2018年6月に有終の美を飾り、今冬にはいよいよ待望のアプリ版ゲームのリリースが待たれる『ウマ娘 プリティダービー』(以下、『ウマ娘』)。
今思い返しても、スペシャルウィークやサイレンススズカたちの激闘のレースが目に焼き付いて離れません。
さて、そんな『ウマ娘』の最終回では、WDT(ウィンタードリームトロフィー)という新旧世代の名馬が入り混じった、夢のようなレースがアニメの最後を彩ってくれました。
ここで気になったのは、このWDTのレースの決着。最初はサイレンススズカやマルゼンスキー、ダイワスカーレットが大きく前を取るようになりますが、最後の最後で18頭全員が横並びになるという最高に熱い展開でしたが、最終的に誰が1位であったかを明かすことはありませんでした。
1位を選ばなかった理由については色々な事情というのもあるのかもしれませんが、実はこのWDTにも、アニメ内のレースと同様「元ネタ」と思われるレースが存在するのをご存知でしょうか? 今回はその元ネタとはなんなのか、そしてあえて1位を選んでいたらどうなっていたのかを考えてみたいと思います!
元ネタと思われる「夢の第11レース」
このWDTの元ネタではないかとファンの間で噂されているのは、このJRAオフィシャルが製作した「夢の第11レース」というCMです。
このCMは、あの時の名馬が活躍している頃私はこんなことをしていたといった、人間の人生の思い出を重ね合わせた、いわば幻のレースを表現していると説明欄に記載されています。
出馬している面子を見ると、なるほど競馬に詳しくない人であったり『ウマ娘』を見て競馬に興味を持った人なら名前を聞いたことのある名馬が勢揃いになっていますね。
人々の思い出を乗せた名馬たちが一斉に走り出し、蒼い芝生の上を駆け抜けていく……。そしてその先の勝利を掴むのはどの馬なのか。競馬ファンであれば一度は想像したことのあるレースかもしれないです。
そしてこのCM、説明欄にもあるように「どれが勝者かはわかりません」とあります。それぞれの掛け替えのない思い出に順位をつけることはできない、ということなのでしょう。確かに、「歴代の名馬が一堂に会する」、「勝者はあえて存在しない」というポイントを見ると、このCMがWDTの元ネタである可能性は大いに考えられますね!
WDTは視聴者=トレーナーの夢を背負ったレースだ
元ネタであるとされる幻のレースが「掛け替えのない思い出」に繋がっているのであれば、『ウマ娘』のWDTでは何が繋がっていたのか。当然、ただ単純に歴代の名馬が集ってレースを行うだけ、というお祭り要素だけで最後を彩ったとは思えないと、私は考えました。では、WDTでウマ娘たちと繋がっていたのはなんだったのか。それはおそらく、作中に登場したトレーナーたち、そして私たち視聴者の「夢」なのではないか? と思います。
WDTのレース開始直前に、チームスピカのトレーナーとチームリギルのトレーナー、オハナさんとの間にこんなやりとりがありました。
「俺さ、あいつら全員に一着を取らせてやりたい。でもライバル同士、力をぶつけ合いたいと言う奴らに、俺は一体何をしてやればいいんだ。」
いざチームスピカのみんながレースに出場するとなった時に、トレーナーとして何をしてやればいいのか、トレーナーとしてどうすればいいのか分からなくなったことを明かしたのに対し、
「私もあの子達に夢を見るし時には夢を託す。でも、その夢が叶う時もそうでない時も、目は逸らさない。とにかく最後まで見てやりなさい。」
最後まで見てやることがトレーナーの仕事だ、と一喝を送るオハナさんの会話です。
IFストーリーであり、史実と比べて「過去」が存在しないアニメ『ウマ娘』にとっては、現在進行形で見続けたい「夢」が、トレーナーとウマ娘との大きな繋がりの一つであると言えるのです。それぞれのウマ娘に対する掛け替えのない夢に順位はつけられません。それは上記のトレーナーの「全員に一着を取らせてやりたい」という願いと同じなのではないかと思います。だからこそ、「レースの勝者が誰かは分からない」のではないでしょうか。
少々こじつけに聞こえるかもしれませんが、元ネタの「思い出」を「夢」に置き換えると、個人的にあえて順位をつけなかったのにも納得が行くなぁと思ったのです。モチロン、最後の最後で順位をつけてしまったら作品として萎えてしまうのでは……という部分もあるのかもしれませんが。おそらく、WDTで順位をつけなかった理由は他にもあるかもしれません。ですが、こんな理由であってもいいかなぁ、と私は思いました。
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)
©2018 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」製作委員会