2017年秋アニメの中で密かな人気を持つ作品、『少女終末旅行』があります。
この作品はいわゆる“ポストアポカリプス”(以下、同義語とされる「終末もの」と表記)」にカテゴライズされる作品ではありますが、「世界は崩壊したけれどどこかのんびりとした雰囲気」を醸し出すストーリーであり、文明が破壊された世界でものびのびと生きる少女二人のアテもない旅という世界に、不思議な感覚を覚えていきます。
また、『少女終末旅行』のようなテイストの作品は、他にもいくつか存在しているのはご存知でしょうか?
そこでここでは、その「ほのぼのした終末もの作品」を5つ皆さんにご紹介するとともに、近年提唱された類似ジャンルのひとつ、“新日常系”に『少女終末旅行』が当てはまるのか、独自に考察していきます。
少女終末旅行
今期放映中のアニメであり、2014年より新潮社のくらげバンチで連載中のつくみず先生のデビュー作、『少女終末旅行』。
西暦3000年以上の文明が崩壊した世界で、寒冷の地を少女2人が装甲車で旅をするという内容。
ですが、この作品は現実の悲壮感などを感じさせず、メインキャラのチトとユーリも悲観的に生きているのではないのが特徴です。
水や食料もなく、進む土地も決して安全地帯というわけではないサバイバル要素もありますが、作中でも動物はおらず人間も指で数えるほどしか出会ったことがないため、いわゆる血生臭い描写というのもありません(一応ユーリは小銃を所持しておりますが)。
けものフレンズ
2017年1月にアニメが放映された、今年大人気となった作品です。
人間がいなくなったジャパリパークという動物園?で、不思議な力で“フレンズ化”した動物たちの日常に出会いながら、主人公のかばんちゃんの正体をサーバルキャットのフレンズであるサーバルちゃんと一緒に探しに行くというストーリーです。
作中では明確な言及はされていませんが、「紙飛行機を作れる」「服を脱げる」という、私たち人間からすればえらく当たり前のことにも新鮮なリアクションをするフレンズたちという、一種の「文明の衰退」であったり、作中であちらこちらにある「人間のいた形跡」から「人類のいなくなった世界(もしくは土地)」なのではないかという考察が多く、この作品も一つの終末ものであるとされています。
ヨコハマ買い出し紀行
芦奈野ひとし先生のデビュー作品であり、1994年から2006年まで月刊アフタヌーンで連載され、1998年にはOVA化もされました。
お祭りのような世界が終わり、海面上昇によって沈みゆく地上でゆっくりと「夕凪の時代」と呼ばれる時間に突入した現代で、文明の崩壊を受け入れた人類の「てろてろ」な日常を描いています。
神奈川県の湘南地域にある喫茶店「カフェ・アルファ」を経営している主人公の初瀬野アルファなどといった食事や共感ができる高度なロボットが多数存在し、人間との生活に自然と溶け込んでいる姿が描かれていますが、移動手段が原付や路面電車であるなど、日常の中の文明に差があるのが印象的です。
OVA版では、第1作の音楽担当に『あまんちゅ!』を担当したGONTITI、第2作では『ARIAシリーズ』を担当したChoro Club(当時は『ショーロ・クラブ』名義)が参加。
『あまんちゅ!』『ARIAシリーズ』ともに天野こずえ先生原作の作品かつ癒しやゆったりとしたアニメでもあり、『ヨコハマ買い出し紀行』の「てろてろ」とした日常にぴったりな作品になっています。
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人類は衰退しました
田中ロミオ先生のライトノベル。
2007年から2014年まで刊行されていた、旧人類と新人類である「妖精さん」とのほのぼのでちょっと不思議な日常を描いた作品です。
2012年にはアニメ化もされ、オープニングの『「妖精さん」と「わたし」』のダンスは「衰退ダンス」と呼ばれ、ニコニコ動画でもちょっと話題になっていました。
身長10cmほどの小ささでとんがり帽子を被り(ディズニーの映画『白雪姫』の小人が子供になったようなイメージ)、顔は皆(・ワ・)になっている「妖精さん」が世界の「現人類」となり、人間である「旧人類」は日々衰退している日常をほのぼのと生きていますが、主人公の「わたし」ら調停官以外妖精さんは姿を表に出さないという、終末世界にファンタジー要素が混じっているのが特徴的です。
楽しいことが大好きで楽しいことがあるといつの間にかその場に増え出し、一瞬にして一つの文明を築くことすらできてしまう妖精さんとは一体何者なのか?
ネタバレになるので詳細は伏せますが、この全貌は原作のラストで明かされております。
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がっこうぐらし!
2012年よりまんがタイムきららフォワードで連載されている、海法紀光先生原作の学生ストーリー。
学園で寝泊まりし、日常の全てを学園生活部の4人と過ごす、よくある「可愛い女の子たちの日常系」……ではなく、2015年にアニメ化された際、第1話の後半で突如現れた「荒廃した教室」のシーンで漫画を見たことがなかった(もちろん私も)視聴者の度肝を抜いたことで話題になった作品です。
現実は、学校外にはゾンビ化した人間があちこちにいて「外に出られない」という完全にホラーな世界となっていて、主人公の丈槍由紀が見ている世界・話している人間は全て彼女の妄言であるという、救い難い世界観になっています。
原作では由紀が過去のトラウマから乗り越えていく中で、全てを受け止めていたお姉さんポジションの若狭悠里の精神状態が悪くなってしまうという、登場人物の心情にもスポットが多く当てられています。
ただあくまで作品の雰囲気はほのぼのとした日常風景も多く描かれているため、単純なサバイバルものではないのが大きなポイントです。