現在放送中の『戦闘員、派遣します!』(以下、戦闘員)は『この素晴らしい世界に祝福を!』の作者・暁なつめ先生による3作目のアニメ化作品。主人公・戦闘員六号と仲間たちが未知の世界で馬鹿をやる姿や、前作のノリを受け継いだギャグ展開が魅力の物語です。
<画像引用元:https://kisaragi-co.jp/ より引用掲載 ©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会>
放送回を重ねるごとに人気を上昇させており、毎話登場するギャグは大好評。『このすば』『けものみち』『戦闘員』3つのギャグ作品を成功させた暁なつめ先生ならではのギャグテクニックに多くのファンが夢中になっています。
そんなファンの心を掴んで離さないギャグ展開のミソは「人がやらないことをやること」。ここでは、すでに放送されたギャグシーンを交えて、視聴者に大きなインパクトを与えている本作のギャグテクニックを3つ紹介。『戦闘員』では、どんな笑いが巻き起こっているのか?
◆「キャラの欠点を引き金」にポンコツキャラたちが繰り出すギャグ展開
<画像引用元:https://kisaragi-co.jp/ より引用掲載 ©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会>
物語のキャラというものは、主人公と関わることで問題の解決や地位向上など、何かしらメリットを得ることが多いです。しかし『戦闘員』では、マイナスとまでは言わないものの、本来望んではいない方向へ事態が転がっていくギャグ展開を目撃することができます。特に、キャラの欠点を引き金とするギャグが作中連発しています。
例えば、ヒロインの1人である騎士スノウ。彼女は本作の舞台であるグレイス王国の近衛隊長。露出の多い騎士服が印象的な美人さん……とここまでは完璧なプロフィールです。しかし、スノウには致命的な欠点があります。それは、出世とお金に異常な執着をみせてしまうこと。
これはスノウが親善大使として、他国へ派遣された時のエピソードです。
交渉相手の王子が、相当な金持ちだと知った彼女は、すぐさま色仕掛けにでます。大使である自分に手を出させ、責任を取らせようと目論むスノウ。しかし、そう簡単に行きませんでした。
過剰なアピールと不運が重なり、王子の機嫌を損ねる事態に……。これにはスノウを派遣した女王様もご立腹。責任として近衛隊長の座を剥奪されます。
スノウはヒロインの1人。そんな彼女が金銭に目が眩み色仕掛けをするなど、他の作品ではあまり見かけません。あまつさえ失敗し痛い目にあうなど『戦闘員』ならではのギャグポイントとなっています。
◆視聴者の予想を外す!「誰もがやらないバカをやる」ギャグ展開
<画像引用元:https://kisaragi-co.jp/ より引用掲載 ©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会>
『戦闘員』の見どころは「普通そんなことをする?」「そんな馬鹿なっ!?」といった視聴者の予想を外すギャグ展開にあります。
例えば、六号たちが始めてグレイス王国を訪れた時のこと。
グレイス王国では、水が貴重であるため雨を降らせるアーティファクトが重宝されていましたが、長年の稼働により故障してしまいます。
そこへ現れたのが、六号たちです。彼の相棒アリスは高性能アンドロイド。その機能を駆使しアーティファクトを修理してみせます。これは異世界系あるある「科学力スゲー展開」と思われたのですが……。本作はテンプレ通り進みませんでした。
暇そうに修理を眺めていた六号が、ちょっとしたイタズラ心でアーティファクトの起動パスワードを卑猥な言葉に変更してしまったのです。しかも、そのイタズラがバレ大惨事。本来なら、国難を救った英雄になるはずが、国の重要施設を破損させた国賊として捕まってしまいます。
「普通そんなことをする?」筆頭とも言えるこの事件は「アーティファクトの起動には大勢の前でパスワードを唱えなければならない」という設定込みで、トンデモないギャグ展開でした。後々訪れることになる、女王さまが卑猥なパスワードを唱えるシーンは必見です。
常人は、絶対にしないであろうイタズラをしてくれる六号。セクハラから大事件まで今後も登場する彼のイタズラに期待せずにはいられません。
◆「作品の特色を活かす」小悪党主人公がみせるギャグ展開
<画像引用元:https://kisaragi-co.jp/ より引用掲載 ©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会>
人がやらない馬鹿な行動で笑いをかっさらっていく『戦闘員』。その笑いポイントはキャラの個性やシチュエーションだけに留まりません。
六号のセリフにも、他の人が言わないであろうものが揃っています。しかも、本作の特色である悪の戦闘員要素を活かしており、六号の小悪党っぷりとあわせて視聴者には大ウケ。『戦闘員』らしいギャグをみせてくれます。
それは六号がグレイス王国に来て始めて戦いに参加した時のことです。
敵軍との戦闘を開始するグレイス王国。戦闘員として潜入した六号もこの戦いに駆り出されます。しかし、六号は主戦場から離れたところで、敵を観察するだけ。「何をやっているんだ?」と疑問視される行動でしたが、彼の目的は敵の補給部隊を狙うことでした。
正面から戦う作戦ではありませんが、補給線を断つことも1つの戦略。しかし、六号がこの戦略を取ると一気に小悪党っぽさがにじみ出ます。その原因は、彼のセリフ。補給部隊を襲った六号は、混乱する敵に向かって
「命が惜しければ、荷物を置いてうせやがれ」
「逆らうやつは皆殺しだ!!」
……と普通の主人公なら絶対に言わないであろうセリフを連発。正当な戦略のはずが、このセリフと六号の表情だけで卑怯なことをしているようにしか見えません。六号の小悪党っぽさがツボに来る『戦闘員』らしいギャグ展開になっています。
『戦闘員』では今後も、悪の組織の戦闘員らしい、姑息で邪悪な戦略が次々と飛び出し、物語を盛り上げてくれるはずです。今度はどんなセリフが飛び出すのでしょうか。
――『戦闘員、派遣します!』は、キャラの欠点を利用したもの、視聴者の知識の裏をかくもの、そして物語の設定を活かしたもの、この3つのギャグテクニックが視聴者を楽しませています。
どのギャグが一番クスッときましたか? どれも他の作品とは一味違う暁なつめ先生らしさが出ています。
登場キャラが繰り出す人がやらないことをやるからこそ面白いギャグは見応えバツグン! 今季笑い足りない方は、ぜひ『戦闘員』を視聴してみてはいかが?
〈文/天乃ひる (@amano_hiru)〉
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