とにかく圧巻された「第三楽章」
おそらく本作品のもっとも盛り上がる部分である、みぞれと希美のソロが入る「第三楽章」の合奏シーン。
新山先生にリズの気持ちが分からないと語り、「では自分が青い鳥だったら?」と問われて本意に気づくみぞれ。みぞれが新山先生に音大を勧められて、自分も音大に行けば……と思っていたけど、それは結果としてみぞれに嫉妬に近い気持ちを抱いていたことに気付いた希美。
今までリズがみぞれで青い鳥が希美だった世界が、その一瞬で入れ替わり大空に向けて颯爽と羽ばたくみぞれのオーボエの音色はまさに圧巻の一言でした! そしてみぞれの覚醒に気付いた希美が吹けなくなってしまい、途中で泣いてしまうシーンがより一層映えるなぁと思いました。希美の弱々しくなってしまった音色のリアルさが手に取るようにわかりました。
正直演奏シーンが少なかったのはちょっと残念だなぁとED中に思っていたのですが、後々考えると、このシーンを印象的に感じさせるために、演奏シーンが少なかったのではと感じています。
希美の元から羽ばたいたみぞれ
アニメ版でもあった通り、希美から見たみぞれは「大切な楽部メンバーの1人」ですが、みぞれから見た希美は「希美が全て」。だからこそリズはみぞれであり、青い鳥は希美だったわけですし、みぞれが「青い鳥を自ら手放す感情を理解できなかった」わけです。希美という青い鳥を離してしまったら、みぞれは何にもなくなっちゃう(と思っていた)わけですから。
でも、最終的には、前述の通り逆の立場だったわけであり、みぞれは希美の元から羽ばたいたのです。ここについては、下記のみぞれ役の種崎敦美さんと希美役の東山奈央さんのインタビューを見ていただいた方がいいかなと思います。
参照URL:https://cho-animedia.jp/special/41881/
アニメを知っていた私からしたら「もどかしい」作品
この作品を見た後、私は最終的な感想として「もどかしい!」と感じておりました。理由としては、どうしても『響け!ユーフォニアム』を見てからの映画だったため、演奏シーンやら他のキャラクターがどう動くかという別の部分も一緒に考えて視聴しちゃっていたんです。
でも、この作品は『響け!ユーフォニアム』シリーズでありながら別作品としての一面も持ち合わせていたため、同じ温度で見るべきものではなかったのかな? と思ったんです。
演奏が少ないところであったり、久美子や麗奈・優子をはじめとした熱い展開はこの作品には無いため、特にアニメを見ていた人にはちょっと物足りなさを感じる人もいたのかな……と思います。そうなると、今まで持っていた『響け!ユーフォニアム』で知った知識や経験が軽いノイズに感じてしまったんです。
だから、
「まっさらな気持ちで観てみたかった」
と感じました。
ただそうなると1個気になる部分が出るんです。それは、みぞれの希美への思いが「初めて観た人はどう感じるんだろう? ただの重たい女の子に見られないかな?」と勘ぐってしまいました。もしそう思われてしまったら、そういう娘じゃないんだけどなぁ……って言いたいですし、そのためには「まずは原作かアニメ観てほしい」って言いたくなるんです。
どっちが良いんだろうなぁ、と思ってしまうんです。だからこそ原作やアニメを知ってから観るべきと強く言えず「もどかしい!」と思ってしまったんです。
公式サイトの山田尚子監督も、インタビューでは次のようにおっしゃっています。
100人の方がご覧になったら、100通りの感想があるんじゃないかなぁと思うので、観た後にちょっと語らってみたくなる、そんな映画になっているのでは、と思います。
なので、やっぱり私は原作やアニメを観たことある人にはぜひ鑑賞して欲しいと言います! そして、みなさんがこの作品を観てどう感じたのかを語っていきたいな、と思います。
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会