『ポケットモンスター サン&ムーン』(以下、サンムーン)にて初めて登場した悪の軍団の女ボス。そして、ヒロインのリーリエとスカル団の用心棒グラジオの母親でもあるルザミーネ

 彼女は元々優しいお母さんであったのですが、今作に出てきたウルトラビーストへの異常な執着によって歪んだ性格になってしまい、実の子供に対して「わたくしが愛を注げる美しいものでなければ邪魔でしかない」と言い放つなど、その狂気じみた言動がしばしばファンの間で議論の対象になっていました。

ポケモンサンムーン ルザミーネ
<あと40歳以上とは思えない美貌も話題になっていました>
画像引用元:ポケモンカード サン&ムーン/ルザミーネ(SR)/超次元の暴獣

 彼女の行動理念は「深い愛でポケモンを守ること」にあるのですが、その愛情は一言で言ってしまえば「異常」なものと評されています。でも一言で「ルザミーネの愛を異常と言うには、簡単なように見えて実は難しいものなのではないか?」と私は思うのです。そもそも「愛」自体が生物ごとによって捉え方が変わってしまう曖昧なものである以上、「その愛はおかしい」とバッサリ切り捨てるのも気になります。

 では何を持って、ルザミーネの愛は異常と呼ばれるのか? そして私たちは彼女の愛を理解することはできるのか?

 今回は彼女の愛について、改めて考察してみたいと思います。

ルザミーネの行動理念

 彼女はエーテル財団の代表としてポケモンの保護活動や生態調査を行い、その課程の中でウルトラビーストの調査もしておりました。………というのは表向きの理由で、「自分が愛したウルトラビーストとの理想的な世界を作る」ことが本来の目的でした。そのため目的を邪魔する者は、たとえ自分の子供であっても容赦なく切り捨てるようになっていたのです。

 ただ後半の部分に関しては、ウツロイドの「自我を解放させ宿主を守らせる」という神経毒の影響があったとも言われています。

ウツロイド ルザミーネ
画像引用元:ポケモンセンターオリジナル スクエア缶バッジ2個セット ルザミーネ&ウツロイド販売元:ポケモン(Pokemon)

 またその他にも、自分のお気に入りのポケモンを氷漬けにしてコレクションしている描写があり、ルザミーネの異常さを如実に表す一因にもなっています。

 エーテル財団の代表としてポケモンたちを愛し、保護すること自体が彼女の行動理念でマチガイナイのですが、『サンムーン』ではウルトラビーストへの執着により、その深い愛情がとんでもない方向に行ってしまったのです。

 なお『サンムーン』では独善的な性格が強調されてましたが、『ウルトラサン&ウルトラムーン(以下、USUM)』では、そもそもの目的が「ネクロズマから世界を守りたい」という理由(実際には「私が全ての物を愛せる世界を守りたい」)に変わっており、ウルトラビーストへの執着が無くウツロイドの洗脳も無いお話だったためか、狂気じみた言動は少なくなり母親としての面が強く出ているようになりました。

 まだ完結してないので何とも言い難いですが、アニメ版ではもはやリーリエバカとも言える「忙しいお母さん」キャラになっており、異常な愛という黒い部分はほとんど出ていません。

全ての大元は「夫の消失」だったのか?

 先述した通り、元々ルザミーネはリーリエやグラジオにも優しい本物のお母さんでした。それが、ウルトラホールの研究の中で夫が行方不明になってしまったところから、彼女の行動が変わってきたと、リーリエたち関係者は語ります。

 『USUM』では、ルザミーネがウルトラホールに執着する理由について、グラジオが「ウルトラホールに消えた夫を探しているのでは」と推測しています。

 そしてシナリオクリア後のアローラチャンピオン防衛戦の後には、グラジオからポケリゾート管理人のモーンの話が出てきます。

 モーンはウルトラホールを通った際に記憶を失ってしまったため、ルザミーネたちのことを忘れているのですが、上記のエピソードを見るあたり、ルザミーネがウルトラホールを探していた目的はグラジオが言った通りだったと考えられます。

 そしてルザミーネはあえて追わないようにしたことで、一旦の決着を付けたのだと思われます。ただし『サンムーン』では、言動が豹変した本当の理由は分かりません。

 『サンムーン』にはその描写がなかったこと、そこから「ウルトラビーストの世界に行き、保護する」という目的に結びつけることが難しいからです。そしてウツロイドの神経毒による自我の解放をした後でも、夫を探すことはありませんでした。もし心理の深層に「夫を探したい」という目的があれば、彼女はウルトラビーストの世界で必死になって夫を探していたと思います。だからこそ、『サンムーン』では理由が分からないのです。

 初めて夫が失踪した際に、ウツロイドに既に寄生されていた可能性が高いと言われているのもうなずけます。そして、もし仮にウツロイドに寄生されていなかったら「夫が失踪したのにウツロイドを探すことを優先し、全てを捨てようとした」というかなりいびつなキャラクターになってしまいます。

 最愛の夫を失っても意に関せず、子供たちに目をくれずに研究をする研究者としてみれば「マッドサイエンティスト」と言われているでしょう。

異常な愛と評されるのは・・・

 ここからは私個人の感想になるのでお気をつけを。

 今回いろいろ見ていた中ですと、『サンムーン』、『USUM』、「アニメ版」の3つのルザミーネの中で、実は一番理解できる愛情だと思えるのが『サンムーン』のルザミーネなんですよね。

 なぜ一番理解できるのかと言うと、その愛情の向け方が「動物的」かつ「直情的」だからなんです。

 自分の欲しいままに行動する点、ウルトラビーストの世界で見せた「もはや子供」と言われる駄々っ子ぶり。愛についていろいろな議論がなされたり意見の相違が起きる中では、純粋な気持ちでポケモンを守ろうとする『サンムーン』のルザミーネが分かりやすいなぁと思ったのです。

 そしてその愛が「異常」と呼ばれるのが、氷漬けに代表される「非人道的な行動」であるが故に嫌悪を感じるからなんだと考えます。

 『USUM』だと、上記のような異常な愛の描写は残っているものの、ルザミーネの「人間」として葛藤する姿が多く映し出されているように感じました。

 『サンムーン』と比べるとだいぶ曖昧な部分があるように感じますが、一番「人間的」です。『サンムーン』の方が分かりやすいという人はどのくらいいるのでしょうかね。できればもっと知っていきたいなと思いました。

(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)


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