本日、318日(月)『ルミナス=ブルー』(コミック百合姫連載中)の記念すべき1巻が発売されました。

 『ルミナス=ブルー』は写真を撮ることが大好きな女子高生・垂水光(たるみずこう)を中心に、様々な百合もようが展開される青春劇。

 今回の『百合きゅーぶ』には作者である岩見樹代子先生にご登場いただき、作品の見どころや、百合の魅力について語っていただきました。

『ルミナス=ブルー』あらすじ

ルミナス=ブルー 第1話
(c)岩見樹代子/一迅社

 2年連続で写真賞を受賞した葉山うちほに憧れ、彼女の在籍する県立青島高校に転校してきた、垂水光。彼女は写真部に入部しようとするも、担任の教師から部がすでに廃部になっていることを告げられ落ち込む。

 そんな時、写真部が同好会として存続していることをクラスメイトの秋本雨音と青野寧々から教えてもらい、部室へ急行する。

 部室にて、光は憧れのうちほと出会うことになるが、肝心の彼女はスランプ状態。そんなうちほを見て、光はコンテストに2人で応募して賞を取ろうと彼女に話を持ちかける。

 光は、雨音と寧々にコンテストに応募する写真のモデルを依頼するのであったが、彼女たちは中学生のころに……。

光と一緒にファインダーを覗く気持ちでページをめくってほしい

――『ルミナス=ブルー』1巻発売おめでとうございます。早速ですが、1巻が発売した今の心境を教えてください。

岩見樹代子先生(以下、岩見先生):ありがとうございます! たくさんの方々に助けていただいて出すことができた一冊なので、本当に幸せです。あと、初めて「1」とナンバリングされた単行本なので、「どこまで彼女たちと前に進めるかな?」とドキドキしています。

――本作を描くに至ったきっかけや経緯は?

岩見先生:元々写真やカメラが好きで、ツイッターに時々スナップ写真をUPしていました。それを担当さんが見てくださっていて、ある日打ち合わせの際に「カメラ百合とかどうですか?」とご提案いただいたのが始まりです。お互いに「それは面白いかも!」と盛り上がって、そこから「元カノ同士を撮る」などの大まかな設定は、1時間くらいの内にできていたと思います。

――1巻の見どころを教えていただけますか?

岩見先生:主人公・光の撮った写真の数々を見てほしいです。友達になった寧々と雨音を被写体に色んな写真を撮っていく様子を、一緒にファインダーを覗く気持ちでページをめくると楽しいかもしれません。

ルミナス=ブルー 第1話-02
(c)岩見樹代子/一迅社
ルミナス=ブルー 第1話-03
(c)岩見樹代子/一迅社

 ――1巻を製作する中でこだわった部分は?

岩見先生:カメラと百合のバランスです。「カメラ百合」ではあるけど「カメラ漫画」ではないので、カメラの細かい設定とかはあまり出さないようにしています。でも嘘になってはいけないので、カメラはしっかり手を抜かずに描いたり、このレンズでこの距離ならこんな風に撮れるとか、描かない部分のカメラ設定もちゃんと考えてあったりします。

――『ルミナス=ブルー』を製作する中での一番の楽しみを教えていただけますか?

岩見先生:「笑顔を描くこと」です。今まで描いてきた漫画の中で特に「主人公が屈託もなく笑う」ということがなかったんです。常になにかに悩んでいたり、ムスッとしていたり(笑)。『ルミナス=ブルー』はみんなよく笑ってくれるので、自分は「笑顔を描くのが苦手」って思っていたんですけど、笑顔ってすごく可愛いなって思いながらいつも楽しく描いています。

――お気に入りのキャラクターは?

岩見先生:全員大好きなのですが、しいて言うなら主人公の「光」です。先程の質問でも答えましたが、まずニコニコ笑っている主人公を描いたことがなかったから光は本当に新鮮で。あと、好きなことに一途にまっすぐという姿勢が描いていて気持ちがいい。素直で大好きな子です。

――キャラクター設定においてモデルになった人物はいるのでしょうか?

 岩見先生:はじめからは特にいないのですが、後付けでしたら、主人公の光は『あまちゃん』の主人公・天野アキ……かな? アキちゃんは好きなことに向かう時、目がすごくキラキラしていて綺麗で、あの一途な輝きは光にも持っていてほしいなと思います。

――雨音×寧々、光×寧々…と様々なカップリングの組み合わせが考えられますが、岩見先生の好きなカップリングを教えていただけますか?

岩見先生:雨音×先輩(うちほ)です。まだ本編ではふたりが幼なじみ、ということぐらいしか描けていないのですが、歳が違っても仲の良い関係が垣間見れるのが好きです。幼なじみって阿吽の呼吸があるのがいいなと思います。

――お気に入りのエピソードを教えてください。

岩見先生:全部!……なのですが、あえて選ぶなら第3話です。元々1巻の構成をした時にはないお話で、プロットを考える時にふと「いつも晴れてるから、雨を降らせてみようかな」と思い立ったのがきっかけで。傘の中、雨の部室、というそれぞれの狭い囲いの中で、キャラクターの心情がしっとり描けた気がして、お気に入りの1話です。

ルミナス=ブルー 第3話
(c)岩見樹代子/一迅社

――漫画を製作するうえでこだわっている点はありますか? 

岩見先生:「台詞に頼りすぎないこと」です。言葉(フキダシ・モノローグ)があると、分かりやすく伝わりやすい反面、そこだけを捉えて引っ張られてしまう気がして。せっかく漫画はコマ割りと画があるので、キャラクターの表情や動きで伝えられる所は、それだけで頑張りたいと思っています。

『セーラームーン』や『少女革命ウテナ』などのアニメを辿って、百合漫画にはまっていった

 ――岩見先生が影響を受けた作品を教えてください。

岩見先生:奥浩哉先生の『HEN』です。容姿端麗な女の子が素朴で可愛い女の子を好きになるお話でした。一般青年誌なので男性もたくさん登場します。ですが、その上で「男女の性別がある中で、同性を心から好きになる」ことをはっきり描いている点が、恋愛漫画としてすごく納得ができたのです。今でもたぶん、心の根っこには「この世界で同性を好きになること」についての自問自答があります。

――「百合」との出会いは?

岩見先生:もはや最初がなんだったのか思い出せないのですが、幼少期からとにかく二次元の女の子が大好きで、特に「恋愛をして照れている女の子が死ぬほど可愛い」と思春期に思っていました。その顔みたさにギャルゲーをやってましたから。そこから『セーラームーン』や『少女革命ウテナ』などのアニメを辿って、百合漫画にはまっていったのかなと思います。

――岩見先生にとって「百合」とはどのような存在なのでしょうか?

岩見先生:「自由に美しく飛ぶ鳥」のような存在です。彼女たちがこちらへ降りてくることはないけれど、綺麗な空で自由に愛を育み、その美しい声を聞かせてくれるだけで、地上にいながら幸せな気持ちにさせてくれる。自由な愛が、百合そのものだと思います。

――女の子だけが登場するストーリーのどのような部分に魅力や創作意欲を感じていますか?

岩見先生:女の子って可愛くて綺麗だけど、めんどくさい所や素直じゃない所、歪んだ部分、汚い感情……そんなものがいっぱい秘められてるんです。それがいい。「すき」「きらい」の言葉の裏にある、女の子のいじらしさを描くのが、最高に楽しいです。

――「百合」を描くうえで悩んだことはありますか?

岩見先生:男性の存在をどのように描くかは悩みます。女性と対なる存在を出すことで、百合としての恋愛が引き立つこともあると思いますが、だからといってヒール役として男性を出してもいいものか? 不必要にキャラクターたちも読者も傷つけるなら、無理に出すこともないなとか……。前作『透明な薄い水色に』では主要キャラに男の子が関わってくるのですが、自分の中ではひとつの納得のいく形として男性を描けたかな、と思います。まだまだ勉強中ですが……。

――「百合」とは女の子と女の子の恋愛を描くジャンルだと思いますが、定義のようなものはあるのでしょうか?

岩見先生:ここ数年で百合はメジャー化してきて、さらにその中でも多様化してきていると思います。「友だち同士からオトナの関係まで何を百合とみるか?」の自由さも、百合の奥深い面白さだと思います。

私は恋愛を描くのが好きですが、『百合=恋愛』、も一般の定義ではないかもしれません。でも、私が百合を恋愛として描くなら、「女の子たちが恋愛を通して幸せになること」は外せないと思います。

どのような困難や悲しみがあったとしても、その先に彼女たちが彼女たちだけの幸せを見つけること。これだけは、どうあっても変わらずにいたいと思います。

――最後に、これから『ルミナス=ブルー』や百合作品を読んでみようという方へメッセージをお願いします。

岩見先生:『ルミナス=ブルー』は、元カノ同士の女の子たちと、それをカメラ越しに覗く女の子、というちょっと変わった構図から始まる百合です。主人公の気持ちになって読むのでもいいし、3人を俯瞰する気持ちで読むのもいいと思います。これから女の子たちが誰を好きになって、どう成長していくのか、一緒に自由に、楽しんでいただけたら嬉しいです。

百合作品は自由に楽しむものだと思います。可愛い女の子が好き、こんなシチュエーションが萌える等、きっかけは何でもいいんです。百合作品に触れてみて、自分の中に生まれる「見守る愛情」の心地よさを感じていただけたらと思います。ここまで長々とお読みいただいて、本当にありがとうございました。

InterviewText/水野高輝)

▼岩見樹代子先生ツイッター

@okome103

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▼百合きゅーぶ公式ツイッター

@yuriqb_anigala

(c)岩見樹代子/一迅社

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