2018年4月13日(金)より『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』の公開がスタート。
キッズたちで混み合う土日の映画館の方が盛り上がるよなぁ、と思いつつも、我慢できずにわざわざ平日の初日の朝一番の回へ観に行って来ました(案の定、初日とはいえ、平日の昼間なのであまり人はいませんでした)。
いやはや、映画の出来はといえば、すごく良かったです。試写会時点などで表立って著しい評判を聞かなかったので、今年はそんなでもない出来なのかと勝手に思っていたのですが、蓋を開けてみたら、思わぬギョッとする展開がクライマックスにかけて展開される物語で、興奮しました。
かなり大好きです!これ!
そんなわけで、興奮した部分をネタバレにならないように、『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』をうまい具合に紹介できたらと思います。
今年のテーマはカンフーなのは言わずもがな
しんちゃんの映画といえば特定の映画ジャンルを取り上げるのが、恒例。今年はタイトルにもあるようにカンフー映画がテーマになっています。予告編などでもピックアップされていますが、しんちゃん達カスカベ防衛隊がぷにぷに拳という拳法に弟子入りするというところから物語が展開していきます。
もちろんカンフー映画がテーマになっているだけあって、カンフー映画のパロディとも言えるキャラクターや演出が用意されているのはもちろんのこと、しっかり格闘シーンなども盛り込まれており、いつもと違ったしんちゃんが楽しめます。
ですが、実は今年の映画の肝はそこだけじゃないのが面白いところ。意外なキャラクターにスポットが当たった物語になっています。
今年はマサオくんに気持ちを揺さぶられる!?
#クレヨンしんちゃんGIF
🍜マサオ🍜
しんちゃんの友達。気が弱く、泣き虫な男の子。マンガ家になるのが夢。
今年はマサオが世界を救う!?#クレしん #4月13日公開 pic.twitter.com/5JbNVKLYZh— クレヨンしんちゃん公式 (@crayon_official) 2018年4月4日
今年の映画でキーキャラクターとなるのは、カスカベ防衛隊のメンバーのマサオくんです。
今回の拳法を習うきっかけを作るのもこのマサオくんだったりするのですが、それだけではありません。今年は映画の中盤である大事なシーンを担います。
これまでのTVアニメや劇場版シリーズでも、マサオくんに対して他のカスカベ防衛隊のメンバーの当たりが強いなぁ、という瞬間が多々ありました。長年にかけて情けない役回りを「クレヨンしんちゃん」という作品はマサオくんに科してきて笑いにしてきたわけです。、ですが、ここに来て、この映画では改めて、そんなマサオくんに真面目に自分の気持ちを打ち明けさせます。
その辛辣な心情がなかなか衝撃的。しんちゃんに馴染みが深かった人ほど「はっ」と思わされるマサオくんの気持ちに対面することになります。
そして、マサオくん自身がその気持ちとどう折り合いをつけていくのか。そんなところが、クライマックスにかけて今回の映画の大事なポイントの一つとなっています。
今年の映画が描くあるテーマ!
そんなマサオくんとの繋がりを改めてこの映画では見直しながら、別のあるテーマを最終的に描いていきます。
そのテーマはなんと『共存』!
移民問題であったり、性別・人種・民族差別であったりと、今、世界スケールでも特に取り上げられるテーマとなっており、『ズートピア』や『トロールズ』、直近でいえば『ボス・ベイビー』などでもそうですが、“明確に違う存在の人たちと共に生きる”ことが課題として映画で描かれます。ただ、これらは日本人目線だとやや実感が湧きにくい部分でもあります。海外作品だと、白人や黒人だとか、移民の受け入れだとか、やや日本人よりも別の国の人たちの方が当事者な問題がメタファーとして盛り込まれがちです。
だからこそ今年のしんちゃんが
「どういう切り口で“明確に違う存在の人たち”を描いたのか」
というのが面白いところ。
なにかへ心酔してしまって他者を思いやれなくなってしまった人であったり、あるいは理解し難いぐらい行き過ぎた正義感を持った人であったり、もっと日本人でも共感できるような気持ちの部分での “他者”を用意してくれています。
そして、そんな“他者”に対して、どうやって手を取り合っていくのか? という問題に、この映画では、めちゃくちゃしんちゃんらしい答えを提示してきます。ロジカルでもなければ、しんちゃんじゃなきゃ成立しないだろうってぐらいのぶっ飛んだ解決方法なんですが、これがまた、ぐうの音も出ないほどの根源的な平和を画にしてくるので、かなり衝撃が大きい!
世の中、いろんな複雑な事情が入り組んで、平和を目指すのってどうしても大変です。そんな中、今年のしんちゃんが提示する、こういうやり方でこういうゴールを目指しましょうという素朴で根源的なメッセージに、私は非常に恐れ入りました。今年の映画のラスト、かなり見事だと思うので、そこをぜひ注目してほしいです。
――クライマックスに大きくかかわってくるこの記事では明確に取り上げていないあるキャラクターと前述のマサオくんのエピソード自体がうまくつながってないんじゃないか……とか、私も気になる点は実はあったりするのですが、それを置いても、ラストの肝となるメッセージが私には大きすぎて、愛おしくてたまらない映画となっています。
『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』、ぜひ一人でも多くの人に見てもらえたらなぁと思います。個人的に2018年ベスト級に引っかかる一作であったことをここでお伝えしておきます。
(Edit&Text/ネジムラ89)
映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~公式サイト
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2018