「襲来!!宇宙人シリリ」が伝えたかったモノ
『襲来!!宇宙人シリリ』の内容を簡潔に表すと、自分の置かれている環境(世界)に窮屈さを感じていた少年シリリが、その環境を抜け出し、自分を受け入れてくれる別の世界に飛び出していくというモノでした。
この映画でシリリを変えたモノは、“逃げる”という手段ではありません。
シリリを変えたモノは、「野原一家と過ごした冒険」そのものです。
・しんちゃんのように自由に生きてる人もいること
・ヒロシやみさえの様に自分の親と違ったルールを持った親も居ること
・君を受け入れてくれる場所もあること
・二人は生きて元の世界で再び星を一緒に見る
・下等生物だと思っていた世界の存在が美しいモノであったこと
などなど、彼は、野原一家との冒険を通し、外の世界を色々と理解。
シリリの体験は、映画を観ている子供たちに「君が思っているよりも世界は広い」と教えてくれる……まさに、彼の体験自体がロードムービーといえます。
この映画の中には、逃げるか否かを選択する前に、「外にも世界があるということを子供たちに知ってもらいたい」という、壮大なメッセージが隠されているのです。
そのメッセージがブレないよう、あえてエンドロール後にシリリのお母さんを登場させたといえます。
物語の真のゴールは
シリリのお母さんは確かに、最後に迎えに来てくれましたが、この映画の真のゴールはそこではありません。“シリリが、野原家という別の居場所を見つけた”ところが、真のゴールといえます。
だから、この映画はシリリが家族となったところでエンドロールが始まるのです。
そう考えれば、あのラストにも納得がいきませんか?
この映画は「正しい親とは何か」、「悪い親の対処法」を謳っている映画として読み取ると、ちょっと首を傾げてしまうハズです。
それよりも、観に来た子供たちに
「キミが思っているよりも世界はこれだけ広いんだ!」
というメッセージと共に、シリリの様に“閉塞感”を感じている子供たちにも、
「シリリが野原一家という自分を受け入れてくれる世界を見つけたように、いつか自分の居場所は必ず見つかるよ」
とも言っています。
このようにして、本作を優しいハッピーエンドを添えた物語と読み取れば、この映画のモヤモヤした部分が晴れていきます。
本作を観て、「うーん・・・」と思っていた人は以上の補助線を踏まえたうえで、もう一度鑑賞してみると、もっと楽しめるのではないでしょうか。
『襲来!!宇宙人シリリ』は、公開が始まったばかり。まだまだ全然間に合いますので、2回目、3回目と隠しキャラを探すがてら、本作を味わい直してみてください。
(Text/ネジムラ89 Edit/水野高輝)
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