2021年9月25日(土)の21時よりNetflixの今後の配信作品をPRするグローバルファンイベントTUDUMのアニメステージの配信が公式YouTubeチャンネルにて実施されました。
“TUDUM”とはNetflixのロゴムービーではおなじみとなっている効果音のことですね。
実はこのタイミングは、フジテレビ系列で『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の放送と丸かぶりというすごいタイミング。すごいとこにぶつけてきたなぁ、と軽い気持ちに思っていたのですが、実はこの配信にて驚きの発表があったのです!
◆スタジオコロリド最新作『雨を告げる漂流団地』2022年配信
TUDUMのアニメステージの配信では、『ULTRAMAN』や『アグレッシブ烈子』といった人気シリーズの続編や、今後配信を控えている『ブライト:サムライソウル』や『スーパー・クルックス』といった新作タイトルが発表されたのですが、そんな中でまさかのサプライズ発表された作品があります。それがスタジオコロリドの石田祐康監督最新作『雨を告げる漂流団地』。
スタジオコロリドといえば、2018年の劇場公開作『ペンギン・ハイウェイ』や、2020年に劇場公開を予定していたものの新型コロナウイルスの影響もあり、急遽Netflix独占配信へと舵をきったことでも印象的な『泣きたい私は猫をかぶる』を制作しているアニメーション制作会社でした。
まだまだ若いアニメーション制作スタジオながら、近年ではポケットモンスターのWEBアニメシリーズ『薄明の翼』をはじめとした独自のポケモンのアニメシリーズや、DIsney+の『スター・ウォーズ:ヴィジョンズ』の制作にも参加していたりと、以前よりも注目度合いが上がっている中での新作ということで、世界スケールでの期待作にも名を連ねていると言ってもいいでしょう。配信は2022年を予定しており、続報にも期待です。
◆石田祐康監督の隠れた名作『陽なたのアオシグレ』とは?
加えてやはり個人的に注目せざるを得ないのが、この新作が石田祐康監督の最新作であることにつきます。映画『ペンギン・ハイウェイ』がとびっきりに清々しい物語だったのはもちろんなのですが、実はそれと同じぐらい大好きな作品の監督も務めている方です。
それが、今回の『雨を告げる漂流団地』の発表映像にもわずかに映像が用いられていた中編アニメーション『陽なたのアオシグレ』です。
この『陽なたのアオシグレ』は、石田祐康監督にとって初の劇場公開作品。2013年になかむらたかし監督の中編『寫眞館』や、2015年に新井陽次郎監督の『台風のノルダ』と同時上映という形で公開された作品です。
物語の主人公は小学校4年生の陽向(ひなた)くん。同級生の時雨(しぐれ)ちゃんのことが好きで、仲良くなる妄想の日々を重ねていくのですが、ある日そんな時雨ちゃんが転校してしまうことになってしまいます。別れの日も、学校から去っていく時雨ちゃんを陽向君は遠巻きにしか見ることができなかったのですが、意を決して学校を飛び出した陽向くんが時雨ちゃんの乗る車を追いかける物語となっています。
この作品の何が良いかといえば、やはりクライマックスにおける気持ちの良い疾走感です。絵を描くのが得意な陽向くんが、自分の絵から生み出した鳥たちと持ち前の妄想力で、心をドライブさせながら時雨ちゃんに別れを伝えに向かうシーンは力強く、熱い! 満を持しての最後の二人のかけ合いには、思わず笑顔と涙が同時に溢れるような体験となっていました。
絵が動き出すような演出はまさにアニメーションの根源的なマジックのようなものも感じられますし、20分ほどの短い作品でありながら、これだけ心にじんと沁みる作品を作り上げられるとは、石田祐康監督おそるべしです。
◆観るならディスクで!配信はないのかな?
そんな『陽なたのアオシグレ』を現在視聴するにはリリースされているBlu-rayやDVDを入手して視聴する必要があります。現在リリースされているディスクには、石田祐康監督の自主制作短編『フミコの告白』や卒業制作作品『rain town』などの学生時代の作品も特典として収録されており、以降の監督作品との共通点なども発見できて併せて見応えがあります。
ただ、一方で惜しいのは昨今、映像視聴では主流となっている映像配信サービスでの配信が行われていないこと。それこそNetflixでは『ペンギン・ハイウェイ』や『泣きたい私は猫をかぶる』などを網羅できているだけに、ぜひこれを機に『陽なたのアオシグレ』の配信も検討して欲しいところ。
「石田祐康監督の作品を観るならNetflix!」
なんてことを謳えるほどのサービスになっていることを2022年のNetflixには期待したいと思います。ぜひ、この私の欲望をTUDUMして欲しいよ!
……TUDUMの使い方として合っているのかはわかりませんが。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi