アニメをはじめとした映像作品には切っても切れない要素の一つとして、私はよく「BGM」を挙げています。
各シーンにさらなる彩りとして視聴者に印象づけるには絶対に必要ですし、中にはこのBGMはまさにこのアニメだ! と、即座に思い出せる名曲というのも多く存在します。
今回はその中で、特に私がオススメしたい作曲家である光宗信吉さんをご紹介いたします。
光宗信吉さんのプロフィール
光宗信吉(みつむねしんきち)さんは福岡県出身の作曲家で、元々はアーティストのサポートキーボーディストとして活躍されていました。
1995年『ナースエンジェルりりかSOS』よりアニメの作曲家として数々の劇伴を担当しています。
後述するアニメの他、代表的な作品としては『アキハバラ電脳組』(1998年)『魔法先生ネギま!』(2005年)『甘城ブリリアントパーク』(2014年)。また1998年には『新世紀エヴァンゲリオン』の監督で知られる庵野秀明さんが初めて実写映画の監督を務めた『ラブ&ポップ』の音楽も担当しています。
光宗さんの楽曲は全体的にオーケストラ調のものが多く、とりわけストリングスを使った重厚かつダイナミックな演奏と、バイオリンによる耳に残りやすいメロディーが特徴であると言えます。
またアニメのイメージにもよって変わりますが、民族音楽であったり、プログレッシブ・ロック要素を含んだ実験音楽も手がけております(こちらは後述)。その他にもピアノが入った楽曲も多く、ポップな曲からシリアスな曲まで幅広く使われています。
それでは光宗さんが担当した作品の中で、特に私がオススメしたい……とにかくBGMも聞いてほしいアニメを3つ紹介いたします!
『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(2000年〜2004年)
光宗さんの音楽で(個人的に)一番知られているであろう『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(以下、『遊戯王』)。特にニコニコ動画をよく見ていた方であれば、その印象はとりわけ強いのではないでしょうか。
特に「熱き決闘者たち」なんかは、デュエルのラストパートで遊戯たちが形勢逆転した時であったり、MADでも有名ですが「クリティウスの牙」や「封印されし奇跡」のほか、神を召喚するシーンで多く使われた「神の怒り」はストリングスの重厚なメロディがはっきりと出ている楽曲で、光宗さんらしさが多分に出ているのではないかなと思います。
うん、もう15年以上前の作品なのに「神の怒り」を聞いただけでラーの翼神竜が業火とともに現れるシーンがしっかりと思い出してきちゃいます。
また今は使われているのかあまりわからないんですが、「勝利への道」や「闇の魔術師」「闇の呪い」あたりは、夕方のニュース番組のBGMでも時々使われていましたね。
もしかしたら、こっちの方は知っているという方もいるのではないでしょうか?
なおこれ以降の遊戯王シリーズでは劇伴から外れていたのですが、現在放送中の『遊☆戯☆王VRAINS』ではなんと13年ぶりに劇伴を担当されています。
ぜひ今見ている方は聴き比べてみてくださいね。
『ローゼンメイデン』シリーズ(2004年、2005年、2006年、2013年)
(ものすごく個人的ですが)『涼宮ハルヒの憂鬱』を始めとした深夜アニメの爆発的人気が起こる前の2004年、『蒼穹のファフナー』『魔法少女リリカルなのは』『舞-HiME』『神無月の巫女』といった人気アニメ作品がここぞとばかりに登場したこの年で、同じように大きな人気を博した『ローゼンメイデン』も、光宗さんが劇伴を担当しています。
特に第二作の『ローゼンメイデン トロイメント』で登場した「薔薇水晶」のテーマのメロディなんかは、『遊戯王』の「熱き決闘者たち」の後半とすごく似ているんですよね(曲調としては、『遊戯王』「慟哭」にも近しい)。
『遊戯王』と比べるとポップな曲も多め(「邪悪な企み」「Battle in the house」など)のほか、チェンバロという楽器がメロディの曲も多くあるように感じます(「激しい思い」「アリスゲーム」など)。『ローゼンメイデン』の醸し出すゴシックな雰囲気と光宗さんのテイストが色濃く現れている曲です。
あと絶対におすすめしたいのは、劇中でも多く流れていた「Battle of Rose」。ストリングス、ピアノ、ギターの混合しつつも綺麗なメロディは、まさに光宗さんだ! と思わせてくれる一曲ですよ。
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『少女革命ウテナ』(1997年)
今もなお舞台化や読み切りの掲載が行われた、アバンギャルドな作風と難解な世界観、直接的ではないものの同性愛などの強い描写で非常に根強い人気を誇る『少女革命ウテナ』。この作品も、光宗さんが劇伴を担当されたのは意外と知られていないように見受けられます。
というのも、この作品は「絶対運命黙示録」「スピラ・ミラビリス劇場」といったJ・A・シーザー氏による合唱を含んだ戦闘シーンのBGMの印象がとても強いためなのではないかと思われます。というより、上記の歌はもはや聞いたら耳から離れないかなり特徴的なBGMです(笑)。
とはいえ、この他の劇伴は光宗さんが作られたものであり、「少女革命 overture」や「その彼女の悲劇」「伝説・神の名はアプラクサス」などの曲も、『少女革命ウテナ』の独特な雰囲気にマッチした幻想的な音楽ばかりになっています。
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最後に・・・
今回紹介した3作品は、光宗さんが担当したアニメの中でとりわけ知名度が高い作品をピックアップいたしましたが、個人的にはもう一つだけ、どうしても紹介させてほしいアニメがあります……。
その作品とは、2001年にTBS系列で放送された『ちっちゃな雪使いシュガー』。
まだ深夜アニメ自体の知名度も低い時代、正直、「なんで深夜に放送されたの?」と未だに疑問に思うほどにファンタジーなアニメなんです。
人間の少女サガと「季節使い」という妖精の見習いシュガーたちによる「きらめき」を探すというストーリーで、舞台もドイツのローテンブルクというレンガの家が立ち並ぶ街をモチーフにした、非常にメルヘンチックで可愛らしい作品です。
この作品を強くオススメしたい理由としては、他の光宗さんが担当した作品と比較してピアノがメインの曲が多いことと、その曲のどれもが非常に美しいんです。
これはおそらく、主人公の少女サガがピアノを演奏するシーンが多いことに来ているのだと思われます。
特に「Memory of Mother」や「Is the Pianist a Bear?」「The Theme of “KIRAMEKI”」は必聴です。
動画配信をほとんど行っていない作品なので聞ける機会が非常に少ないのですが、もしご覧いただく際には絶対に聞いてほしい曲です。
「Memory of Mother」なんかはYoutubeで実際に演奏している動画を上げている方もいらっしゃいます。
また作内に登場する「季節使い」という妖精たちは、各々が持つ楽器(ピッコロ、ハープ、トランペット、チェロなど様々なもの)を演奏して自然を操作していることから、それぞれの楽器を使用した楽曲もあるなど、特に「音楽」との関連性が高いのも特徴です。
個人的な話ではありますが、私自身を音楽好きに仕立て上げた元凶とも言えるアニメで、当時10歳だったにもかかわらず未だに大好きな作品の一つとしてこれを挙げているくらいです。未だに寝る時とかにサントラ聞いちゃうんですよね。
(10歳で深夜アニメ……という部分については触れないでください。本当にたまたま夜中に起きちゃってテレビを付けたらこのアニメの第一話が放送されていたんです!)。
おそらく自分に子供ができたら絶対に観せてあげたい、というくらいにオススメの作品です。
総じて光宗信吉さんの楽曲は、ファンタジー要素の強いアニメや壮大な世界観のアニメを盛り上げてくれる、音楽って素晴らしいなと思わせてくれるものばかりでございます。
これを機に、光宗さんが手がけられた作品のアニメをご覧いただければと思います。
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)