本当の思い
「あ、あの…何があったんですか……。希美先輩のこと、嫌いなんですか?」
久美子のど直球な質問に、みぞれは
「嫌いじゃない……そうじゃない。」
「のぞみは悪くない……悪いのは全部、私。私がのぞみに会うのが…怖いから…」
そして久美子の「どうしてですか?」という問いに「現実を分かっちゃうから」と答える。
みぞれにとって希美は「特別な存在」でした。
中学で友人もいなかったみぞれを吹奏楽部に誘い、音楽を知り、毎日が楽しくしてくれたのは、他でもない希美のおかげだったのです。
だが、希美からしたら、みぞれは数ある友人の中の1人でしかないと思っていました。
だから、高校で希美が部活を辞めたことを言わなかったのも、辞める前に相談してくれなかったのも、希美からすれば「私はそんな存在」なんだと思うのが怖くなっていたのです。
コンクールが嫌いで、唯一である希美もいない吹奏楽部になぜまだ残っているのか、みぞれにも分かっていなかった。
楽器だけが、2人を繋ぐものだったから。
みぞれの元に優子が現れると、希美に会うのは怖いかと問います。
みぞれは希美しかいないと答え、優子は同情で一緒にいるのではとつぶやく。その言葉に、優子はついに怒り出す。
「みぞれは私のこと友達だと思ってなかったの!?」
「本当にのぞみのためだけに、部活続けてたの!?」
「府大会で関西行きが決まって、嬉しくなかった?!」
「私は嬉しかった!中学から引きずってきたものから、やっと解放された気がした!みぞれは違う!?何も思わなかった!?」
「嬉しかった!でも、でも、それと同じくらい、辞めていった人たちに申し訳なかった…喜んでいいのかなって…!」
みぞれもついに泣き出してしまう。その言葉に優子は「いいに決まってる!……いいに決まってるじゃん。だから、笑って」と優しく言い切ってくれました。
優子の言葉がみぞれを心の闇から引っ張り出しました。
時を同じくして、夏紀と希美が同じ教室に入ってくる。
みぞれは勇気を出して、なぜ部活を辞めることを言ってくれなかったのかを聞く。
「だって、必要なかったから」
その言葉にみぞれは一瞬動揺するが、希美は続けて
「だって、みぞれ頑張ってたじゃん。私が腐ってた時も、誰も練習してなくても、1人で練習してた。そんな人に一緒にやめようとか、言えるわけないじゃん。」
と、声を掛けなかった真意を伝えます。
希美はようやく、みぞれとの思いがすれ違っていたことに気づきます。
みぞれは、希美にとって友達の1人でしかないから、相談をしてくれずに辞めたのではと思っていました。
そして希美は、決してみぞれをただの友人と思っていたわけではなく、吹奏楽への思いが本気だったから、そしてみぞれのオーボエが好きだから、一緒に辞めるなんて言うことはなかったのでした。
かくしてみぞれと希美のすれ違いは解消され、希美は無事部活に戻り、サポートメンバーとして部員をサポートする一員になることができました。
そしてみぞれも「希美のために吹く」ソロパートは、心温まる綺麗なメロディへと変わっていき、橋本も「見違えるほど良くなった!」と大絶賛したのです。
全国大会への切符を手にし、北宇治吹奏楽部員も歓喜に包まれます。
そんな中久美子はみぞれに「先輩、コンクールはまだ嫌いですか…?」と問い、
「たった今好きになった」
と、笑顔で答えたのでした。
そして、次の曲が始まるのです。
高校三年生、最後のコンクール
このように文章でざっと今までを振り返りましたが、はっきり言うとこのエピソードは「百聞は一見に如かず」と言いたいです!(今更)
みぞれ役の種﨑敦美さんの苦しさを吐露するシーン、そこから希美に全てを打ち明ける時の震え声、またみぞれを全力で叱咤する優子役の山岡ゆりさんの迫真の演技は、必ず見てもらいたいシーンの一つです。
そして、映画『リズと青い鳥』では、みぞれや希美らが3年生になり、昨年コンクールメンバーに入れなかった夏紀もメンバー入りを果たし、新たに全国大会を目指す姿が描かれます。
コンクールの自由曲「リズと青い鳥」でもみぞれのオーボエソロが入るなか、バックに希美のフルートが入るフレーズがあるのですが、2人での息が上手く合わずに苦悩します。
そこにはみぞれや希美の将来についてであったり、密かに希美がパフォーマンスの高いみぞれの演奏に嫉妬していること、ソロパートのイメージが「少女と青い鳥の別れ」であることに、みぞれが複雑な心境を抱えていること、そしてそれらを乗り越える姿が描かれます。
そんな2人の淡い青春を手掛けるのが、先述した映画 、『聲の形』を制作した山田尚子監督率いるスタッフ勢なのです。
昨年公開された映画、『聲の形』は、興行収入23億を突破する大好評の作品でしたし、山田監督も以前『けいおん!』、『たまこラブストーリー』といった人気作の映画監督を経験したことがあります。
より一層力のこもった作品になるのではないでしょうか?
アニメ版とは違うスタッフ勢でお送りする『響け!ユーフォニアム』では、どんな演奏をしてくれるのか、とても楽しみです!
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)
TVアニメ『響け!ユーフォニアム』公式サイト
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会