長らく海外に比べてサービスの格差が大きすぎるとも話題になっていた、ディズニーによる映像配信サービスDisney+。そんなDisney+が2021年10月27日より、ついにリニューアルし、新たなブランド“スター”が追加されたりと配信作品や配信形態が以前よりも圧倒的に使いやすいものとなりました。
従来のディズニー系の作品だけでなく、『呪術廻戦』や『東京リベンジャーズ』といった日本のTVアニメ作品がラインナップに追加されたり、『デッドプール』や『キングスマン』といった、かつての20世紀FOX(現20世紀スタジオ)作品などを観ることができるようになりました。
では、ことアニメーション映画に注目した時に、どんな作品がこのタイミングで追加されたのでしょうか?それを考えた時に、ぜひ注目して欲しいのがブルースカイ・スタジオの作品たちです。
◆Disney+に大量追加!ブルースカイ・スタジオ作品
ブルースカイ・スタジオは、『アイス・エイジ』を代表作とするアメリカのアニメーション制作会社です。親会社である20世紀FOXがディズニーによって買収されたタイミングで、同じようにディズニー傘下に入ることになります。これにより当時、スタジオの最新作である『スパイinデンジャー』も劇場公開ではなく、日本ではDisney+独占配信という形で上陸しました。そんなブルースカイ・スタジオ作品は、これまでも数作はDisney+で配信されていたのですが、全体に対して本当に一部の作品だけでした。
<以前よりDisney+で配信されていたブルースカイ・スタジオ作品>
- アイス・エイジ
- メアリーと秘密の王国
- I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE
- スパイinデンジャー
そんなこれまでに対し、今回のリニューアルで追加されたのが以下の作品たち。
<10月27日よりDisney+で配信し始めたブルースカイ・スタジオ作品>
- アイス・エイジ2
- アイス・エイジ3ティラノのおとしもの
- アイス・エイジ4パイレーツ大冒険
- アイス・エイジ5止めろ!惑星大衝突
- ロボッツ
- ホートンふしぎな世界のダレダーレ
- ブルー初めての空へ
- ブルー2 トロピカル・アドベンチャー
- フェルディナンド
今回のリニューアルによって一部どころか、ブルースカイ・スタジオの長編アニメーション映画の全てを網羅できるようになりました。これらブルースカイ・スタジオのアニメーション映画が見放題作品として配信されているのは2021年11月現在Disney+のみ。もし、Disney+だからこその視聴作品を探しているのであれば、上記作品を追ってみてはいかがでしょうか。
◆夢や魔法はなくても想像力で戦うブルースカイ・スタジオ作品
これらの作品に触れたことのない人には、ブルースカイ・スタジオの作品って本当に面白いの?と思ってしまう人も居ると思いますし、少し知っている人からすると、『フェルディナンド』など日本では劇場公開を果たせず、直接ディスクリリースという形で日本上陸を果たした作品もあったりと、その扱いから出来を不安に思う人も居るでしょう。
しかし、心配するなかれ。ブルースカイ・スタジオ作品は国外では、多くの国で劇場公開を果たすスケールの作品ばかりで、いずれの作品も一見の価値ある作品ばかりです。
3DCGアニメーションということで、ルックだけではディズニーの映画との違いがあまり感じられないかもしれない……むしろ見劣りも感じさせる作品もあるかもしれませんが、夢と魔法を武器にした作品を多く描いてきたディズニー作品に対して、ブルースカイ・スタジオはそういった幻想性よりも、想像力で物語を押し拡げる作品が多め。より現実的なフィールドを舞台に、少数派であったり劣勢な立場にある主人公たちが奮闘する物語が多く、胸を熱くする映画が多いです。ギャグも意外と攻めた作品が多く、時にはディズニーではボツになりそうな尖った笑いも魅力の一つです。
◆2021年ブルースカイ・スタジオは閉鎖していた!
こうして、多くのアニメーション映画を生み出してきたブルースカイ・スタジオなのですが、残念なことに実は今年2021年にスタジオの閉鎖が発表されてしまいました。
ブルースカイ・スタジオの設立としては1987年にまで遡り、長編アニメーション映画界には2002年に『アイス・エイジ』で進出して以来、立て続けに新作を発表し、アメリカの大手アニメーション制作会社の一角として活躍してきました。
しかし、2019年に『スパイinデンジャー』を最後に新作映画の続報は報道されることなく、今年ディズニーによって経済的な影響を理由に閉鎖が発表されるに至ります。
ブルースカイ・スタジオだからこそできたことも多かったのではないかと思うと、今回の閉鎖は残念ですし、もしディズニー傘下に入っていなければ閉鎖は回避できたのかもしれない、なんてことも想像してしまいます。
ただ、実はこの閉鎖報道の後にブルースカイ・スタジオが本来受け取れる以上の税額控除を約4900万ドル多く受け取っていたという報道もされており、経済的な面で順調にいっていたのかは疑問が残るところです。
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◆ブルースカイはなくなれど『アイス・エイジ』はまだ生きている!?
ただし、ブルースカイ・スタジオファンとしては嬉しいニュースもあります。ブルースカイ・スタジオの看板タイトルである『アイス・エイジ』の最新作がディズニー傘下で制作されることが発表されています。
その名も『アイス・エイジ バックの大冒険』。
本作は、『アイス・エイジ3ティラノのおとしもの』より登場したキャラクター、イタチのバックにスポットをあてたスピンオフ作品。小柄な体型ながら、異様な運動神経とハイテンションで従来のレギュラーキャラクターたちを圧倒するような活躍を見せたキャラクター。吹き替えを担当しているのが、俳優のサイモン・ペッグ氏であることでも知られています。
この『アイス・エイジ バックの大冒険』はブルースカイ印が付いている作品ではないながらも、むしろ制作会社が閉鎖されてもこうして『アイス・エイジ』の新作を作ってくれることは素直に喜んで良いことではないでしょうか。あとは、かつての『アイス・エイジ』のテンションやナンセンスぶりがディズニーのもとでもなくなっていないことを祈るばかり。ディズニーという新天地でブルースカイ・スタジオの作品がどうなっていくのかは、むしろこの一本にかかっていると見てもいいかもしれません。
『アイス・エイジ バックの大冒険』は2022年1月28日よりDisney+で独占配信予定です。名前こそなくなれど、ブルースカイ・スタジオ作品たちの未来はDisney+でまだ続いているのです!
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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