近年提唱されたジャンル“新日常系”とは?

前頁では「ほのぼのした終末もの作品」を5つ紹介させていただきました。

ただ自分で挙げておきながらこう言うのは筋違いかもしれませんが、上記5作品のうちだと『がっこうぐらし!』がかなり異質に見えます。

ふ・れ・ん・ど・し・た・い(通常盤)(TVアニメ(がっこうぐらし!)オープニングテーマ)
画像引用元:ふ・れ・ん・ど・し・た・い(通常盤)(TVアニメ(がっこうぐらし!)オープニングテーマ) 学園生活部、 丈槍由紀(cv.水瀬いのり)、恵飛須沢胡桃(cv.小澤亜李)、若狭悠里(cv.M・A・O)・直樹美紀(cv.高橋李依)  販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

 というのも『少女終末旅行』『ヨコハマ買い出し紀行』は、文明が崩壊した(している)寂寥感ある世界の中で、残された時間をゆったりと生きる主人公たちを描いた「日常物語」であり、『人類は衰退しました』は「妖精さん」という新しい種族との共存における日常を。

けものフレンズ』も(かばんちゃんから見たら)“フレンズ”という新種族との共存が描かれており、基本的には「暗く重たい雰囲気」が無いです(ストーリーの中には暗い場面もありますが)。

対して『がっこうぐらし!』は、主人公格の女の子4人の日常的な生活が描かれている時もありますが、その裏でゾンビから身を守る常に危険な状況下である描写も同じくらいあります。

『がっこうぐらし!』は、2014年に放映された『結城友奈は勇者である』の制作局である、MBSのプロデューサー前田俊博氏が提唱した、“新日常系”作品であるとも評されています。

この作品は「日常系だと思って見始めたら……」という言葉で紹介されるのをよく目にします。個人的に私は日常系作品が好きで心ぴょんぴょんしながら見ています。

日常系作品は「日常っていいよね」と共感しながら観る方も多いかと思いますが、『結城友奈は勇者である』は「日常っていいよね」と痛感しながら見る作品になっているのでは? と思っています。

これは、端的に訳すと『けいおん!』や『ご注文はうさぎですか?』といったほのぼのとした作品は、なんてことない幸せな日々に対して「日常っていいよね」を表すのに対し、『結城友奈は勇者である』や『がっこうぐらし!』は、日常を脅かす敵が明確に存在し、その敵から日常を取り戻す過程で日常の素晴らしさを実感するもの、であると考えられます。

ただ“新日常系”というジャンルは3年前に提唱された比較的新しいモノであるため、アニメファンの中でも「これは新日常系ではないか?」と定義が曖昧な状態でもあります。

『少女終末旅行』は“新日常系”ではない?

少女終末旅行 1 Blu-ray
画像引用元:少女終末旅行 1 [Blu-ray] 販売元:KADOKAWA メディアファクトリー

章立てにも書いたように、個人的には『少女終末旅行』だけでなく、上記で挙げた『がっこうぐらし!』以外の4作品は“新日常系”には含まれないものだと考えられます。

ではなぜそのように考えたのか、理由を考察していきます。

◆ストーリーにおける主人公たちの目的が明確に異なる

“新日常系”に当てはまる(と思われる)作品群におけるストーリーは、いわゆる「平穏だった日常を取り戻す」ことに重きを置かれており、日常を脅かした(もしくは破壊した)敵に立ち向かう姿が多く描かれております。

それに対し『少女終末旅行』をはじめとした上記4作品では、『けものフレンズ』ではセルリアンというフレンズにとって明確な脅威との戦いはあるにしろ、日常を脅かした(もしくは破壊した)敵に立ち向かう姿はほぼほぼありません。

『ヨコハマ買い出し紀行』に至っては、むしろ現生物の脅威である温暖化に対する抵抗は無く、むしろ文明の崩壊を受け入れているほどです。

この描写の違いこそが、“新日常系”に含まれない大きな違いではないか?と思います。

◆「日常系だと思ったら日常系じゃなかった」という表現

これは現状『がっこうぐらし!』、『結城友奈は勇者である』あたりしか含まれていないので、理由としては弱い内容ではありますが……。

両作品では、可愛らしいキャラクターがメインになることで日常系と思わせる描写がありながら、実情は全く違う重たいストーリーだった! という表現方法が取り入れられています。

『魔法少女まどか☆マギカ』の第3話にも似たようなショッキングな表現がありましたよね。

『プリキュアシリーズ』や『セーラームーンシリーズ』など、可愛い女の子とバトルものという作品は非常に多く存在しますが、新日常系にはそれに「崩壊した(している)世界」、「一見日常系にも見られる描写」が追加された作品にも思えます。

そして上記で挙げた4作品には、どれもその描写がありません。

以上の2つの理由から、『少女終末旅行』などが新日常系というジャンルに含まれないものなのではないかと考えられます。

 

――今回挙げた内容のうち、特に『ヨコハマ買い出し紀行』、『人類は衰退しました』はカテゴライズが難しい内容であり、またその複雑な内容と不思議な世界観が魅力の作品でもあります。

『少女終末旅行』もまた同様であり、終わってしまった世界の「日常」というのはなかなか思いつかない内容ですよね。

アニメも佳境に向かっておりますが、チトとユーリには幸せな日常であってほしいな、と心から思います。

(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)

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TVアニメ「少女終末旅行」公式サイト
© つくみず・新潮社/「少女終末旅行」製作委員会

けものフレンズプロジェクト|公式サイト
©けものフレンズプロジェクト/KFPA

『人類は衰退しました』公式サイト | マーベラスAQL
©田中ロミオ、小学館/妖精社

TVアニメ「がっこうぐらし!」公式サイト
© Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社/がっこうぐらし!製作委員会

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