蝶鬼(ちょうき)と呼ばれる吸血鬼、花厳アイリスとその後輩でボクっ娘の絢藤沙羅の恋愛関係を描いた『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』(電撃G'sコミック連載中)。その待望の3巻が、
今回の『百合きゅーぶ』には、なんと原作者の嵩乃朔先生に登場していただき、本作を描くに至ったきっかけや百合の魅力、そして『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』3巻の見どころなどをお聴きしました。
私立藤ヶ嶺学院に転入してきた絢藤沙羅は極度の赤面症で、友人ができないことに悩んでいた。
そんなある日、彼女は担任の教師と生徒が交わっているような場面を目撃してしまう。
その場から急いで立ち去ろうとした沙羅だったが、生徒会長・花厳アイリスに見つかってしまったことが災いし、彼女は蝶鬼と呼ばれる吸血鬼のパートナー・花贄(はなよめ)として生きることになる……。
大事にしたのはコメディとシリアスのバランス
――このたびは『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』3巻発売おめでとうございます。早速ですが3巻の見どころを教えてください。
嵩乃朔先生(以下、嵩乃先生):見どころは、2巻でお互いの想いを確かめ合った上で知ったアイリスの秘密、でしょうか。沙羅とアイリスそれぞれが何をどう選択していくのか、今後も楽しみにしていただければ幸いです。
――3巻を制作する中でこだわった部分は?
嵩乃先生:全編通して言えることなのですが、タイトルは『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』とライトな感じに思わせておいて、実はだいぶシリアスな展開なんだよ、というギャップです。なので、コメディとシリアスのバランスは大事にしています。自分自身、ギャップのある漫画が好きなので。
――1巻、2巻に続いて3巻発売となりましたが、巻数を重ねるごとに何か心境に変化などはございましたか?
嵩乃先生:自分が漫画を描くスタンスは「どうしたら読者に楽しんでもらえるだろう」、「驚いてもらえるだろう」というのが基本なので、そこから心境など大きな変化はないのですが、より読みやすいようコマ割に変化はあります(笑)。担当さんと相談しつつ変形コマはだいぶ減らしました(笑)。
女の子同士の綺麗さ、ビジュアル面、繊細な心理面も大事にしたい
――『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』を描くに至ったきっかけや経緯を教えていただけますか?
嵩乃先生:別名義(吉岡榊名義)で『アンジュ・ヴィエルジュ』という作品のコミカライズをさせていただいた時に、吸血鬼の女の子の話があって、担当さんに「嵩乃さんには吸血鬼のお話とか合いそうですね」とおっしゃっていただいて。それがきっかけで、短いお話を描いてみてツイッターに上げたら好評で、連載につながりました。なので、そのきっかけの短編とはちょっぴりふたりの性格が違います(笑)。
――『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』を製作する中での一番の楽しみを教えていただけますか?
嵩乃先生:ふたりがきゃっきゃうふふしているシーンを描いているのが一番楽しいです。吸血シーンしかり、ただ一緒にいて仲良くしているだけでも楽しいです。とにかく女の子同士がいちゃいちゃしているのが好きです!!
――お気に入りのキャラクターは?
嵩乃先生:ん〜、キャラはみんな愛着あるのですが、沙羅とアイリスです。自分の好きな百合カップル要素を全部詰め込んだので(笑)。金髪×黒髪、とか、生徒会長とか、おとなしいけど芯は強い、とか。生徒会長要素は、箱庭(学園)の中の権力者、という絶大な権力はないけど、小さなコミュニティ内での立場ある女の子、というのが大好物なので。あとカップリング単位で好きになる事が多いので、誰か一人だけ好き、というのはあまりないかもです。ふたりのやりとりが好き、というか。
――キャラクター設定においてモデルになった人物はいるのでしょうか?
嵩乃先生:いるけど、内緒です(笑)。
――キャラクターで、嵩乃先生が好きなカップリングは?
嵩乃先生:アイリスと沙羅ですね。理由は先ほどの回答の通りです。でも紫苑と葵衣ちゃんも好きです。紫苑と葵衣ちゃんは、先生と生徒、というのをやりたかったんです。沙羅とアイリスを描くので精一杯で、なかなかふたりにページを割いてあげられていないですが。
――お気に入りのエピソードを教えてください。
嵩乃先生:第3話の遊園地デート回です。ああいうピュアな話が好きです(笑)。ベンチで膝枕とか、観覧車で吸血とかベタなやりとりが好物です!
――漫画を製作するうえでこだわっている点はありますか?
嵩乃先生:前の回答のとおり、「どうしたら読者に楽しんでもらえるだろう」、「驚いてもらえるだろう」です。その上で自分らしさは忘れたくないな、と。今回の連載で言えば、吸血シーンはえっちでもあるんですけど、ただえっちなだけじゃなくて、女の子同士の綺麗さ、ビジュアル面、繊細な心理面、は大事にしたいなあ、と。
百合は空気、なくては生きていけないもの。そして常に身近にあるもの
――嵩乃先生が影響を受けた作品を教えていただけますか?
嵩乃先生:漫画は森永みるく先生の『くちびるためいきさくらいろ』が人生のバイブルです。女の子同士の恋愛のきゅんきゅんがつまっていますっ! アニメでは「『舞-HiME』、『神無月の巫女』がめちゃくちゃものすごく好きですっ!
――「百合」との出会いは?
嵩乃先生:元々女の子同士の恋愛は好きだったんですけど、当時は少なくて。大きなきっかけは『美少女戦士セーラームーン』のまこ亜美の同人誌ですっ! コミケで出会っていなかったら、今の私はないと思います(笑)。
――嵩乃先生にとって「百合」とはどのような存在なのでしょうか?
嵩乃先生:空気。なくては生きていけないものです。そして常に身近にあるものです。
――女の子だけが登場するストーリーのどのような部分に魅力や創作意欲を感じていますか?
嵩乃先生:「尊さ。」でしょうか。友情と恋愛に揺れ動く気持ちに惹かれるというか。女性同士だからこその曖昧なボーダーというか。男女だとすぐ「あ、これは恋愛感情だ」、「好き」って線引きしやすいですが、同性同士だと区別がつきづらい。そこで揺れ動くのが好きです。
――「百合」を描くうえで悩んだことはありますか?
嵩乃先生:うう〜ん、好きなものを好きなように描いているので、百合だからと悩んだことはないですね。
――「百合」とは女の子と女の子の恋愛を描くジャンルだと思いますが、定義のようなものはあるのでしょうか?
嵩乃先生:これは難しいですが、発信する側(作者)や受け取り側(読者)が百合だと思えば「その人の中で百合」でいいんじゃないかなーと。BLだと恋愛でなければいけないと思いますが、百合は必ずしも友情ではだめ、ってことはないと思いますので(個人的な感覚として)。ただ個人的には恋愛の百合が大好物です!
――最後に、これから『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』や百合作品を読んでみようという方へメッセージをお願いします。
嵩乃先生:百合は尊いです! ぜひ百合の花園にお越しくださいませ!!!
(Interview&Text/水野高輝)
▼百合きゅーぶ一覧
▼百合きゅーぶ公式ツイッター