「おい、またポケモン喋るのかよ」
なんてボヤいていたのが今年の上半期の話。
それからあっという間に『劇場版ポケットモンスターココ』が2020年12月25日(金)についに上映を開始しました。
今になって思うと、なんてことを口走ってしまったんだと反省するほど、今回の映画はしっかり配慮が成されていた映画だったのです。
◆ポケモン映画2020年最新作!
『劇場版ポケットモンスターココ』はポケモンの映画シリーズの第23弾。
当初は2020年7月10日に公開を予定していたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて公開を延期。2020年12月25日に公開となり、ポケモン映画初の冬公開となりました。
今年のポケモン映画では幻のポケモン・ザルードが初登場。
ジャングルで暮らす一匹のザルードが、人間の子供を拾って育てたことから物語は始まります。
すでに公開前からザルード役に中村勘九郎さんが起用されることは発表されていたのですが、その際に衝撃を受けたのが予告編の中で言葉を喋るザルードの姿。そこに衝撃を受けたのです。
◆人語をポケモンが喋るのは有りか?
以前も“ポケモン喋らせちゃう問題”に関して言及したのですが、何度でも口を酸っぱくして言いたいのがそもそもポケモンは人語を喋らないという話。
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もともとの設定から人の言葉を真似ることができるぺラップなど例外はあるものの、基本的にピカチュウは「ピカチュウ」としか喋らないし、サトシはポケモンと言葉で会話することはありません。
そんな中、ポケモン映画ではたまに人間と言葉でコミュニケーションを取るポケモンが登場します。厳密にはテレパシーといった設定を用いて会話をするのですが、普段のTVアニメシリーズでは、言語を介さずにコミュニケーションを取っていたポケモンたちと急におしゃべりをし出すのは違和感が強く、あまり好きにはなれなかったのです。
だからこそ、冒頭の発言。
「おい、またポケモン喋るのかよ」
が、人間の言葉を話すザルードのシーンを観て思わず漏れてしまったのです。
◆やはりザルードは会話できなかった!
しかし、実際に映画を観にいったところ。私の思っていた事態にはなっていませんでした。
実はザルードは人間の言葉を喋っていなかったのです。
ポケモンに育てられた子供“ココ”。ココはザルードに育てられたおかげで、ザルードや他のポケモン達とも言葉で会話ができるのです。なので、ココがザルードとコミュニケーションを取るシーンではしっかり、ザルードの言葉が鑑賞しているこちら側にもわかるように人間の言葉として伝わるのですが、それを聞いているサトシにはザルードは、「ザルード!」と他のポケモンと同様の独自の鳴き声で喋っているようにしか聞こえないのです。
予告編などで流れていたザルードが喋るシーンはあくまでもココ視点での、会話シーンだったのですね。
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◆自分とは何者なのか?
『劇場版ポケットモンスターキミにきめた!』では、この“ポケモンが喋ること”に対する意味が乗ってきていたのですが、今回のポケモン映画もポケモンと意思疎通ができるココという存在が物語で非常に大きな意味を持ってきます。
育ての親であるザルードに対して、自分は人間なのか、ポケモンなのか問いただすココ。
一見、ココ独自の課題に思わせますが、その疑問は「自分とは何者なのか?」という『ミュウツーの逆襲』にも通じていく、普遍的な疑問と言えるでしょう。
ザルードはそこでしっかりとした答えを導き出すことはできないのですが、物語を通して最後にこの映画が一つの答えを明示してくれることになります。
ポケモンは結局は架空の存在ではあるのですが、言語の壁の存在する相手というと、案外外国人との関係性にも近いものを感じます。民族問題や人種問題が取り沙汰される今。『劇場版ポケットモンスターココ』が残してくれた大きなメッセージは、ポケモンなりの答えを定時してくれたといっても良いのではないでしょうか。
そんな、ポケモンという言葉の壁がある存在だからこその映画となっていただけに、やはり冒頭で文句を言っていた頃の私は、猛省せねばいけないのですよね。そんなわけで、私と同じくポケモンが喋ってしまうことに警戒していたみなさま。ぜひ安心して劇場に足を運んで欲しいです。
〈Edit&Text/ネジムラ89〉
≪ネジムラ89≫
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。@nejimakikoibumi
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