらをチェックし、今後のアニメ放映、そして10月に行われる舞台「#2」を楽しみましょう!
音楽に魅力の詰まった『レヴュースタァライト』
ミュージカルであるからには、主題歌、劇中歌を含め、音楽が物語を牽引すると言っても過言ではありません。
かの『オペラ座の怪人』では、「The Phantom Of The Opera」で流れる旋律があまりにも有名ですし、ブロードウェイミュージカルである『RENT』の主題歌「Seasons Of Love」は日本でもCMソングとして起用されており多くの人が耳にしたことがあると思います。
では、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』はどうなのか? 音楽という点で、『レヴュースタァライト』は非常にクォリティーが高い出来として仕上がりを見せています。
舞台版で強い印象を残す曲である「舞台少女心得」、「Star Divine」、そしてライブパートで観客と一体になって歌われる「スタァライトシアター」は全て本多友紀という作曲家によって作曲が行われています。
2016年からアニソンで活動を始めた作編曲家で、代表作に大橋彩香の「NOISY LOVE POWER☆」(『魔法少女 俺』主題歌)の作編曲、『アイドルマスターsideM』のDRAMATIC STARSが歌う「ARRIVE TO STAR」作曲、『ラブライブ!サンシャイン!!』のAqoursが歌う『Guilty Eyes Fever』作曲などがある、まさに「新進気鋭」と言える勢いを持った作編曲家なのです。
一番の特徴はキャッチーで耳馴染の良いメロディー、そしてサビへの盛り上がりに向けた展開が評価のポイントとなっている作曲家で、その実力は『レヴュースタァライト』でもいかんなく発揮されています。特に「Star Divine」は、ミュージカルらしく何度も繰り返されるメロディに耐える剛胆なリズムを持ち、舞台の過激さに応えるような、まさに流星を描いたようなアレンジがなされ、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト #1』の貌となっています。
アニメ版のOPである『星のダイアローグ』も本多友紀の作編曲で、こちらもかなりハイレベルな楽曲となりました。
アレンジにオーケストラの手法をふんだんに用いているほか、サビではコーラスと主旋律の対比を利用し、舞台少女たちの歌声がいっそう華やかになっています。そして何より、作詞を担当している中村彼方と言う人の手腕が光る一曲でもある「星のダイアローグ」。
歌詞という短い言葉の連続の中でも、倒置や劇的な単語の起用といった技術面で確かなドラマを描くだけでなく、歌詞の中で舞台少女同士での想いの共有を描く中で「舞台少女と聴き手」のリンクを生み出し「鮮烈な舞台を観て、舞台に立つことを目指した少女たちの描く舞台」というコンテンツだからこそ生まれる感情を歌詞に落とし込んだ楽曲が、このオープニング曲と言えます。
ひとつの作品に長く携わることによって、スタッフも洗練され、さらにクオリティーの高い作品が生まれていく……そういった可能性を描いた作品としても、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は非常に期待が持てる作品となっています。
2.5次元と呼ばれる、アニメ作品とミュージカルのコラボが文化として派生し、それが熟したことを示したコンテンツとも言える『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』。まさに“アニメだからこそ”、“ミュージカルだからこそ”描ける世界がリンクしていくこの作品の様子は、ひとつのコンテンツとして見守るのに充分心を躍らせるほか、アニメ史において「分岐点」と呼べるのではないかと思えるほどの完成度を見せてくれています。
今後のアニメ放映、そして10月にある舞台#2……ぜひ目を離さず、舞台少女のキラめきをこれからもこの目に焼き付けていきましょう!
(Edit&Text/三井ハチ )
少女歌劇レヴュースタァライト 公式サイト
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