月刊コミックビームで好評連載中の『繭、纏う』。その待望の2巻が本日、810日(土)に発売されました。

 『繭、纏う』は星宮女学園高等学校を舞台に、様々な生徒の美しくもどこかミステリアスなエピソードが語られる青春百合物語。

 『百合きゅーぶ』5回目には、作者である原百合子先生にご登場いただき、2巻の見どころはもちろん、『繭、纏う』誕生の経緯などをお伺いしました。

『繭、纏う』
繭、纏う 2巻 画像
(C)原百合子/KADOKAWA

 星宮女学園高等学校の3年生は、新しく入学してくる1年生に渡すために自分の髪で制服を作り卒業していく。

 まるで息をしているかの様な美しい制服を着た新1年生は、3年後に制服を作るため髪を美しく長く伸ばし続ける。

 そんな一風変わった伝統を持つ星宮女学園高等学校の少女たちが繰り広げる芳しい世界。そんなある日、学園を揺るがす事件が起こる。

美しさの裏にある歪みや伝統を感じていただきたい

――このたびは『繭、纏う』2巻発売おめでとうございます。早速ですが2巻の見どころを教えてください。

原百合子先生(以下、原先生):ありがとうございます! 2巻の見どころは1巻の第1話で少し登場していた寮組です。「スール(姉妹)」制度や寮の暮らしなど、縦のつながりが薄い通学組では描けなかったところを寮組でより深く掘り下げられたと感じているので、是非お楽しみください。

繭、纏う 2巻 画像01
(C)原百合子/KADOKAWA

――2巻を制作する中でこだわった部分は?

原先生:1巻に引き続き作画の“美しさ”にこだわっています。加えて2巻目は学園の秘密にクローズアップしました。美しさの裏にある歪みや伝統を感じていただければいいなと。

――原先生は学生時代、自分の着用していた制服は好きでしたか? またどんな制服でしたか?

原先生:制服という文化は決して嫌いではないのですが、厳しい高校に通っていたので放課後に文具をデパートで買い物するだけで補導されるなど、制服を着て外に出ていると誰かに常に見られているような苦しさみたいなものがありました。そういうこともあり制服は息苦しくてあまり好きではなかったです。転勤族だったのでセーラー服からブレザー、ネクタイからリボンそしてジャージ(笑)まで一通り着たことがあります。

――『繭、纏う』を描くに至ったきっかけや経緯を教えていただけますか?

原先生:息苦しさの中で精一杯何かをつかもうとするその一瞬の救いや煌めきを見るのがとても好きなので、そんな話を描きたいなと。あと、少女から大人の女性に変化する時に失うものってあると思うんです。その失ったはずの場所が疼く、幻肢痛に近いものを感じられる話にしたいなと思って描き始めました。

――お気に入りのキャラクターは?

原先生:横澤さん(横澤洋子)です。『繭、纏う』は奇抜な設定なので読者を置いて行きかねないという危機感がありました。そこで「普通の女の子」がこの星宮女学園高等学校をどのように感じるのかと考えた結果生まれたキャラクターが横澤さんでした。元々、綾波レイのような無機質なキャラクターが好きなのですが、横澤さんは色々な感情を抱えながら惜しげもなく笑ったり泣いたり様々な表情を見せてくれて、好きなキャラクターとは遠いのですがすごく惹かれる部分があります。恋に近いかも。

――キャラクター設定においてモデルになった人物はいるのでしょうか?

原先生:学園の王子様の佐伯さんは実際に王子様が私の学校にいたので、モデルとまではいかないのですが「いるよね〜」という気分で描いています。

――キャラクターで、原先生が好きなカップリングは?

原先生:これ、描いてる本人が言って大丈夫なんでしょうか(笑)。秘密です〜!

――お気に入りのエピソードを教えてください。

原先生:2巻の一番初めの話は思い入れがあります。制服の視点からの話なんですが、人間のキャラクターからは味わえないような少し変わった感触の恋を描けたので楽しかったです。

繭、纏う 2巻 横澤洋子 画像
(C)原百合子/KADOKAWA

――漫画を製作するうえでこだわっている点はありますか?  

原先生:作画はもちろんなんですが、全体的な空気感です。美しさの中にグロテスクさを一滴垂らすような空気になるようにこだわっています。

女の子同士に強く感じる表裏一体感

――原先生が影響を受けた作品を教えていただけますか?

原先生:吉田秋生先生の『櫻の園』です。 こちらは映画の方も好きです。 百合成分は薄いとは思いますが、少女たちの関わりを描く上で私の中で大きな存在になったことには変わりありません。特に少女たちが持つ痛みを描くという点において勉強させてもらいました。成長痛に似た痛みを柔らかい桜の花が包むような感覚がありすごく好きです。

――「百合」との出会いは?

原先生:意識せずに観たものを含めると『セーラームーン』からですね。何度転勤で引っ越しても『セーラームーン』のビデオだけは大切に持って行って擦り切れるまで観ていました。はるかさんとみちるさんの遺伝子は、今でも受け継がれているように感じます。

――原先生にとって「百合」とはどのような存在なのでしょうか?

原先生:気がつけば隣にいる存在です。百合という概念がないはずの義務教育時代、深夜にやっていた『シムーン』や『ストロベリー・パニック』などを普通に毎週観ていたので。教わらずとも知っているという感じでしょうか。思春期に観るには際どい描写が多いはずなんですけど好きでした。

――女の子だけが登場するストーリーのどのような部分に魅力や創作意欲を感じていますか?

原先生:男性と女性だと体のつくりや脳のつくりが根本から違うので、それに伴うすれ違いが物語の中心に置かれることが多いと思います。ですが、女性同士だったらそれらをすっ飛ばして、目を見るだけでふっと言葉を交わさなくともわかる感情があると思うんです。お互いに気づいていても意図して見ないふり聞かないふりをする。そういうところにエモさを感じますね。

あと、祈りと呪い、絆と支配、そんな表裏一体で不安定な感情を常に抱えていて、どちらに転ぶかわからない危うい感じにとても魅力を感じます。この表裏一体感は女の子同士に強く感じる気がしていて、私が百合を描く上で大切にしている部分です。

――「百合」を描くうえで悩んだことはありますか?

原先生:漫画作品を出版社に持ち込んだ際に「これを女の子同士の恋愛にした理由は?」と聞かれたことがあり凹みましたね。異性同士の恋愛と同じように同性同士の恋愛にも理由なんていらないはずなのに、世間の認識はまだまだ追いついていないんだなと思うと胸が苦しくなります。認識の齟齬は時代が解決してくれると信じていますが、そのお手伝いが少しでも出来たら良いなと思って作品を描いている側面もあります。

――「百合」とは女の子と女の子の恋愛を描くジャンルだと思いますが、定義のようなものはあるのでしょうか?

原先生:女の子同士の関係の先を知りたくなったら百合の始まりかなと思っています。

――最後に『繭、纏う』ファンの方々にメッセージをお願いします。

原先生:2巻でキャラクターたちの大体の過去は出揃いました。なのでここから彼女たちがどう「未来」を切り開くかのお話になっていきます。「過去」、「現在」そしてまだ見ぬ「未来」。「未来」で見つけるのは恋か、はたまた支配か。境界線を揺れ動く未成熟な彼女たちの物語に最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

InterviewText/水野高輝)

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(C)原百合子/KADOKAWA

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